アズカバンの囚人編 50
防衛術の授業で、代理教師がセブルスだった事にグリフィンドール生が抗議した。
セブルスが出した人狼の課題は取り消しになってしまった。
残念がったのはハーマイオニーだけである。
今日の防衛術の授業も、生徒にとってはとても分かりやすく一部のスリザリン生以外には好まれた授業だった。
「は後で残りなさい」
「え?…あ、はい」
これで授業も終わりという所で、はリーマスに残るように言われてしまった。
何か怒られるようなことでもしてしまったのだろうか…と不安になる。
授業はそれなりに真面目に受けているつもりだ。
授業は滞りなく終わり、生徒達は教科書を持って教室を出て行く。
残れと言われたは片づけをしているリーマスの所へと向かう。
「ルーピン先生、何か…?」
ひょこひょこ近づいてきたににっこり笑みを向けるリーマス。
「今度のホグズミード行き、許可取り消したからね」
「へ…?」
きょとんっとなる。
突然何を言われるかと思えば、ホグズミード行きの禁止である。
別に禁止になったとしても、は何も困らなかったりするのだが…。
「あ、うん。別に構わないけど……」
ホグズミード行きを楽しみにしているわけではないは別に行けなくなっても構わない。
「やけにあっさりしてるね、。楽しみじゃなかったのかい?」
「う〜ん、行きたいとは思うけど、別に急いでいるわけじゃないし…」
どうしても行くつもりなら、隠し通路使えばいいわけだし。
今度のホグズミードでは、とりあえずハリーが無事に隠し通路使って行けるかを確認できればいいし。
「、もしかして…プロングスに隠し通路を教えてもらっているから平気、だとか思っていないよね?」
リーマスの言葉に思わず顔が引きつりそうになる。
隠し通路はジェームズに教えてもらったわけではないが、それを使おうと思っているのは本当である。
忍びの地図に書いてある隠し通路は、勿論リーマスも知っているだろう。
忍びの地図の製作者の1人なのだから。
「隠し通路で行くのも駄目だよ。はよく無茶するから……」
「そうかな?今年はそうでもないと思うけど…」
「ついこの間1ヶ月ほどいなくなっていてそんな事を言えるのかい?」
「う……。」
が戻ってきた時には怪我はひとつもなかったが、1ヶ月も失踪していれば誰だって心配する。
その間落ち着いて待っている事ができたのは、ヴォルとダンブルドアくらいなものではないのだろうか。
「それから、ハリー。君は私に用があるのかな?」
の後ろの方に視線を向け、にこりっと笑うリーマス。
教室に残っている生徒は、ハリーとだけのようだ。
しんっと静まり返っている教室内。
「ルーピン先生に頼みたい事があるんです」
そう言うハリーの表情は真剣なものだった。
はハリーとリーマスを見る。
リーマスの視線はハリーに、ハリーはリーマスを真っ直ぐ見ている。
「リーマス、用が終わったなら、僕はこれで失礼するけど…」
「うん、そうだね。、くれぐれも勝手な行動は駄目だよ?」
「分かってるよ」
「じゃあ、ハリー、話は奥の部屋で聞くよ」
教室の奥の部屋はリーマスの教師としての部屋だ。
リーマスと一緒にハリーはその部屋の中に入っていく。
おそらく、吸魂鬼の対応方法を聞くのだろう。
は軽くため息をついて、自分が座っていた机の所まで行き、教科書を持って教室を出る。
やっぱり、1ヶ月いなかったってのは、リーマスに心配かけちゃったのかな…。
リーマスの授業から日がたち、季節は雪が降るほどの寒さになっていた。
ホグズミード行きの日、は談話室にぽつんっと残っていた。
他の3年生以上の生徒達は殆どがホグズミードだ。
談話室の暖炉の側で、は暖炉の火で温まりながら本を読む。
うん、こうやってゆっくり過ごすのも、たまにはいいよね。
本当はハリーがちゃんとホグズミードに行けるかどうか、シリウスさんのことを聞くかどうかを確かめたかったんだけど…。
あ、そう言えば、ヴォルさんもホグズミード行ったのかな?
