アズカバンの囚人編 7
はグリフィンドールの談話室で沈没していた。
つまりは落ち込んでいる。
先ほどの大広間で、スリザリン席にちゃっかり居座ったりしてかなり目立った。
が有名なのはもうホグワーツでは当たり前なのだが、今回の出来事で更に名を広めて、そして深めてしまっただろう。
だが、談話室でいつまでも沈んでいるわけにはいかない。
何か言いたげな視線をハリーが隣でじっと向けてくる。
ロンとハーマイオニーも気になっているようだ。
はぁ〜と思いっきり深いため息をつく。
「部屋で話すから…」
としか答えようがなかった。
ハリーにヴォルのことを話すのは構わないだろう。
だが、ロンとハーマイオニーには誤魔化す事にした。
特にロンはスリザリン生に反発心が強すぎる。
なにしろヴォルはアレだ。
また変なトラブルを起こしたくない。
がハリー、ロンと部屋に向かおうとすると、双子が前に立ちふさがった。
ハーマイオニーは一度自分の部屋に戻ってから来るとのこと。
もはやハーマイオニーにとっては男子寮潜入はお手のものらしい。
優秀な彼女にしては珍しいことである。
「、僕らにも教えてくれるよね?」
「随分とあの彼と仲良さそうだったけど…?」
同じ顔が笑みを向けてくる。
普段、学校生活でが誰かにああいう態度をとることはない。
それは自身が誰に対しても壁を作っている為である。
「ただの同居人ですよ」
「だたの同居人であんなにも仲がいいのかい?」
「それに他にも疑問に思うことがあるんだけどね」
そう言えば、この2人にもハリーは多少なりとも事情を話している言っていたような気がする。
双子へのフォローもしないと後々大変なことになるか…。
は諦めたようなため息をつく。
「お2人も僕達の部屋に来ますか?」
「「勿論さ!!」」
双子の喜びようには苦笑する。
追求が厳しく、意外と鋭いこの双子をなんとか誤魔化しきらなければいけない。
ただ、”リドル”の姿を知っているのが、ハリーだけというのが唯一の救いだろう。
ハーマイオニーが来た所で話は始まる。
同室であるネビルはまだ談話室にいるのだろう。
談話室での達の雰囲気に入らない方がいいと判断した為かは分からない。
とにかくネビルは部屋にはいなかった。
「と…とにかく、彼と僕は単なる同居人で……!」
「でも、去年のクリスマスの時に彼はいなかったわよね」
結構鋭いツッコミをする秀才ハーマイオニー。
「あ、あの時彼はちょっと出かけていて、夜には戻ってきてたよ」
嘘ではない、嘘では。
去年のクリスマス、双子達をリーマスの家に招待した時にハリー達も一緒に来た。
その時、ヴォルはジェームズに言われてアズカバンへとシリウスに会いに行ってきたらしい。
「随分と親しかったようだけど…?」
「いつから同居してるんだい?」
「いつって……ホグワーツに入学する少し前ですからもう3年目になると思います」
「「ふぅ〜ん。」」
声をそろえて面白くなさそうな表情をするジョージとフレッド。
それはそうだろう。
自分達がよく追いかけていたほどお気に入りの友人とかなり親しげな見知らぬ相手がひょっこり出てきたのだから…。
しかもその相手はスリザリンであり、自分達よりも親しそうに見えた。
「、君の猫は…?」
「へ…?」
唐突なロンの質問。
「何で猫…?」
はごまかそうと笑みを浮かべる。
ロンは怪しむようにを見る。
「君、あいつを猫と同じように呼んでただろ?もしかしてあいつってあの猫…」
「それはないと思うわ、ロン」
鋭いロンの指摘に意外なところから助け舟が来た。
ハーマイオニーがきっぱりはっきりロンの意見を否定する。
「僕もそう思うよ。だってあの猫って僕らより年上だったみたいじゃない?」
「そうよ、があのスリザリンの彼の名前から、あの猫の名前をつけたんじゃないの?」
