開き直りは大切 04
はホグワーツに入学することが決定され、何故現在組み分け帽子を被っていた。
リドルは先にスリザリンに組み分け済みである。
日本人だからなのか、組み分けは一番最後で集中されまくりである。
早く終わってくれないかな〜。
とりあえず、スリザリンとグリフィンドール以外ならどっちでもいいから。
『なんじゃね、スリザリンは嫌かね』
純血じゃないので、普通は嫌でしょ。
『む、惜しいの。おぬしはスリザリン気質じゃと思うが』
私、狡猾じゃないのですが…。
『いや、本質はスリザリンじゃ』
…そこまで勧めますか。
『よし、決定じゃ』
は、ちょ、待っ…!!
「スリザリン!!」
は盛大に顔を引きつらせた。
この帽子縫い糸と針で口を縫いつけてやろうか…と思ってしまう。
ぱらぱらっと拍手が起こるが、スリザリン寮内ではを歓迎するようなムードではない。
「聞かなくても答えは分かっているけど、君は純血かな?」
スリザリンの先輩にあたるだろう1人がに聞いてくる。
完全に嘲るような口調。
どうもこのグリンデルバルドが存在する時代、丁度第二次世界大戦が終わる頃なのだが、日本の立場は魔法界でもあまりよくないものらしい。
日本の魔法使いの一部がこの魔法界でも殆どグリンデルバルドの元につき、残りの他の魔法使いは関わろうとせずに完全に閉鎖的になってきているとのこと。
日本人という事だけで歓迎されないのは明らかだろう。
ははぁ〜と大きなため息をつく。
「私は先輩方がとぉぉっても大嫌いなマグルで、しかも日本人ですよ。ですから、関わらないでくださいね」
が思ったこと、それは”面倒くさい”だった。
ひらひらっと手を振って、適当な空いている席に腰を下ろす。
背丈はでかいが、所詮相手は子供。
ちらりっと他の生徒達を見れば、のほうを嫌なものでも見るような視線をしている。
う〜ん、どうしようかな。
どうやらこのスリザリン寮では孤立してしまいそうである。
だが、は全然困っていなかった。
元々まともにここで生活するつもりはなかったのである。
ホグワーツ第一日目授業。
は思いっきりサボっていた。
そして来たのは女子トイレである。
『魔法使いになる気はないんだけど、とりあえずここはやっぱり気になるでしょ』
日本語でぶつぶつ言いながら、は洗面台に向かい合う。
好奇心というものはいくつになっても変わらない。
そして自分はパーセルマウスである。
リドルが起こしてしまうだろうホグワーツの事件の中で、一番物騒なのは秘密の部屋事件である。
その事件で自分に火の粉がかからないようにする為には、リドルより先にバジリスクと仲良くなればいい。
『ふっふっふ、説得までの猶予はだいぶある。説得するから待っててね〜、バジリスク君〜』
”開け”というのパーセルタングと共に洗面台はぱっくり割れて入り口が綺麗に現われる。
この時期、まだ”嘆きのマートル”は生きているのでトイレには存在しない。
生徒達は授業中で、殆どの教師も授業を教えている最中だろう。
邪魔は入らない。
減点され、退学されるという道もあるのだが、元々ホグワーツにはあまり来たくなかっただ。
退学されるなら喜んで退学されましょう、というところだ。
『わ〜お、ジメジメしてる〜。あ、あった入り口』
蛇の彫刻のある丸い扉。
映画で見たまんまである。
はその扉をパーセルタングを使って開く。
その扉の先にはこれまた見たことがあるような大きな部屋。
ぴちゃんっぴちゃんっと水が滴る音と、そしてジメジメした部屋。
『……穢れた血の臭いがする…』
ずるずるっと何かが這いずり回る音と共に声が聞こえた。
はローブの中からハチマキを取り出す。
何故ハチマキを持っていたかは謎だ。
相手はバジリスク、まともに目を見るつもりはない。
『穢れた血が…ここに何の用だ』
『穢れた血、穢れた血って、どんな血のどんなものがどのように穢れているのかを説明してほしい所なんだけど?』
がパーセルタングで話すと、ぴたりっと声が聞こえなくなる。
ずずずっと音がして、ソレがの目の前まで来たのが分かった。
『何故、穢れた血がその言葉を話せる?』
『だから、どこをどうして穢れたと評するのか。あ、その前にどうして差別するのか聞きたいんだけど?』
はずっとずっと不思議だった。
そりゃ身分ある人達なんかは、一般市民と一緒くたにされるのは嫌だろう。
純血だ混血だもそのへんのプライドの問題なんだろうとは思うが、殺すだのなんだのまでいくと物騒すぎる。
『純血を誇るのは悪くないと正直私も思う。その前に、どの辺りで純血と混血の区別がでてきたのか不思議なところなんだけどね』
