SWEET BOX4




SWEET BOX 4





100味ビーンズというお菓子がある。
フルーツ味、野菜の味、ゲテモノの味など、その味の種類は100種類にも及ぶゼリービーンズである。
の調べによれば、普通に食べられる味が6割、ゲテモノ系の微妙なものが3割、残り1割はなんとも言えない食べるべきものではないものだ。

さて、何故100味ビーンズかといえば、達は前にが発案したお菓子パーティーなるものの最中なのだ。
勢いで言っただが、リーマスはじめ悪戯仕掛け人たちはどこからかホグズミードのお菓子を沢山持ってきたりしている。
3年生は確かにホグズミードにいけるけれども、今の時期はまだ行けないはずだった。

(一体どこから、こんなにたくさん調達してきたんだろう?)

疑問に思うだったが、リリーもセフィアも何も言わないところをみるといつものことなのだろう。

100味ビーンズ、蛙チョコ、黒胡椒キャンディ、砂糖羽ペン、魔女かぼちゃジュース、ハエ型ヌガー。
それから、の手作りのチーズケーキとクッキー、アップルパイ。
7人で食べるにしても量はかなり多いのではないのだろうか?とは思うが…。
ホグワーツ敷地内の森のはずれの大きな切り株の上にお菓子を広げ、それを囲むように7人が座っている。
とリーマスが皆に紅茶を入れる。

「ちょっと待て、リーマス!!」
「何?シリウス?僕の紅茶が飲めないの?」
「そうじゃねぇ!!お前、砂糖いくつ入れる気だよ?!」
「え?とりあえず5つ?」
「入れすぎだ!!」
「そう?」
「俺はストレートでいい!」
「苦いよ?」
「お前の味覚が変なんだよ!」

シリウスの紅茶に砂糖を入れようとしたリーマスを必死で止めるシリウス。
リーマスも分かってやっているからタチが悪い。
ピーターやジェームズ相手にはそんなことしないのだから。
つまりは、シリウスが一番いじめやすいのだろう。

「リリー、お砂糖いる?」
「1つもらえる?」
「うん、はい」

はリリーの紅茶ににお砂糖を一つ入れる。
自分のものに3つほど。
は紅茶に関してはリーマスほど問答無用に砂糖をどばどば入れたりしない。
紅茶自体の味を楽しむのも好きだからだ。
砂糖を5〜6個入れて甘すぎたものも飲めないわけではないが、はそれ自体の味を楽しむのも忘れない。
しかし、砂糖3つでも十分多い。

「セフィアは?」
「あたしはストレートでいいわ」
「そう。じゃあ、このクッキー食べて。セフィア用に甘さ控えめカロリー控えめなの」
「あら、ほんと?」

並べられたクッキーとは別のお皿にあるものを差し出す
甘いものが苦手なセフィアとはいえ、シリウスほどではない。
好んで食べようとは思わない、という程度である。
が差し出したクッキーを1つとって口に入れてみる。

「あっさりしてて美味しいわね」
「ほんと?よかった〜。通常の半分の量なんだよね、お砂糖。…あ、リーマスには通常の2倍のものあるよ」

セフィアの反応に安心したは別の皿にあるクッキーを少し離れた場所に座っているリーマスに差し出す。
丁度座る位置は女性陣と男性陣に分かれている形。
は身を乗り出すような形でリーマスに差し出している。

「ありがとう、貰うよ」
「うん、一応味見してみたけど…、どうかな?」

リーマスが1つクッキーを口に運ぶ。
はどきどきしながら反応を見守る。
リーマスの為に作ってきたのを食べてもらうのはこれが初めてなのでちょっと緊張する。
作ってきたものをリーマスが食べたことはあっても、それは偶然のようなものだった。

