古の魔法 17





ジェームズ達はまだ本調子でないということで、の両親達がジェームズ達をダーズリー家に連れて行くことになっているらしい。
最初はウィーズリー夫妻が申し出たらしいが、彼らはマグル界に詳しくなく、なによりモリーがアーサーのマグル好きに頭を抱えているのでやめたらしい。
それと、彼らの子供の迎えが大変だろうとのことで…。
ジェームズ達が気兼ねなく頼れて、それでいてマグル界にも多少詳しい夫婦が役目を買って出たのだ。

「ふふv実は家もの家の近くなのよ」

リリーが嬉しそうに微笑んだ。
大きな車を借りて、セイスが運転しつつ向かう。
助手席にはの母のカレン。
その後ろにとリリー。
さらにその後ろの3列目のシートにジェームズとハリー。


「ねぇ、

後ろの席から身を乗り出すようにハリーが、を呼ぶ。
は首だけ動かしてハリーの方を見る。
運転中立つのは危ない、がジェームズもリリーも何も言わない。

「何?ハリー」
「うん、ちょっと聞きたいんだけど。って過去に行ったんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「それって過去の僕にも会ったってこと?」
「うん、会ったよ。まだ、小さいハリーにね」

にこっとは笑顔を返す。
ハリーは少し考える様子を見せる。

「随分に懐いていたわよ、ハリー。覚えてないかしら?」
「リリーさん、流石に1歳の記憶があるわけないですよ」

リリーの言葉に苦笑する

「覚えてるというか…なんとなく、感じだけ知っている気がしたんだ」

ハリーはぽつりと呟いた。
身を乗り出したまま、頭だけぽすんっとの肩に埋める。

「ハ、ハリー?!!」

体勢としては、ハリーの今の体勢は危なっかしい。
だが、やはりとめないリリーとジェームズ。
寧ろにこやかに見守っている。

を抱き上げた時、なんか知ってる感じがしたんだよね。懐かしいっていうか、温かいっていうか、嬉しい気持ちになったんだ。…うん、この匂いだった」
「に、匂い?!!え?!ハリー!」

わたわたと慌てるに今度はハリーが苦笑する。
ジェームズも、ハリーと同じように前の席のシートにもたれかかるようにする。
ジェームズの場合は体格が違うので座ったままで、十分前の席を見れる。

を抱き上げた時って、いつのことだい?ハリー」
「あ、うん。僕がタイム・ターナーで時間を逆転して、シリウスと『僕』を守護霊の魔法で助けた時だよ。、吸魂鬼のせいで気を失ったから…」

ハリーの言葉に少し悲しそうな表情をしたのはリリーとジェームズ。
どうしてが吸魂鬼によって気を失ったのか気付いたからなのだろう。
あの時の、リリーとジェームズが倒れる場面を見ていることしかできなかった
その悲しさと悔しさは…、の心に深く残っている。

「あの時って、ハリーが運んでくれたの?」

はハリーをちらっと見る。
そういえば考えてもみなかったのだが、あの時があの場所にいたということは、誰かが運んだということ。
ハーマイオニーでは無理だろうし、シリウスは捕まっていたはずだ。
となるとハリーしかいない。

「うん、そうだよ」
「お、重くなかった?」
「全然」
「あ、ありがとう。お礼言うの遅くなってごめんね」

は少し顔を赤くした。
そんなほのぼのとした雰囲気のまま、ダーズリー家に向かうのだった。
は気付かなかったが、ハリーがさきほど駅で、シリウスにトランクを投げた理由はここにあったりする。
つまりは、懐かしい匂いのに勝手に変なことされたのが気にいらなかったのだ。
それが、兄弟のような感覚なのか、家族のような感覚からくるかは分らないが…。





ダーズリー家の家はプリベッド通りの中ではごくごく普通の家だ。
庭があり、そこそこ広い一軒家。
チャイムを押したのはリリー。
時間的にはペチュニアとダドリーならばいるだろうか?
と、カレン、セイスも一緒に同行している。
念の為だ。

