古の魔法 15





結局、シリウスと魔法省の話し合いは朝までかかり、達は談話室で眠りについてしまった。
シリウスの無実が証明され、魔法省の手配もとけると聞いて安心したのもつかの間。

「た、大変よ!ハリー!」

大広間で食事の最中、ハーマイオニーが慌てて駆け込んできた。
ハリーとロン、それからも一緒に食事をしていた。

「どうしたの?ハーマイオニー。今日は随分と食事に来る時間が遅い…」
「そんなことはどうでもいいのよ、!」
「ハーマイオニー?」

いつの間にか愛称で呼ばれるような仲になったとハーマイオニー。
同学年で同性同士ということで仲が良くなるのも早いものだ。
順応性が高いと言うべきか。

「ルーピン先生が辞めるっていうのよ!」

ハーマイオニーの言葉に驚く達。

「誰かがルーピン先生が人狼だってことをばらしたせいなの!人狼は危険だからって!」

はここで初めてリーマスが人狼であることを知った。
今までの『闇の魔術に対する防衛術』の授業の中では一番面白かった授業だった。
教え方や、授業内容が生徒達が興味を持てる内容のもので評判もとても良かった。

「ばらしたのは絶対スネイプだ!だって、他にそれを知ってる人なんていないだろ!」

ロンが叫ぶ。
は教員の席に座っているセブルスをちらっと見る。
何事もなかったようにもくもくと食事をしているセブルス。
ハリーもハーマイオニーもロンの意見に賛成らしく、セブルスの方を睨んでいる。

「ねぇ、ハーマイオニー。ルーピン先生が人狼だって本当なの?」

突然大好きな先生が人狼だと聞いて、信じられないは聞く。

「本当よ。でも、ルーピン先生はいい先生よ!」
「うん、分ってる。だって今まで一番まともな『闇の魔術に対する防衛術』の先生だったもん!」
「そうよね!人狼だからって関係ないわよ!今は脱狼薬だってあるのに!」

リーマスが誰よりもいい先生だったことを知ってる達にとっては、どうして人狼だからといって危険だと言うのか分らない。
子供ゆえの純粋さというのか。
人狼は差別対象にあるために、世間ではあまり快く思われていない。
だからこそのリーマスの退職だろう。


しぱぱぱぁぁぁぁん!!


ハリー達がセブルスを睨み、が少し考え事をしていると、突然小さな花火のような音が聞こえてきた。
がはっと音のした方を見てみれば、そこのは教員席でセブルスの座っている場所。
火薬の煙か何かが少し漂っているが、教師陣の姿が見えないほどの煙の量ではない。

「え?何?」

生徒達も一斉にそちらの方へと視線を向ける。
煙がはれ…見えたのは”色”が変わったセブルス、そしてその近くにいて巻き込まれたダンブルドアとマクゴナガル先生。
セブルスは真っ黒な髪とローブが見事なまでのレインボーカラーに。
マクゴナガル先生はローブの一部が、ダンブルドアは髪の毛と髭が虹色に。

「ふぉっふぉっふぉ、これはこれは見事なものじゃのう」

ダンブルドアはにこやかに自分の様子を見て、マクゴナガル先生は冷静に杖を一振りして自分のローブを元に戻す。
セブルスは顔を引きつらせて、生徒達を睨みつける、が。
生徒達は、スリザリン生の一部の生徒も笑いを堪えている。
かくいうも普段のセブルスのイメージが崩れたようにおかしな格好に笑いを堪えている。

(すっごいおかしいんだけど、笑いたい、笑いたいけど…ここで笑ったら絶対に減点される!)

セブルスは生徒達を一通り睨み

誰だ!

生徒達はハリーも含め一斉にびくっとなる。
ロンはちらっと悪戯好きのフレッドとジョージの双子の方をみるが、その双子も驚いたようにセブルスを見ていた。
おかしさに笑うより、純粋にこの光景に驚いているようである。


「誰だと言われたら出てこないわけにはいかないね!」
「ここで素直に出てくるのが俺たちのいいところだな」
「でも、それは果たしていいところって言えるのかな?」


教師陣の場所に堂々と現れたのは大人3人。
にこにこ笑顔のジェームズ、未だに髪の毛も服装も脱獄時のままのシリウス、やはりボロボロの服装だがにこやかな笑みを浮かべているリーマス。

「どうやら、成功のようだ!見たまえ諸君、この素晴らしい配色を!」
「よぉ!スネイプ!今日は一段とにぎやかな色だな!」
「君はいつも真っ黒だから、たまにはそんな色の方が雰囲気も明るくなっていいと思うよ」

その光景を呆然と見る生徒達。

「おや、他の先生達も巻き込んでしまったようだね」
「範囲指定の失敗か?」
「まぁまぁ、失敗は成功の元だよ」

ジェームズがレインボー髭になったダンブルドアを見る。
シリウスは大して反省した色は見えなく、リーマスは相変わらずの笑顔。
ダンブルドアは笑みを崩すことなくふぉっふぉっふぉ、と笑う。