は懇々と説教するかのように意見を述べる。
純血と混血の区別は一体どこからついたのか。
その区別は何の意味があるのか。
魔法使いを迫害するマグルがいたとしても、抹殺しようとせずに利用することを考えないのか。
どうして、皆さんそう単純一直線な考え方ばかりなのか。
もうちょい頭を捻って考えろ、と。
『ま、そりゃね。日本人と違って皆さん我慢が好きではないとは思うよ。でも、こう、スリザリンが狡猾なら忍耐も覚えた方がいいと思うんだよね』
いつの間にか話題はスリザリンのものになってきている。
目の前にバジリスクがいるのはたまに聞こえるずるずるっとした動きで分かるのだが、反応がない。
『あの?聞いてる?』
完全に無視されているのだろうか、はちょっと不安になって相手の返事を促してみる。
『…聞いている。今まで、私にそこまで言ってくれる者はサラザール様しかいなかった』
『は?』
『私は常に恐れられ、私にまともに接してくれたのは魔法使いであったサラザール様のみ。だから、私はサラザール様が望まれることをしたいと思っていた』
『…それって、穢れた血がどうのってのはサラザール・スリザリンが望んでいたから?』
『そうだ。だが、サラザール様も穢れた血を嫌ってはいたが認めていなかったわけではなかった。あの当時はマグルからの魔法使いへの迫害が今よりもとても酷く、こちらも力で抗わねば生きていけない時代だった』
なにやらの言葉で説得され始めているバジリスクである。
容赦なくマグル出身をばしばし殺すかと思いきや、ちゃんと知能がある。
意外や意外である。
自分が怖がられるのが嫌で、ずっと閉じこもっていたらしいバジリスク。
『あのさ、あなたが恐れられるのって、その目が原因だと思うんだよね。だから、その目の力のコントロールして、できればその巨大な体もなんとかすれば、ホグワーツ内探検とかできない?』
『どうやって?』
『魔法使えない?』
『…魔力はある』
『なら、魔法使えばいいんじゃない?』
『…そうか』
いや、考えようよ。
は思わず内心突っ込む。
『あなたの名前はなんと言う?』
『は?私?私はミサキ、・』
とりあえず馬鹿正直に答える。
『、また来てくれるか?』
『ん、いいよ〜』
あっさり了解する。
ちょっと嬉しくて笑顔まで向けてしまう。
このホグワーツでの話し相手になりそうだ。
スリザリンでは完全に孤立するだろうにとって、唯一の話し相手と言ってもいいかもしれない。
相手が蛇ってのがものすごく寂しいが…。
『その目なんとかしてさ、身体なんとかしてくれたら、寮につれていけるし、一緒に校内散策もできるし』
『…本当か?』
明らかに嬉しそうな声には頷く。
このバジリスクはホグワーツ創設者であるサラザールを知っている。
つまりは1000年ほどは生きているはずだ。
だが、とてもじゃないが1000歳以上には見えない。
ものすごく可愛い性格をしている、とは思った。
数ヶ月後にのペットとしてバジリスクがに懐き、張り付くようになった。
体はの手に巻きつけるほど小さくなり、本来金色のその目を見た相手を殺す瞳は黒くなっている。
ひんやりとしたこのバジリスクの身体が、は好きだった。
なんか、思ったよりも感触がいい。
すりすりしたいくらい〜。
決して爬虫類は好きではないだが、彼だけは別のようだ。
「おや、穢れた血が何故このスリザリンにいるんだ?」
くくっと馬鹿にしたようにを見てくる上級生達。
いつものことであるいつもの。
は聞こえなかったふりをして通り過ぎようとするが。
「うわっ!何だ?!」
の首筋から、一匹の蛇が出てきてシャーっと威嚇する。
「黒曜、駄目」
『何故だ?を馬鹿にしたんだぞ?』
「口でしか対抗できない相手に、口での対抗手段を奪ったら可哀想でしょ?」
『…それもそうだな』
はにっこりと上級生に笑みを向ける。
相手が怒っているのが分かったが、とりあえずさっくり無視する。
バジリスクの黒曜、がそう名づけた、を話し相手として得たは最近とっても機嫌が良かった。
上級生の罵倒を軽く受け流せるくらいに。
黒曜が話し相手になってくれただけでも、ホグワーツに来た価値ありかな?
あとは適当に退学させてくれればありがたいのに。
のほほんっとホグワーツ内を歩く。
退学を前提に考えているのホグワーツでの成績は、結構悪い。
だが、かろうじて進級はどうにかなるだろう。
ちなみに、リドルはトップ独走中らしい。
ホグワーツに入ってからは、同じ寮なのに殆ど会話をしないリドルのことを、はあんまり知らなかったりする。