1人で行くような性格じゃないし、かといって誰かと一緒に行くようなイメージもないしなぁ。
後でスリザリン寮の方に行ってみようかな。
普通のグリフィンドール生らしくないことを考えながら、ゆっくり本のページをめくる。
ちなみに読んでいるのは普通のファンタジー小説だったりする。
ホグワーツの図書館は広い。
授業に必要な書物から魔法の専門書、そして微妙に間違ったマグルの本、それから普通に読める小説などなど。
「…?」
「ん?」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれて、本から顔を上げる。
人気のあまりない談話室から女子寮の入り口の方にジニーが立っていた。
「ウィーズリー?」
の方へととことこ歩いてくるジニー。
「、どうしているの?ホグズミードは行かないの?」
「あ、うん。ちょっと保護者に禁止されちゃったからね」
「それならお兄ちゃん達に言ってみれば、連れて行ってくれると思うわ」
それはも分かっている。
だが、そこまでしてホグズミードに行きたいと思っているわけではないのだ。
「うん、ありがとう。でも、今回は別に構わないよ。ウィーズリーはこれからどこかへ行くの?」
「え?私は図書館に宿題しに行くの。…あ、そうだ!」
ぱんっと何か思いついたかのようにジニーは手を叩く。
くるんっと女子寮の方を振り返る。
そこにはジニーと同学年だろう少女が2人。
ジニーがその子達を手招きする。
彼女達はそれにぱっと顔を輝かせて近づいてくる。
「に課題でわからない事聞いてもいい?」
「うん、僕でわかる事なら構わないけど…。図書館に移動しようか?」
「ううん、ここでいいわ。ね、カーラ、レティ?」
「え、ええ!」
「勿論よ!」
ジニーの友人であるだろう少女達は嬉しそうに頷く。
は読んでいた本を近くのテーブルに置き、そこを指す。
書くことが出来る場所はあった方がいいだろう。
ジニー達はそのテーブルの周りに椅子を持ってきて、テーブルに宿題を広げる。
「分からないのってどの教科?」
「魔法薬学なの」
「魔法薬学ってことは、教授の授業だね」
じっと課題の内容を見る。
内容を読む限り、の覚えのある内容だ。
全く知らないものだったらどうしようかと、ちょっと思っていた。
「私、フレッドとジョージのせいで必要以上に目をつけられちゃって大変なのよ」
「スネイプ先生って特にグリフィンドール生には厳しいけれども…」
「あたし達の学年ではジニーに特に厳しいわよね」
ジニーの言葉に同意するように強く頷く2人の友人。
確かにセブルスの授業での贔屓は激しい。
それを思い出してはくすくす笑う。
「もう、。笑い事じゃないよ。貴方だって、スネイプ先生には減点されることあるでしょう?」
「はは…、あるね。陰険教授はグリフィンドール減点大好きだから」
の言葉には決して嫌味は含まれていない。
セブルスの魔法薬学の授業は、グリフィンドールに対しては確かに陰険だとも思う。
教師としてその教え方はどうかと思うが、セブルス自身は全然嫌いじゃない。
魔法の授業自体がそう重要でないにとっては、仕方ないな〜くらいなのだ。
それに、セブルスは授業以外では結構優しいのだ。
「それでこの課題はね…、えっと……」
教科書を借りてぺらぺらっとめくる。
「この辺りを参考にするといいよ、ここの説明はここに載っているからね。でも、教授の事だから、グリフィンドール生がこのままの答え書いたら、絶対に何か言うに決まっているからね。言い回しを変えるか…あとは、こっちの説明を付け加えるといいかもしれないよ」
同じような課題をも去年やったことがある。
その時、セブルスは教科書を答えをまるまる書いたハリーに対して、このレポートでは駄目だというような事を言っていた気がする。
「この魔法薬はね、これとこれが長時間煮込まれる事によって、こういう反応が起きるんだ。時間が問題なんだよ。ちなみに、量は対比があっていれば関係ないかな?」
すらすらっと説明していくに感嘆のため息をもらすジニー達。
は実技系…変身術や呪文学などは駄目だが、こういう覚えればなんとかなるものは比較的成績が良い。
魔法薬学などは、教師がセブルスなので楽しく授業は受けている。
陰険さを除けばセブルスはいい教師だ。
それに何よりも、は魔法薬に生活がかかっているようなものなので、これくらい覚えていなければ売る店先などで舐められてしまう。
「すごいわ、。やっぱり、ハーマイオニーが言った通りね」
「グレンジャーが?」
「うん、そう。魔法薬学ならに聞いた方がはやいわよ、って」
「僕もグレンジャーも変わらないと思うんだけどな…」
ハーマイオニーは全教科できるのだ。
3年の首席は誰かと言われれば、迷いなくハーマイオニーと答える事が出来る。
「でも、せっかくだから他に分からないところとかある?僕でわかる事なら答えるよ」
にこっと笑みを浮かべる。
の笑みに顔を赤らめたのはジニーの友人の1人。
ジニーともう1人の友人は彼女に目を向ける。
「どうしたの?あるなら聞くよ?」
彼女はほんのり赤い顔のままでぶんぶんっと首を横に振る。
「レティ、せっかくのチャンスなんだから何かないの?」
「そうよ、勿体無いわ!」
「い、いいの!」
ジニーともう1人の友人が何か言うようにと催促するが、彼女は首を横に振るだけである。
きょとんっとする。
「もう終わったなら、僕がを借りてもいいかな?」
頭上からの声に顔を上げる。
のソファーを挟んで後ろにジョージが身を少し乗り出すようにして、ジニー達を見ていた。
いつの間にいたのだろうか。
「お兄ちゃん……」
むっと少しだけ睨むジニー。
「、手が空いたなら僕と一緒に出かけない?」
「いえ、僕は読書の続きを…」
「本ばかり読んでちゃ、体が鈍るよ?外に出て運動しないとね!」
「え、遠慮します……。それに、ほら、ウィーズリー達がまだ何か聞きたいことがあるかもしれないし…」
「え?もう終わったんじゃないのかい?」
ね、ジニー、とジョージはにこっとジニーに笑みを向ける。
ジニーは大きくため息をつく。
「もう、仕方ないわ。いいわよ、ジョージ、を持っていっても」
「持っていってもって……。ウィーズリー、僕は物じゃ……」
「ありがたく持っていくよ」
ジョージはひょいっとソファーを越えて、の腕を引っ張り立ち上がらせる。
ぐいっと腕を引っ張られ、そのまま連れて行かれる。
これが意外と力強い。
「わ、ちょっと、ジョージ先輩?!」
「いいから、いいから」
楽しそうに笑っているジョージ。
ぐいぐいっと引っ張られて談話室を出て、グリフィンドールの寮の外へと出る。
向かう先はどうやら外のようである。
幸いはローブを着て談話室にいたからいいものの…。
さ、寒い…。
マフラー欲しいよ。
ローブがなければもっと寒かっただろうが、雪が降るこの季節。
マフラーなしではちょっと…どころではなく結構寒い。