「うん、丁度いい甘さ。美味しいよ。でも、砂糖の他に何か、この甘み」
「さすが、リーマス。そう、ハチミツとリンゴのすりおろしたものが入ってるの」
「へぇ〜、ハチミツは分かったけどリンゴか」
「お砂糖ばかりの甘さだと飽きるでしょ?だからちょっと工夫してみたの」

は比較的料理が好きである。
作り方がわかってる普通のお菓子のほかに、オリジナルのお菓子とかを作ることもある。
昔は失敗することも多かったが今はあまり失敗もなくうまく作れるようになった。
感覚でこれとこれを入れればいいかな?と分かるようになってきたのだ。


ぽつぽつ適当にお菓子を食べながら、仲良く話をしている。
いつの間にかジェームズとリリーは二人の世界に入っているし、セフィアはシリウスに無理やりお菓子を詰め込もうとしていじめている。
はリーマス、ピーターと一緒にのほほんとお菓子を食べている。

「つーかいい加減やめろ!セフィア」
「ちっ、根性なしね、やっぱヘタレだわ」
「ヘタレじゃねぇ!!」
「だって、甘いものが嫌いだなんてヘタレよ」
「どういう理屈だ!!お前も食ってみろ!」

シリウスはがしっと近くの100味ビーンズをがしっと手ずかみで適当に掴み、セフィアの口に押し込もうとする。
はっきり言って男が女の子にするようなことではない。

「仲いいね、セフィアとシリウスって」
「1年の頃からあんな感じだね」
「そうだね、誰にもとめられないって感じかな?」

の言葉にリーマスとピーターが返す。
間に入り込めないという点では、ラブラブなジェームズとリリーのカップルと同じようなものだろうかとは思う。
最も、本人達がそんなことを聞けば即座に否定の答えが返ってくるだろうが…。

「彼らは放っておいて、僕らは食べよう?ほら、

リーマスが100味ビーンズを差し出す。
はその中から1つ赤っぽいものを選んで口に運ぶ。

「うん、リンゴ味」

リーマスも1つとって口に運ぶ。

「僕のはブドウ味だね。ピーターもどう?」
「あ、うん」

ピーターは緑色のビーンズを掴んで口に運ぶ。
噛んだ瞬間口の中に味が広がり顔を顰める。

「う、雑草味…」
「わ、大丈夫、ピーター?ほら、これならレモン味だと思うから」

は心配そうに1つビーンズをとり、ピーターの口に運ぶ。
ピーターは勧められるままにそれを口にする。
そのビーンズを噛んだ瞬間顰めていた顔が驚きへと変わる。

「ホントにレモン味だ。すごい、!どうして分かったの?」
「う〜ん、なんとなくかな?色と香り、あとは勘!」
「勘って…」
「でも、全部分かるわけじゃないよ?」

そう言って、は分からないのを指していく。
どんな味があるか一度好奇心でいろいろ試したことがあるので、ある程度はなんとなく分かる。
ゲテモノ系はやはり二度と食べたくないのよぅく覚えているのだ。
意外と色も微妙に違うし、何より混ぜられた材料からなのか僅かな香りが違う。
はそれで判断しているのだ。

「これと、これと、これが分からないかな?」

は分からないものを指で指していく。

「この赤いのと白いのと…、黒いの?」
「うん」

赤は鮮やかな赤。
白は少しにごった白。
黒は本当に真っ黒なものだ。

「じゃあ、これ、一人1つずつ担当して食べてみようか?」

リーマスがとんでもない提案を笑顔でする。
驚くとピーターだが、ピーターはリーマスの今の笑顔に逆らうべきでないことを知っているし、でこれが何味なのか気になっていた。
リーマスはその3つを手に取る。
は赤、ピーターは白、そしてリーマスが黒いもの。

