マグルにおけるホグワーツの考察 4




魔法薬学の教室にいつまでもいるわけには行かないため、、セブルス、シリウスで並んで大広間へと向かっている。
たまにすれ違うホグワーツの生徒達が、驚いた表情をしてすれ違っていく。
よほど珍しい組み合わせなのだろう。

「どうも、珍獣扱いされているようだが…。私が珍しいのか?それとも君たちが一緒にいるのが天然記念物並みに珍しい事なのか?」

生徒達の視線など気にしないかのように、はさくさく歩いていく。
は暫くセブルスかシリウスの反応を待っていたのだが、双方共に一言も返事をしない。

「……君らは、お互い声も聞きたくないほど嫌っているのか?」

自然との声が低くなってしまうのは仕方ないだろう。
お互いが嫌いあっているのは別に構わない。
だが、自分の言葉が無視される形になるのは気分のいいものではない。


黙々と歩き続けるうちに、大広間に到着する。
今は丁度太陽が真上にある時間帯、つまり昼食の時間だ。
この時間、大広間で食事をする人もいれば、他の場所で食事をする人もいるのだろう。
4つある大きな長いテーブルのうち、満員というわけではなさそうだ。

「セブルス、席というのは決められているのか?」

がざっと見るかぎり、長い各テーブルでは、同じネクタイをした生徒達がまとまっている。
から向かって右側から、青系のネクタイ、緑系のネクタイ、赤系のネクタイ、黄色系のネクタイの生徒達になっているようだ。
リリーから聞いた事があるのだが、ネクタイの色が寮のカラーになっているらしい。

「寮ごとに決められている。個人の席がどこという指定はないがな」
「そうか。それなら、スリザリンの席にでもお邪魔させてもらうか」

は緑系のネクタイをした生徒達が席にいるテーブル、スリザリンの方へと向かおうとする。

「おい、待てよ」

それを引き止めたのはシリウスだ。
シリウスはグリフィンドール生である。
スリザリンの席には行きたくないのだろう。

「なんだ?シリウス」
「俺もお前に話があるんだけど?」
「そんなこと分かってる。だが、昼食の時間を潰しては悪いだろう?食べ終わってから時間があるなら聞くよ」
「けど、別にグリフィンドールの席でもいいだろ?」
「生憎私がお世話になるのはスリザリンだ。それに、セブルスは友人だが君は単なる親戚だ。どちらを優先するかなど分かるだろう?」

シリウスが嫌いなわけでもない。
だが、にとってはセブルスの方が気が合うし話をするのも楽だ。
身内のような付き合いのシリウスを後回しにするのは当然だろうとは思う。
特に重要な話をしたいわけではないのだろうし。
シリウスは納得できないのか、むっとした表情のままとセブルスを睨む。
思わずため息が出てしまう

「別に今日に今日、聞く必要があるわけではないだろう?私は最低でも2週間はいるんだ。その間に話す事ならいくらでも出来る」

そこで言葉を止め、は少し考える。
シリウスとセブルスが一番聞きたいことくらい分かっている。
それならば、それが分かれば十分じゃないのだろうか。

「それから、私がホグワーツにいるのは、恩師に言われてミスター・バンズに用があるからだ。恩師とミスター・バンズは知り合いのようでな、魔法界のことを知っている私が来ただけだ」
「…は?」

一気に話したに一瞬あっけにとられるシリウス。

「知りたかったのだろう、シリウス。これで、疑問は解けたな。では、そういうことだ」

はそう言ってスリザリンの席へとさっさと向かってしまった。
セブルスもその後をついていく。
残されたのは呆気にとられたままのシリウスである。


さっさとスリザリンの席に向かいセブルスの隣にちゃっかり座っているだが、スリザリンのテーブルとグリフィンドールのテーブルは隣同士だったりする。
運がいいのか悪いのか、とセブルスが座ったのは、丁度グリフィンドールと背中合わせになる場所だ。
振り返ればグリフィンドールの生徒がいる状態である。

、食べないのか?」

頬杖をついて、食事風景を見ているだけのに、セブルスが声をかける。
スリザリンのテーブルにいるものの、は食事に手をつけようとはしなかった。

「私は生徒ではないからな。金も払ってない身だから、許可なく食事に手をつけるわけにはいかないだろう?」
「だが、そのくらい…」
「気分の問題だ、気にするな」

先ほど会ったダンブルドアの雰囲気から察するに、ここで食事をしていたとて怒られることなどないだろう。
ただ、が許可なく物を頂くのは嫌だと思うだけだ。
食べ物でも何でも、それは誰かが働いて出来たものだ。
は、何もせずにそれに手をつけられない性分なのだ。


「シリウス!何ぼーっと突っ立っているんだい?!こっち、こっち!」


真後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきて、一瞬固まる
こめかみを抑えるように手をあてて思わずため息。
ここはホグワーツであり、大切な幼馴染もその彼もいるのは分かっているのだ。

「何、ぼうっとしてたのさ?それに、セブルスと一緒に来てたみたいだけど珍しいね〜」
「別にいたくて一緒に来たわけじゃねぇ…」

ぼそっと呟くシリウスの声も間近に聞こえる。
ちらりっと隣のセブルスを見れば、眉間にシワを寄せながら食事をしている。
分かりやすい反応だ。

「セブルスと一緒に来たのって、もう1人一緒にいた子と何か関係があるの?」

尋ねているのはの知らない声だ。
そう言えば…とは思い出す。
リリーの話では、ジェームズ達”悪戯仕掛け人”は全部で4人だということだ。
そうすると、この声の主はその1人だろうか。

「ああ、大いに関係あるぜ。なぁ、?」

シリウスが頷き、の方に矛先を向けてきた。
仕方なく振り向く

「こっちに矛先を向けるな、シリウス。食事くらい静かにしろ」

大きなため息と一緒に答える


ええ?!?!!


