秘密の部屋編 61
濡れたローブをとりあえず脱ぐ。
夕食は中断。
このままではベタベタして気持ち悪い。
パンジーはシェリナがスリザリンの方へと連れて行ってくれた。
シェリナが離れては少しほっとする。
彼女と接する時は軽い緊張感がどうしてもある。
「ごめん、ネビル。ちょっと着替えてくるから先行くね」
「あ、うん。、少ししか食べてないけど夕食はもういいの?」
「大丈夫だよ」
とりあえず水分だけは後でとって、次の朝食べれば問題ないだろう。
一食や二食抜いたところで倒れる体でもない。
それに成長期でもないわけだし、そんな食べる必要もないである。
「じゃあ、僕は着替えてきますから……ジョージ先輩はきちんと医務室に行ってくださいよ。掠めたといってもきちんと治療しないと…」
「じゃあ、ジョージは医務室行けよ。僕がと一緒にいるからさ」
「え…?」
フレッドがの腕を掴む。
「ちょっと…ウィーズリー先輩。別にいいですよ…。着替えとシャワーくらい1人でできますし…」
「でもな〜。僕らはから目を離すわけにはいかないしな…」
「絶対勝手にどこかに行ったりしませんから!!」
まずいのだ。
一緒にシャワーでも浴びようなどと言われてしまっては…。
言われる前に、1人で終わらせてしまえばいい。
確かに今のの姿は少年の姿だ。
それは外見だけのことである。
「、何をそんなに慌てているんだい?」
「う……。」
突っ込んできたのはフレッドだ。
心底不思議そうである。
「ねぇ、」
突然ぽつりっと呟いたのはネビルだ。
「別にが寮に戻らなくても、医務室が近いんだから医務室でシャワー借りて、マダムに制服を綺麗にてもらえばいいんじゃない?」
「ナイスだ!ネビル!、一緒に医務室まで行こうじゃないか!」
がしっと今度はジョージに腕を捕まれる。
医務室でもどこでもやばいものはやばいのだ。
普段がシャワーを浴びる時は大抵一人の時。
その時は元の姿に戻っていることが多い。
この姿のままだとすっきりしないのだ。
「待ってください、ジョージ先輩!」
「万事解決!さぁ、医務室に行こう!」
ずるずる引きずられる。
やはり力では敵わないのが悲しい。
嬉々とジョージに引きずられ、同じように楽しそうな表情のフレッドがその後をついていくのであった。
「…ごめん、」
残されたネビルは、自分の失言にぽつりとに謝るのであった。
医務室についたは、マダムに呆れたような表情向けられてしまった。
「まぁ、。またですか…?」
確かには医務室にお世話になることが多い。
それもとびきり大きな怪我でだ。
「いえ、今回は僕でなくてジョージ先輩で…、あの、マダム」
「なんですか?」
「シャワーを借りてもいいですか…?ちょっと、服を汚してしまったので…」
「構いませんよ。そっちにありますからね。あと、タオルも沢山ありますから使いなさい。湯冷めで風邪をひいてもらっては困りますからね」
「ありがとうございます」
ぺこりっとは頭を下げてシャワー室へと向かう。
「ああ、。そのローブは置いていきなさい」
「え?」
「そのローブは汚れているのでしょう?貴方が出てくるまでに綺麗にしておきますから。他の服は大丈夫ですか?」
「え、あ…はい。平気です」
は手に持っていたローブをマダムに渡す。
マダム・ポンフリーはこういうことに聡く、そして深くは聞かない。
その気遣いがとてもありがたい。
「貴方がシャワーを使っている間は誰一人近づけさせませんからね。安心して綺麗になってきなさい!」
「マダム……?」
「スネイプ先生とアルバスから聞いていますよ。大きな傷があって人に体を見られたくないんでしょう?」
はマダムの言葉に驚く。
恐らくの本当の姿を知るダンブルドアとセブルスが前々からマダムの方に言っておいてくれたのだろう。
何かあってからでは遅いから…。
が怪我をしたらセブルスに知らせが行くようになっている。
セブルスはのことを知っているから、ダンブルドアがそう配慮してくれている。
気付かないところでダンブルドアはいろいろ気遣ってくれているのが嬉しかった。
「ありがとうございます、マダム」
にこっとは笑みを見せる。
いくら双子でもマダムには敵うまい。
「さあ、傷を見せなさい、ウィーズリー」
マダムのその声を聞きながらは安心してシャワーを浴びることにした。
あの双子に引きずられていた時はどうなるかと思ったけど…。
やっぱり、ダンブルドアにはいろんな意味でまだまだ敵わないな。
味方である分にはこれほど心強い存在はいないだろう。
だが、は場合によってはそのダンブルドアすら裏切る行為をしなければならいかもしれないのだ。
それがないことを今は祈るのみだ。
銀の指輪を外してシャワーを浴びる。
元の姿になってシャワーを浴びる方がやっぱり気持ちがいい。
「本当ならこんなにゆっくりしている場合じゃないんだけどな…」
バジリスクが今後も動かないという保障はどこにもない。
秘密の部屋に行ってとめてしまえば早い。
いや、それよりもジニーから日記を取り上げてしまえばいい。
「でも……、リドルを憎めないんだよね、どうしても…」
少しだけだが、彼の生い立ちを知っている。
彼がどうしてマグルを憎むかも知っている。
そして、なによりも……はヴォルが大切だ。
「リドルはまだ、ヴォルさんでもあるから……ヴォルデモートじゃないから…かな?」
ヴォルよりもまだ精神的に幼いだろうリドル。
説得して改心してくれるという希望などない。
けれど、彼と話をしてみたいと思ってしまうのはいけないことだろうか…?
「問題は『伝導の書』なんだけどね……」
油断していたも悪い。
だが、こればっかりはルシウスの思い通りに事が進んでしまったとしか言いようがないだろう。
ルシウスが「秘密の部屋」について企んでいたことは知っているから対処のしようはあるが、今回の事は全くの予定外。
にはルシウスがどうやって仕掛けてくるのか検討もつかない。
そもそも年も経験も…なによりも場数が違うのだ。
敵わないのは分かっている。
「こればっかりは、臨機応変。ファンダールの時みたいに周りを巻き込むわけにはいかないしね…」
はきゅっと拳を握り締める。
できることをやるだけ。
バジリスクの犠牲はこれ以上出させない。
そして、ルシウスの試練での被害も出させない。
『時の代行者』としての言霊の力。
この力を使ってしかは対応できない。
魔法は使えないのだから…。
でも、きっと大丈夫……。
そう自分に言い聞かせていた。