マグルにおけるホグワーツの考察 2





ホグワーツ魔法魔術学校。
魔法魔術学校の中では最高の学校とも言われる魔法学校である。
偉大なる魔法使いであるアルバス・ダンブルドアが校長をつとめ、教師生徒共に優秀なものが多いと言われている。
大きな森の中にマグルから隠された大きな城。
それがホグワーツ魔法魔術学校である。

「ホグワーツについてはどれだけ知っている?」
「そうですね…、魔法を学ぶ学校である事、全寮制であること、寮が4つありそれぞれがグリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフという名であること。…くらいでしょうか」

ホグズミード駅から降りて、馬車でホグワーツ城まで向かう。
馬車の中、ケルトはがホグワーツについてどれだけ知っているかを聞いてきた。
実際はそんなにたくさんのことを知っているわけではなかったりする。
使う魔法は高度で独学のものが多いが、一般的な魔法学校のことはリリーから聞きかじった程度のことしか知らない。

「魔法薬学については?」
「そういう教科があることと、あとは初歩の魔法薬の作成の方法は分かるとは思いますが…。まぁ、全部独学ですけどね」
「それならば、多少授業に手を貸してもらっても構わないか?」
「授業に、ですか?」
「ああ…、6年で問題児がいて目を離せん。そいつらにかまけてばかりもいられんから、その時ばかりは誰かの手を借りたいくらいだと思っていたからな」
「私は短期間しかいられませんけど?」
「短期間でも楽になるなら構わん」
「それなら、事前に説明を頂ければお手伝いいたしますよ。一般大学の講義経験も一応ありますから、教える立場の事は多少は分かるつもりです」

問題のある生徒というのはどこにでもいるものだ。
それは授業に全くついてない生徒であったり、わざとかと思えるほど失敗が多い生徒だったり、余裕で授業を受けているからこそ暇な為に授業妨害をしようとする生徒だったりと。

「授業についていけない問題児なら分かりやすく教えればいいだけですが、授業妨害をするような問題児ならば、実力行使で黙らせるという手段をとる事をお勧めしますよ」

にこりっとがケルトに笑みを向けると、ケルトは疲れたような大きなため息をついた。

「ミスター・バンズ?」

どうしてため息をつくのだろうか。
が不思議に思うと、ケルトは苦笑したような表情を向ける。
呆れたような雰囲気も見える。

「いや…、ミス・は本当にあいつの教え子なんだな…としみじみ思っただけだ」

それって、私が教授に似ているという事か?
いや、私はあそこまで酷い性格のつもりはないんだがな…。

が恩師をどういう風に思っているかがよく分かる内心の言葉である。
それほどまでにあの教授はひねくれた性格をしているということなのだろうが…。
魔法使いで腐れ縁のケルトさえも苦労しているだろう彼は、今頃は研究室でゆったりと過ごしている事だろう。




早朝に出てきたが、もう起きている生徒達がいるようでちらほら見える。
黒いローブにつつまれたホグワーツの生徒達。
は、普段同年代以上の人が通っている大学に通学している為、ホグワーツの生徒達は幼く見える気がする。

「ミス・。寒くはないか?」
「ええ、大丈夫ですよ。コートも着てますし」

保温魔法もかけてありますし。
と内心のみで呟く
コートの中はセーター一枚の薄着だ。
それでも寒くないのは、外気温遮断の魔法と保温の魔法をかけているからだ。
の側に触れるくらいまで近くに寄れば、彼女の周りだけが暖かいのが分かるかもしれない。

「ホグワーツには暖房器具はないが…」
「平気ですよ」

暖をとるのに魔法を使えば全然平気なのだから。
はケルトの気遣いをよそに、にこりと微笑む。
こういうところが恩師である教授に似ていると言われるのだと思われる。
つまり、何か含みがあるような笑顔ということだ。

「部屋の方は、昨日の夜に校長にフクロウ便で頼んでおいたから大丈夫だとは思うが…」
「寝泊りが出来る部屋ならば物置でも構いませんよ」
「そうか、それならとりあえずは校長室へ…」

行こうか、とケルトが口を開いたが。


「その必要はないようじゃの」


老人の声が割り込む。
真っ白く長い髭と髪、三角帽子にゆったりとした灰色のローブ。
三角眼鏡の穏やかな表情の老人。
その雰囲気とその姿だけで分かる。
恐らく彼が、このホグワーツの校長である”ダンブルドア”なのだろう事が。

