マグルにおける魔法使いの考察 6
あの後、セブルスとは薬草談義で盛り上がったりしてしまった。
薬学は専門ではないのだが、なかなか興味深い。
恩師の教授も薬草関係を扱うので、マグルの薬草もそれなりに覚えてはいるである。
魔法薬での現象はマグルの科学で起こす現象と似たようなものがあり、ついつい聞きいってしまったのだ。
これで終わるのは勿体無いと思ったは次回の約束も取り付けていた。
せめて学校が始まるまでは、話をする時間が欲しいと思ったのだ。
嫌がると思ったセブルスの方だが、苦笑しながらも了承してくれた。
やはり接し方次第で変わるものなのだとしみじみ思ってしまった。
結局リリーと合流したのは夕方近かった為、また明日一緒に出かけよう、ということになった。
部屋でリリーは教科書にざっと目を通していた。
は家から持ってきた本を開いて一緒に読書に励む。
そのまま時間が過ぎていき、夕食の時間になる。
「、私あれから少し考えてみたの…」
夕食を食べ終え一服の時間と言うとき、リリーが口を開いた。
それまではなんでもない話ばかりしていたのだが…。
「ジェームズの事…」
の言葉がきいたのか、考え方が少し変わったのだろうか。
「それで…?」
「うん…。私、今まで先生方の言うことが絶対で正しくて、校則はきちんと守らなければならないって思っていたの。でも…私も校則を破ったことくらいあるのを思い出したの」
「それはどんな時だった?リリー」
答えは分かっている。
校則は守らなければいけないものだと、真面目なリリーは思っていただろう。
それを破ってまですることは、それ以上に大切なものがあった時。
「同室のルームメイトが怪我をした時……、私、何度も何度も真夜中に抜け出したわ。あの子が心配で会いたかったから…。その時、ジェームズ達は協力してくれたの…ずっと忘れてたわ」
校則を破った理由がリリーらしくて思わず苦笑してしまう。
悪戯好きの子供っぽい少年達は、リリーのような校則破りの頼みごとなら喜んで引き受けそうな気がする。
校則に縛られない子供達の味方と言うところか。
「5年になって、監督生になって…校則をきちんと守ってみんなのお手本にならなきゃって思い込んでたせいで、ジェームズに怒ってばかりいて、ちゃんと見えてなかったみたい…」
困ったような笑みを見せるリリー。
「もうちょっと、ジェームズの話を聞いてみようって思うの。…だから、には一緒に来て欲しいな…って」
「そういうことなら全然構わないよ。それに彼氏のフリしたままで、様子を見ても面白そうだしね」
くすくすっと笑う。
ジェームズをすぐに否定せずに向き合ってみようと思ったリリー。
「ミスター・ポッターはどうやら勘違いしたままだし。彼がどれだけ本気か分かるかもよ?リリー」
「!そうやって人を騙すのは良くないわ!」
「あれ?持ちかけたのはリリーだろう?」
「…そ、そうだけど…」
騙すのが嫌と言う訳ではなくて、ただ誤解されたくないだけなのでは?
リリーの”大嫌い”は本当の大嫌いではない可能性が高くなってきた。
誤解を解くのは構わないが…あの様子では本当に信じ込んでいるので、違うと言っても信じるかどうか怪しい。
信じたとしてもに何らかの報復なり何なりは絶対来そうな気がする。
ばさばさっ
突然のようにフクロウが一羽リリーの元に飛んでくる。
食事中にフクロウが来るのは珍しい。
リリーもも驚きの表情を見せていた。
にとってはフクロウ便すらも珍しいものだ。
リリーとしかフクロウで手紙のやりとりをした事がない。
フクロウは1通の手紙をリリーもとに落としてそのままばさっと去っていった。
返事がいらないものなのだろうか…。
フクロウは大抵相手が返事を書くまで待っていてその返事を主人の元まで持って帰っていくことが多い。
「誰からかしら…」
リリーは手紙を裏返して差出人の名前を見る。
「ジェームズ…からだわ。…まさか変な手紙じゃないでしょうね…」
「大丈夫じゃないかな?」
「…、何の根拠があってそんなこと言うのよ。ジェームズの手紙を甘く見ては駄目よ、今までだって…」
ぶつぶつと言いながらためらいなく封を切る。
今までジェームズから来ただろうとんでもない手紙ならば、は心当たりがある。
イースター休暇になるたびに叫び声あげるリリー。
それは封を切ったとたんに『カエルチョコ』が飛び出してくる手紙だったり、掃除に大変な大量の花びらが吹き出てくるものだったり…と。
現場を目撃したことがあるのだ。
「普通の手紙だわ…」
封を切っても何が起こるでもなし、普通の羊皮紙が出てきただけ。
リリーは手紙に書いてある文字を目で追っている。
はリリーが手紙を読み終えるまで待つ。
羊皮紙一枚ではそう長い手紙ではないのだろう。
「明後日…、見せたいものがあるからも一緒に会わないかって」
「はい?」
「だから、明後日、ジェームズが私とに見せたいものがあるから会おうって書いてあるの」
どういう風の吹き回しだ?
否、十中八九罠だな。
絶対に何か仕掛けてくるつもりだ。
「私は別に構わないが…?向うから誘ってくれるなんていい機会じゃないか」
「そう…よね!」
にこやかな笑みをリリーに向ける。
の言葉にリリーも嬉しそうな笑顔を浮かべる。
いい度胸だ、ミスター・ポッター。
今日のあの出来事といい、今日の手紙の誘いといい。
受けて立ってやろう。
心の中でそんなことを思っていたりするだった。
その夜、寝ようとしたの元に1通のフクロウ便。
しつけが随分行き届いたフクロウのようで、寝静まったリリーに気づいたのか、静かに手紙を落としてきた。
差出人は…
―セブルス・スネイプ
思わず苦笑する。
また会おうと約束したがいつとはきちんと決めていなかった。
こちらから連絡を取ればいいと思っていたのだが…。
「律儀だな…セブルス」
封を切って中身を見れば、綺麗な文字が見える。
ダイアゴン横丁の魔法薬店のリスト、薬草店のリスト。
それから、嫌でなければ”ノクターン横丁”へも行かないか?との誘い。
「ノクターン横丁…?」
ダイアゴン横丁しか知らないは首を傾げる。
ここから近いのだろうか。
「随分と綺麗な響きの名前だな…」
「ノクターン」という名の曲がマグル界にはある。
曲名が町の名前になっているのは妙な感じだ。
セブルスが提案してくるということは、そこにはまたダイアゴン横丁とは違ったものがおいてあるのだろう。
「行くなら私は早いほうがいいな。いつまた緊急で呼び出されるとも分からない」
明日では急すぎる。
だが、明後日はリリーと一緒にポッターに会いに行かなければならない。
ポッターの用事も2日もかかることなどないだろう。
「3日後だな」
羊皮紙を一枚取り出して、羽ペンでさらさらっと返信を書く。
待ち合わせ場所は後ほど連絡を、と記入。
ダイアゴン横丁に何度か来た事があるだが、そう詳しいわけではない。
行く場所は大抵薬草店か書店だ。
お行儀よくの返事を待っていたフクロウに返事の手紙を持たせる。
フクロウは「ホゥ…」とひと鳴きして飛び立っていった。