の姿を見て大きな声を出したのは勿論ジェームズだ。
シリウス、セブルスと一緒にいた事に気づいていなかったのだろうか。
そう思うが、あれは遠目だったために視力の悪いだろう…眼鏡を掛けているから視力が低いと思われる…ジェームズには分からなかったのかもしれない。

「君!何でこんなところにいるのさ!!」
「あれ?ジェームズはこの子のこと知っているの?」

先ほどの聞き覚えのない声の主は、ジェームズの隣に座っている少年からのものだったらしい。
鳶色のやわらかそうな髪に同色と言ってもいいだろう瞳。
雰囲気はとてもやわらかそうな感じの少年だ。

「知ってるも何も、リーマス!僕がこの間言っていた、休暇中に会った悪戯仕掛け人補欠候補人員だよ!」
「でも、その子ってマグルだって言ってなかった?」
「マグルのはずなんだよ。だって、本人もそう言っていたしね。だから、ここにいることが不思議なんじゃないか」

知らぬところで話がとんでもない方向に進んでいるような気がした。
は”悪戯仕掛け人補欠候補人員”など知らない。
いつの間にそんな事になっているのだろうか。

「食事くらい静かに出来ないのか、貴様らは」

ぼそっとセブルスの声が妙に響く。
セブルスはジェームズ達には背を向けたまま、食事の最中である。
目も合わしていない。

「なんだよ、スネイプ。言いたい事があるならはっきり正面向いて言えよ?」
「それとも僕らが怖くて振り事すらできないのかい?」
「お前にはそれくらい愁傷な態度がお似合いだけどな」
「いつもそれくらい愁傷な態度なら、僕らも手加減してあげるんだけどねぇ」

シリウスとジェームズの言葉にセブルスの手がぴたりっと止まる。
はそれに気づき、セブルスの肩をぽんっと軽く叩く。
放っておけば、セブルスは挑発にのって怒鳴り返すだろうと思ったからだ。

「やめとけ、セブルス。ポッター達の軽い挑発に乗るのは君の悪い癖だ。これくらい軽く受け流せるようにならないと、いつまでも状況は改善されないぞ」

の言う事は最もだ。
怒鳴り返したい気分だろうが、セブルスはそこをなんとか抑える。

「へぇ、セブルス。1人じゃ無理だからを味方に引きずり込んだんだね」
「1人じゃなにも出来ねぇってか?」

にやにや笑うジェームズとシリウス。

「誰かの手を借りなけりゃ、文句の1つも言えな…」
シリウス
「……なんだよ、

シリウスの言葉を途中で遮る
いつもこんな様子なのだろうか。
何が気に入らないのだろう。
それとも気に入らないのではなく…。

「セブルスが嫌いなら無視すればいいことだろう?それとも何か?セブルスにそんなに構うって事は、シリウスもポッターも実はセブルスを愛しているのか?」


ぐわぁっしゃぁぁぁん!!


の言葉に盛大に椅子から転げ落ちるシリウスとジェームズ。
セブルスすらも盛大に顔を顰めている。

全然違う!!
どこをどうしたらそんな考えに至るんだい?!

当然の事ならが抗議するシリウスとジェームズ。

「そうか?愛と憎しみは紙一重というから愛を憎しみと勘違いして…」
「違うって言っているだろーがっ!」
「僕が愛しているのはリリーだけだよ!」

その手の反応が返ってくるだろう事は分かっていたが、ここまで盛大に反応されると面白いと思ってしまう。
もう少し反応を見てみたいところだが、セブルスの方の機嫌が降下し続けるのはよくないだろう。
冗談だ、とが口に出そうとしたが、それを遮るかのように笑い声が響く。


あはははははは!!シ、シリウ…ス、とジェー…ムズが…っ!セブルスを……あい、愛し……!!はははは!」


涙を浮かべるほどに盛大に笑い転げているのは、先ほどジェームズがリーマスと呼んだ少年だ。
肩を震わせて盛大に爆笑している。
よほどの”ジェームズとシリウスはセブルスを愛している”発言がツボだったようだ。

「リーマス!てめぇ、笑うな!」
「そうだよ!大体君だって悪戯には参加していたじゃないか!僕らと同じだよ!」
「ぼ……僕は確かに…」

笑いを堪えながら話すリーマス。
一度息を整えて笑いをおさめて落ち着かせる。

「確かに僕も悪戯に参加していたけどね、別にセブルスのことは嫌いじゃないよ」

すぱっと言い切るリーマス。
シリウスやジェームズほど、セブルスのことを嫌っているわけでないから、君たちとは違うと言いたいのだろう。
セブルスはリーマスの言葉に盛大に顔を顰めた。
嫌いではないと言われても嬉しくなどないのだろう。

なんとなく、彼らの関係が分かる気がする言葉だな。

はそんな事を考えながらリーマスの方を見るのだった。