「わしとは初対面だったかの?
「ええ、そうです。初めまして、ミスター・ダンブルドア。です。暫くお世話になります」

ダンブルドアの名を聞いたのは、ホグワーツ入学許可証がきた時。
実際に会った事はないが「あの偉大な魔法使いがいる魔法学校に何故入学しない?!」と魔法省に怒鳴られた事は覚えている。

「ケルト、の部屋にはわしが案内しよう。ケルトには授業の準備があるじゃろう?」
「ですが、私の客人です。校長のお手を煩わせるわけには…」
「構わんよ、わしは今丁度暇なんじゃ」
「……それでは、お任せします、ダンブルドア。ミス・は荷物を置き終わったら、私の部屋に来てくれ」
「分かりました」

ケルトはそのまま急ぐようにどこかへと向かっていった。

忙しいのならば、急ぐとでも言えばよかったものを。
何より休暇中でもないのに教授の所になんて来なければ………、いや、あの人のことだから脅したんだろうな。

恩師の性格が結構分かっているは想像ついてしまう。
ケルトが苦労してそうで少し同情する。

「さて、。君はどこの寮がいいかの?」
「寮…ですか?というと、私が今日からお世話になるのはどこかの寮の空き部屋ということになるんですか?」
「せっかくじゃから体験入学のつもりで寮生活でもしてみたらどうかと思っての」

ダンブルドアはがホグワーツに通っていない事を気にしているからなのか、寮の空き部屋を使えという事らしい。
これだけの大きな城だ。
客間もあるだろう。

「お気遣いありがとうございます。別に希望の寮はありませんが…」
「それならば、組み分け帽子にでもきめてもらうかね?」
「組み分け帽子?」
「そうじゃ。1年生が寮を決める時に使う魔法の帽子じゃよ」

帽子でどうやって寮を決めるんだ。
まさか帽子が考えてしゃべるのか?
だが、魔法界帽子なのだからそれくらい非常識な事があってもおかしくはないかもしれないが…考えて喋る帽子ってのはすごく変だ。

「そうと決まれば、わしの部屋に行こうかの。組み分け帽子はわしの部屋にあるんじゃよ」

嬉しそうなダンブルドアには曖昧な笑みを返しただけだった。
何故そんなに嬉しそうなんだろうか。
そんな事を思いながら…。



ホグワーツの寮は全部で4つ。
ホグワーツ創設者4人の特色が現われている寮である。
グリフィンドールには勇気ある者を。
スリザリンには真に狡猾なる者を。
レイブクローには賢き者を。
ハッフルパフには優しき者を。

は自分がどの寮になると思うかね?」

校長室でダンブルドアはぼろぼろの帽子を差し出しながら問う。
十分に使い込まれ年季が入った…といえば多少聞こえはいいが、いつ洗濯をしたのだろうかと思えるほどに布地も何もかもがぼろぼろの三角帽子。
よれよれでシワのついた部分は、閉じた目と口に見えなくもない感じがする。
それだけ深い皺だ。

「そうですね…。まず、間違いなく、ハッフルパフとグリフィンドールは有り得ませんね」
「ほぅ…。スリザリンかレイブンクローということじゃな」
「そういうことになります」

自分が優しいと称されるほどの人物でないことは分かっている。
だからと言って飛びぬけた勇気があるわけでもない。
勤勉ではあるだろう。
恩師のおかげで昔はともかく今は随分とずる賢くはなってきてる……と思う。

「あとは組み分け帽子がどう判断するかじゃの」

ダンブルドアがの頭に組み分け帽子をかぶせる。
あまりの汚さにちょっと被るのが嫌だな、と思ったりしている


―うむ…、お嬢ちゃんが噂のホグワーツ入学を断った子かね?

…本当に帽子が喋るんだな。

―しかしどの寮に相応しいかの〜。

適当に決めてくれ。
どうせ短期間の滞在しかしないんだ。

―素質はあるの、しかもあの家系の子じゃからの。

人の話を聞いてくれ。
それとも聞く耳がないのか、この帽子は…。

む!随分と失礼な物言いじゃの!お主に相応しい寮はやはりここじゃな!

何でもいいから早くしてくれ。

「スリザリン」

静かに帽子の声が響いた。
さほど広くない校長室に響いた声は、ダンブルドアにも十分聞こえた。
の頭からそっと帽子を上げるダンブルドア。

「決まりのようじゃな」

にこりっとダンブルドアは笑みを浮かべる。
はそれに軽くため息をつくだけだった。
短期間お世話になる場所を決めるだけで少し疲れが出てきてしまった。
ホグワーツに入学しなくて正解だったかもしれないと思ったのだった。