「構わんよ、たまにはこの色もいいじゃろう」
「さすが、ダンブルドア!」
「明るい色も学校が明るくなるからいいだろう?」
「お似合いですよ、ダンブルドア先生」

楽しそうに笑いあう、ジェームズ、シリウス、リーマス、ダンブルドア。
セブルスは顔を引きつらせて、眉間のシワを増やす。

「ポッター、ブラック、ルーピン、貴様ら…」

かつてないセブルスの低い怒った声に生徒達は怯えるが、そこはさすがジェームズ達は慣れているのか平然と笑みを浮かべている。

「どうしたんだい?セブルス。明るい色が台無しだよ。ホラ、にこっと笑顔を浮かべないと!」
「俺はお前の笑顔なんて見たくねぇけどな!」
「パッドフット、それは酷いよ。こんなセブルスでも笑顔は素敵かもしれないよ。見る人によっては」
「ムーニー、君も結構酷いこと言ってると思うよ?」
「そうかい?」
「いいんだよ、スネイプごときに気を使うことなんてねぇって!」

にやっと笑みを浮かべてセブルスを見る3人。
セブルスは眉間にシワどころではなく、表情がかなり険しいものになっている。
本格的に怒っているのだろう。

「セブルス、笑顔はどうしたんだい?そんな怖い顔じゃあ生徒達が怖がるだろう」
「そうだぜ、”スネイプ先生”?」
「そうそう、僕をクビにしたくらいだから僕の分も頑張ってもらわないとね」
「そう言えば、ムーニーは人狼だからクビになったのかい?」
「人狼ね〜。じゃあ、人狼が怖いやつらに教えてやろうか」
「何をだい?」
「勿論、人狼を見分ける特徴さ!」

ジェームズはびしっと指を一本立てる。

「1つ、人狼は胸焼けするくらいの甘党である」
「もう1つ、人狼は腹黒である!」
「プロングス、パッドフット、それは何が言いたいのかな?」

にっこりリーマスが笑顔で問う。
シリウスはびくっとなったが、ジェームズはにっこりと笑みを返す。
さすがジェームズ全く動じてない。
そんな二人の言葉にリーマスは付け加えるかのように口を開く。

「大切な特徴を忘れているよ、二人とも」

にやりっとリーマスは笑みをつくり

「人狼は、今ここにいる!」

その言葉にわざと驚いたような大げさな表情をつくるジェームズとシリウス。

「なんてことだ!それを忘れていた!」
「俺も思いつかなかったぜ!!」

冗談交じりの会話。
冗談でこの話題を話せることで、彼らがどんなに信用し合っているかが分る。

「なにはともあれ」
「とりあえずは成功!だな」
「久々だったけど」

ジェームズ、シリウス、リーマスは改めてセブルスを見て、にやっと笑みを浮かべる。


「「「悪戯完了!!」」」


ぼうんっ!!


3人が叫んだと同時に煙が立ち上り、3人の姿を隠す。
セブルスは杖をさっと取り出し、風を起こしてすぐに煙をはらう。
しかし、煙がはれた場所には誰もいなかった。

「…っ!!ポッター、ブラック、ルーピン!!」

叫んでも遅い。
ポッターという呼び名にハリーが少しびくっとする。
あまりにも見事な消えように騒ぎ出す周囲。

「すっげー!!」
「見たかい、今の!!しかもあのコードネームは!」
「我ら現代の悪戯仕掛け人の尊敬する伝説の」
「我ら、心の師匠の名前!」
「僕らはまだまだ修行が足りないときづいたよ!」
「そうだな、相棒!あのスネイプをレインボー一色にするなんて!!」
「僕らは誓おう!」
「そう改めて!!」

「「彼らを心の師匠とすることに!!」」

グリフィンドールから歓声が沸きあがる。
双子の宣言に皆が期待をする。
散々グリフィンドールいじめをしているセブルスにアレだけの悪戯をするという期待だ。

「父さん、シリウス、それにルーピン先生まで…」
「意外だわ、ルーピン先生があんなことするなんて」
「いや、でもいい気味だスネイプのヤツ」

苦笑するハリー、純粋に驚いているハーマイオニー、セブルスの被害に喜ぶロン。

「でも、ジェームズさん達どうやって消えたんだろう?ホグワーツでは姿現しは使えないはずなのに…」
「そう言えばそうだね」

がぽつりっとこぼした言葉にハリーも考える。
どこかに移動したならわかるはず。
それとも透明マントでも持っていたのだろうか?
透明マントの場合、大人3人で一枚では足りない。
元々数少ない貴重なものなのに3枚も持っているはずないのだ。

「後で聞いてみるよ。だって、夏になれば一緒に暮らすんだし」

にこっと笑みを浮かべたハリーの笑顔があまりにも嬉しそうでも嬉しくなってしまった。
両親のいる喜び。
ハリーの喜びは、生まれた時から両親のいるには分らない。
けれど、ジェームズとリリーが無事で嬉しいのはも同じだった。