古の魔法 16






3年生も終わり、今年もグリフィンドールが寮杯を獲得。
グリフィンドールは歓声を上げて喜ぶ。
そして…、帰省。

、手紙送るわ」
「うん、私も手紙送るよ、ハーマイオニー」

キングクロス駅ではハーマイオニーと手紙の約束をした。
の両親の姿はまだ見えなく、ハーマイオニーの両親はすでに来ていたので先に行くようだ。
グレンジャー夫妻に軽く挨拶しては待つ。
まだ、両親が来てないハリーとロン、双子、ジニーと一緒に。

「どうしたんだろう、パパ達。いつもならもう来てるのに」

ロンが不安そうにきょろきょろと見回す。
ハリーも不安そうにあたりを見回す。
残っている生徒はほんのわずか、迎えが来ている生徒達が殆どだ。

「本当に夢じゃないのかな?父さんと母さんが迎えに来てくれるのかな?」

ハリーの不安はロンとは少し違う。
まだ両親が生きていることが信じられないようだ。
迎えに来たのが、ダーズリーの夫婦だったら…?

「ハリー大丈夫さ!!あの伝説のプロングスが何の理由もなしに遅れるわけないだろう?」
「きっとまた凄いことを企んでいるのさ!!」

ウィーズリーの双子がハリーを励ましているのかなんなのか分らない言葉を言う。
双子からしてみれば、ジェームズに会えるのが嬉しいのだろう。
何しろ弟子入りしたいと思うほど、彼らを尊敬しているのだから。
確かに、あのセブルスへの悪戯の豪快さを見れば凄いとは思う。


!!遅れてごめんなさい!!」

最初に駆けつけてきたのはどうやらの母。
息を弾ませながら駆けつけてくる。

「お母さん、そんなに急がなくても大丈夫だよ。お父さんは?」
「ごめんなさいね。セイスなら今、アーサー先輩達と一緒に来るわ」
「え?!パパと?!」

驚いたように声を上げたのはロン。
そのロンの言葉で、は「アーサー先輩」がロンの父親だと分った。
の母、カレンはロンににこっと笑みをみせる。

「ええ、ちょっと事情があってね、ジェームズ達も一緒に来るわよ、ハリー」
「え?」
「ハリーでしょう?ジェームズそっくりだわ」

カレンはハリーに微笑む。
とハリーは今まで帰省の列車で一緒になるほど仲がいいわけでもなかった為に、カレンとハリーとは初対面になる。

「あら、噂をすれば、だわ。来たわよ」

苦笑しながらカレンはこちらに向かってかけてくる人影を見る。
かなりの大人数のようだ。
ロン達の両親のアーサー、モリー。
の父親のセイス。
ハリーの両親のジェームズとリリー。
それから、脱獄時とは姿の違うシリウス。

「パパ、遅いよ!!」

文句を言うロン。
双子達は自分達の両親よりもジェームズとシリウスの方が気になるようだ。
弟子入りでもする気なのだろうか?

「いや〜、悪い悪い。魔法省の仕事がな」
「シリウスの無罪放免の件でまだ忙しいかったのよ」

何しろ魔法省の中でも、シリウスの無罪放免はかなりでかい事件である。
シリウスが逃げ出しただけでもあれだけ騒がれた。
そのシリウスが実は無実だったなど…魔法省へのクレームが多いこと多いこと。
管轄外にも関わらず、魔法省勤めが長いアーサーもそれに借り出されて忙しかったのだ。

「その件では、本当にお世話になりました、アーサー先輩」
「あ、いやいや。これくらい、いつでも頼ってくれ!ジェームズ」
「いえ、仕事までお世話になってしまって、本当にありがとうございます」

ジェームズはアーサーに心から礼を述べる。

「お礼といっては何ですが、ロナルド君に、この子を…」

ジェームズが手の平に載せてそれをロンに差し出す。
ぴょんぴょんと跳ねるようにいるのは小さなフクロウ。
小さいといっても、ジェームズの両手の平に乗るくらいなのだが…それでも軽く持ち上げられるくらいは軽い。

「え?僕に?!」
「君のペットだったスキャバーズ?だっけかな?アレは逃げてしまったから変わりにね」
「あ、ありがとうございます!!」

ロンは嬉しそうにその小さなフクロウを受け取る。
今までお金がなくて自分専用のフクロウなどもてなかったから嬉しい。

「まぁ、ありがとうございます。さぁ、行きましょう、ロン」
「あ、うん、ハリー!!手紙出すからね!も!」

ロンがハリーに叫ぶ。
もハリーはにこっと笑みを見せて手を軽く振った。
だが、ハリーの意識は両親の元に行っているようである。
双子は心残りがあるようだが、しぶしぶと両親についていった。
ジニーもハリーをちらちら気にしながらもついていく。