「じゃあ、せーのでいこうか」

リーマスの言葉に頷くとピーター。
二人とも真剣な表情なのがおかしい。


「せーの!」


ぱくり


3人がいっせいに口にビーンズを放り込む。
奥歯で噛んで味が口の中に広がる。

「この白いの、ハッカだ」
「僕のはなんだろ?これはゴマかな?」

特にピーターとリーマスのはゲテモノ系ではなかったようだ。
といえば、口元を手で抑えている。

?」

リーマスが心配そうに声をかけると、はリーマスを見上げる。
目が潤んでいる。

「りぃ〜ます〜、辛いよ〜〜」

ふにゃ〜と訳の分からない効果音を言いながら、食べかけのビーンズを舌に乗せて口をあける。
どうやら赤いのは激辛唐辛子味だったようだ。
あまりの辛さには目を潤ませている。
甘いのは好きだが、辛いのは嫌いである。
思いっきりお子さま舌なのは分かるが、どうにもならない。


「ん…?」

苦笑しながら、リーマスはの頬に手を添えて顔を近づける。

ぺろ


「…っ?!!」


の舌にのっていたビーンズをリーマスが舌ですくって自分の口にいれる。
リーマスは甘いの大好きだが、辛いのが駄目なわけではない。
その場面をばっちり見ていたのは運がいいのか悪いのかピーターだけだった。

「う〜ん、これは確かに本当に辛いね」

にこっとに笑みを向けるリーマス。
全然動じずリーマスは微笑んでいるだけ。
リーマスがさっきしたことは、キスではない。
ないのだが…の舌とリーマスの舌が触れ合ったのだ。
は思わず顔を赤くする。
そういうことに関してまだ全然免疫がないのだから仕方ないだろう。

「リ、リ、リ、リーマス…!」
「ん?何?」

何事もなかったかのようなリーマス。
激辛唐辛子ビーンズを食べ終わる。
そういうところがリリーに腹黒いといわれる所以だろう。
はそれに気がつかない。

「い、今、何…?」
があまりにも辛そうだったからね。辛いの駄目でしょ?」
「うん、そうだけど…って、じゃない!でもあんな風に!」

は自分の顔が赤くなっているのが分かった。
口元を右手で覆いながらもリーマスを軽く睨む。
今度は辛いのとは別の意味で涙が出そうだった。
本当に吃驚したのだ。
驚いた感情があるだけで、嫌だとかそんなことは全然分からない。


「どうしたの??」


ちょっと騒がしいとリーマスの様子にリリーが声をかけてくる。
こちらに来るリリー。
リリーが来たので勿論ジェームズも一緒にくっついてくる。
リリーとジェームズは顔を赤くしたを見る。

「リーマス、何かしたのかい?の顔が真っ赤だけど」
「さぁ?どうだろう?」
「いくらリーマスでも私の親友に手を出したら許さないわよ!」

リリーが両手を腰につき、リーマスを睨む。
それに慌てたのは

「ち、違うのリリー!なんでもないの!ちょっと私が大げさに驚いちゃっただけで!」
?」
「本当に何でもないの!」

(そう、別になんでもない事なんだよ。だって、リーマスは親切でやってくれたことだし。女子にあれだけ人気があるリーマスだからあれくらいのことなんて普通のことなんだろうし…)

そう思ったの胸がちくんっと痛んだが、気にしないことにする。
リーマスは人気者だ。
だから平凡な自分がこうしていられるだけで幸せなんだと、胸が痛くなるようなことなんてないはずだと思う。

「本当に何もされてない?
「大丈夫だよ、リリー。リーマスが変なことするわけないじゃない」
「いいえ!だって、はこんなに可愛いいんだもの、リーマスが変なことしないとは限らないわ!」
「か、可愛いって、リリー別にお世辞は…」
「お世辞なんかじゃないわ!もう、ってば」

そう言われても、は自分の容姿が平凡であることくらい承知している。
だから苦笑を返すだけ。

ただ、この時から。
はただの甘党の知り合いとしてみていたリーマスを意識し始めたのだった。
それは恋心というにはまだ小さい想いで、ようやく友人として、大切な友人としてみるようになったというべきか?
でも、これははじまり。