ぱたぱたと家の中からスリッパの音。
かちゃりっと音を立てて扉が開く。

「はい、どちら様…」
「ペチュニア?」
「え?」

扉を開いたのはハリーの叔母にあたるペチュニアだった。
声をかけたのはリリー。
ペチュニアはリリーを驚いたように見る。

「嘘…、でしょう?」
「久しぶりね、ペチュニア。ハリーを引き取りに来たのだけれど、バーノンさんはいるかしら?」
「姉さん…、どうして?!何で?!!」

ペチュニアは首を横に振るだけ。
驚いているのか信じられないのか。

「今までハリーを育ててくれてありがとう。それと、ごめんなさいね。事情があってずっと連絡できなかったの」
「今更!今更何よ!」
「ごめんなさい」
「どれだけその子を育てるのが大変だったと思うの?!姉さんはいつも自分勝手だわ!勝手に結婚して、勝手に子供生んで!!」
「ペチュニア」
「そして勝手に子供を預けて!そして勝手に取りに来るのね!非常識だわ!」
「ペチュニア、迷惑かけたことは本当に悪いと思っているわ」
「悪いと思っているなら最初からこんなことしないで…!」
「でもね」

リリーがにっこりと笑みを浮かべる。
その笑みにぞくりっと寒気が襲ったと感じたのは、だけではないだろう。

「私、昔も言ったことあるわよね?ペチュニア?」
「ね、姉さん?」
「要点をまとめて必要事項だけ述べて頂戴。貴方の文句を聞きに来たわけじゃないのよ?ハリーの荷物はどこかしら?」

まさしく、リリー最強と言うべきだろう。
大人しくペチュニアの罵倒を聞くつもりは最初からなかったらしい。
リリーは笑みを浮かべながらペチュニアの呆然とした様子を気にせずに家の中に入っていく。
すると、玄関のすぐそばにぽっちゃり…といえば聞こえがいいが…かなり豊満な体系の少年。

「な、なんだよ、お前!家に勝手に入ってくるな!」
「まぁ、貴方がダドリーね、ペチュニアの息子の。あの親父そっくりで可愛くない顔立ちと体系ね。ハリーがお世話になったわ、仕かえ…いえ、お礼は改めて『フクロウ便』で大量に送らせて頂くわ。どいてもらえるかしら?」
「…ひっ!!」

達には見えなかったが、リリーの笑顔がよほど怖かったのだろう。
ダドリーは顔を真っ青にして壁際による。
それからは大した問題にはならなかった。
ハリーの荷物は少なかったのでそれを運び出し、リリーが笑顔で脅して了解を得てそれで終わり。
何かひと悶着あるかと思ったが、何事もなかったかのように終わって何よりだ。





家の3つ隣の家。
そこがポッター家の住まいのようだ。
はハリーと一緒に荷物の整理をしていた。
リリーとジェームズは何かやることがあるらしく…片付けもハリーを迎えに来る前までにある程度はやってあるらしい…今はとハリー二人きりである。

「やることって何なんだろう?リリーさんも、ジェームズさんも」

はハリーの教科書を本棚に納めながら呟く。
箒やトランクの中に入っていた服などをタンスに詰め込んでいたハリーは苦笑する。

「あれじゃないかな?」
「あれって何?」
「ダーズリー家へのお礼の品を送る手配」
「…何送るつもりなんだろ」

は考える。
あのリリーとジェームズの考えなどは想像つかない。
恐らく、ダーズリー家が嫌がるものを送るだろう。

「魔法界のものを送るらしいよ。あの家はマグルの常識外のものが大嫌いだからね」
「魔法のペンとか箒とか?」
「かな?僕はあまり詳しくないけど、魔法界での日常生活ではかなり役に立つもので、マグル界にあっても不思議じゃないものにするんだって」

くすくすっとハリーが笑う。
嬉しいのか楽しいのか、恐らく両方だろう。
も、ダーズリー家には悪いがくすくす笑ってしまう。

それにしても、と思う。
ハリーは本当に嬉しそうに笑っている。

「ハリー、よかったね」

本当に良かったと思う。
両親がいるというありがたみ。
それは元から両親がそろっているにはあまりよく分らなかった。
でも、今のハリーを見ていると、それがどんなに幸せなことかが少し分かる気がする。

のお陰だよ。ありがとう」

ハリーの言葉には照れながらも笑みを返した。
お礼を言われるのは嬉しい。

最初はシリウスの事を信じていた両親が言い出したことだった。
何が起きたか真実を見るために……まさか、それが今ある現実をひっくり返すような事態になるとは思っても見なかった。
裏切ってアズカバンにいたはずのシリウスは無実で、亡くなったはずのリリーとジェームズは生きていた。
それは、が過去に行ったことによって起こった出来事と分ったこと。

未来の事は分らない。
それでも、過去の事すらもその目で真実を確認するまで分らないかもしれない。
事実だけを見ようとせず、真実を知ろうとすること。
それが何よりも大切なのであろう。