意外にもハリーがハーマイオニーの意見に同意する。
は内心驚いていた。
ハリーは知っているはずである、ヴォルがの側にいた黒猫だったこと、ヴォルはリドルを取り込んだこと、あの顔立ちはリドルそのものだということ。
「名前が一緒なのは偶然だと思うよ。僕が不思議なのはあいつがなんで今更ホグワーツに来ているのかってことだよ」
ちらっとハリーがに不機嫌そうな視線を送る。
卒業したはずの”トム=リドル”がここに何しに来るのか。
この学校で学ぶことなど殆どないだろうに…。
「って、言われても…、なんでヴォルさんがホグワーツに来たのか僕にも…」
何の目的があってホグワーツに来たのか分からないが、多分動きやすくするなるためだと思った。
何せ猫の姿でホグワーツに滞在している時は、人の姿に慣れるのは人気のないところだけなのだ。
さぞかし動きにくいだろう。
「しかも、編入生っていうのが怪しい。普通なら1年の時にホグワーツから手紙が来るはずだよ」
「魔力が今まで目覚めなかった…?そんな特殊な体質には見えなかったけどね。あれは魔法になれている感じだった」
「何か事情でもあったのか…それとも他に理由があるのか…、ねぇ、。1年の時、彼の元には手紙は届かなかったのかい?」
笑みを浮かべて問うのはジョージである。
確かに編入なんて前代未聞の出来事と言っていいほどおかしいのだ。
ホグワーツが魔力を持った子供の存在を見逃すことはない。
なぜなら、放っておくとそれは危険なことになるからだ。
「さ、さぁ…、始終一緒にいたわけではないのではっきりとは言えないです」
届いているわけがない。
実年齢60過ぎ、ホグワーツ卒業済みのヴォルの元に今回の編入があるのがおかしいのだから。
「気になるなら、ヴォルさん本人に聞けばいいじゃないですか」
寧ろそうしてくれ。
こっちで勝手にフォローしてもいいのだが、もしヴォルがスリザリン寮で事情を話してあったりしてその事情と違っていたら困る。
最もヴォルの場合はそういうこともきちんと考えて話をあわせてくれそうだが…。
「スリザリンの奴に?」
「僕らから話しかけろって言うのかい?」
「そんなのは絶対嫌だね」
「言い切れる。僕らは奴とは絶対に」
「「気が合わない!!」」
そうハッキリ言わなくても…。
確かにヴォルさんは初っ端からウィーズリー家に対しては敵愾心丸出しだったような気がしないでもないけど。
「とにかく、とあの人の関係は同居人ってことだけなのね」
ハーマイオニーが念を押すように言う。
「だけって…、別にそんな裏があるような関係はないけど。付け加えるなら友人?」
「彼が編入してきた理由はにも分からないのよね」
「う、うん」
ハーマイオニーが何かを確認するかのように真剣な表情で尋ねてくる。
はそれに頷くだけ。
ふぅっと軽く息をつくハーマイオニー。
「わかったわ」
にっこりと笑みを浮かべた彼女に何か裏があると思ってしまうのはいけないことだろうか。
はそんなことを思ってしまう。
「私から聞きたいことはもうないわ、部屋に戻らなくちゃ。、送ってくれるわよね」
「へ…?」
「男子寮を1人で歩かせるなんて真似させないわよね」
いや、そもそもここまでは1人で来たんじゃ…。
と突っ込みたいが、ハーマイオニーの笑顔がそれを許さないように見える。
強制命令のような感じに見えてしまう。
「うん、分かった。送るよ、グレンジャー」
苦笑しながらは答える。
何か話したいことでもあるのだろうか…?
ハーマイオニーにしてはあっさり引き下がったような気がする。
納得のいかないような表情をしている双子とロンを部屋に残してはハーマイオニーを女子寮の部屋まで送ることにした。
ハリーが何も聞いてこないことに関して、不思議に思いながら……