「ハリー、本当に大きくなったのね」

リリーが嬉しそうに目を細める。
ハリーは照れくさそうにリリーを見る。

「えっと、お母さん?」

こうやって改めて対面すると恥ずかしいものだ。
リリーは笑みを浮かべ、ハリーを抱きしめた。
ジェームズがぽんっとハリーの肩に手を置く。

「まずは、ダーズリーさん家に挨拶に行かないとね」
「ええ、そうね。ペチュニアには本当に迷惑をかけてしまったわ」

苦笑するリリー。
ハリーは別に迷惑なんてかけてないのに、と呟いたが、聞こえなかったようだ。
いや、聞こえないふりでもしているのか。

「感動の対面はそれくらいにして、行くんだろう?嫌なことはさっさと済ませよう、ジェームズ」
「そうだね」
「ほらほら、本調子じゃないんだから無理すんなよ」

ぽんぽんっとジェームズの背中を叩くセイス。
はというと、シリウスをじっとみて驚いていた。
禁じられた森で見た姿と全然違うのだ。
長くばさばさっとした髪はさっぱりと短くなり、黒を基準とした服。
シリウスはの視線に気付いたのか、の方を見てにこっと笑いかける。

(うぁ、かっこいい…)

思わず顔が赤くなってしまう。
確かに顔立ちは整っているとは思っていたが、きちんとした格好をするとここまでとは思わなかった。

「シリウスさんって、すっごいかっこいいですね」

思わず口から本音がこぼれてしまった。
シリウスは驚いたような表情をしたが、すぐにそれは笑みに変わる。
そして、の頭を軽く撫でる。

「なんか、別人かと思いました。シリウスさんって、単純馬鹿で女たらしってイメージがあったんですけど…普通にカッコいいんですね」
「それは褒めてんのか?」
「え?あ…!ご、ごめんなさい!そうじゃなくて!」

確かに褒め言葉ではないかもしれない。
にしてみれば、シリウスがかっこいいと思ったことを伝えたかっただけなのだが、慌ててしまう。
シリウスはくすくすっと笑い出す。
の頭を撫でていた手を頬に持っていく。
シリウスの手はとても大きい。
手の感触を感じれば、やっぱり苦労した手なんだと判る。
シリウスは笑いながら、そっとの頬に口付けた。

「ありがとな、
っ!

はシリウスの唇が触れた頬を押さえるようにして、顔を真っ赤にする。
シリウスさん!!と叫ぼうとしたが…


ごすっ!どしゃ!!げしっ!ばきっ!!ごすんっ!!


シリウスの身に制裁が降りかかった。
あっけに取られる
じっとシリウスを見れば、彼は無残なまでに地面にはいつくばっている形になっている。
まさに一瞬の出来事。

「万年発情馬鹿犬か?何を考えているだ、君は。時と場所と状況と相手をちゃんと考えるべきだよ」

腕を組んですぐ側でシリウスを見下すジェームズ。
ジェームズは蹴りを食らわせたらしい。

「ジェームズから話は聞いていたけれど、本当に貴方馬鹿犬ね、シリウス。学生時代から全く進化していない、いえ、むしろアズカバンで退化でもしたんじゃないかしら?」

夫と同じくシリウスを見下しながら、黒い笑みを浮かべているリリー。
見事な拳をシリウスに叩き込んだようだ。
手が拳をまだかたどっている。

に…、いい度胸だな、

目が笑っていないセイス。
大切な娘に、目の前であんなことをされれば父親としては放って置けまい。
踵落としをお見舞いしたようだ。

「シリウス〜、またアズカバンに戻りたいなら協力するわよ?」

リリー同様の黒い笑みを浮かべているのはカレン。
まだ片足でシリウスを踏みつけている。

「シリウスおじさん、信じられないよ」

最後にぱんぱんっと手を払っているのハリー。
やけに「おじさん」の部分を強調していたりする。
どうやら手の中の荷物の入ったトランクをシリウスに思いっきり投げつけたらしい。

「あ、あの、シリウスさん、大丈夫…ですか?」
「だ、大丈夫じゃねぇ…」

かろうじて声を絞り出すシリウス。
だが、以外は容赦ない。

「自業自得だね」
「ええ、全くだわ」
「お前が悪い」
「ちゃんと自分がやったことは責任取らないといけないわ」
「シリウスが悪いよ」

そっけなく返す。
としてはどうしようと戸惑う。
これは放っておいていいものなのか。
迷っているとハリーが手招きしてくる。

「ハリー?」
「いいんだよ、。放っておこうシリウスなんて」
「え?でも!」
「行こう、ね?」

にこっとハリーが笑みを見せる。
どこかその笑みが怖くては反射的にコクコクと頷いてしまう。
そのままハリーに引きずられるように、達はシリウスを残してその場を去っていくのであった。

(本当にいいのかな?)