秘密の部屋編 54
それからはいつもと同じく図書館に入り浸り。
『伝導の書』を誰かに頼んで使うわけにもいかず…勿論ヴォルは協力などしてくれない…部屋に置きっぱなしである。
セブルス辺りに頼めば手を貸してくれるだろうが…なるべくならばあまり手は借りたくない。
「!!」
どさっと隣に本を置く音とともに呼びかけられる。
目を向けてみれば、そこには満面笑顔のハーマイオニー。
「あれ、グレンジャー、復帰したの?」
「復帰って…その表現は可笑しいわ、。ええ、もう大丈夫よ。あの時はありがとう」
「どういたしまして。それでグレンジャー、その本の山は…?」
「勿論秘密の部屋について調べるのよ!」
張り切った様子で本をめくり始めるハーマイオニー。
まだまだハーマイオニーはやる気満々のようである。
苦笑しながらも自分のやるべきことをやる。
しばらくはぺらぺらと本をめくる音だけが響く。
ここしばらくはリドルの活動は大人しい。
リドルの活動というのも可笑しいが、バジリスクの犠牲者がでない。
時々ヴォルにバジリスクの動きを見てもらっているのだが、やはりここ最近はあまり動いた気配がないという。
どころか、数日ほど前から動きはぴたりっと止まったらしい。
…となると、ジニーが日記を捨てたかな…?
が本を読むのをそっちのけで考えことをしていた時。
「ねぇ、…」
ハーマイオニーが話しかけてきた。
ハーマイオニーの視線は開いたままの本にある。
「秘密の部屋にいる化け物…にはヒトじゃないかもしれないって言ったわよね?」
「うん、聞いたよ」
「その…生徒達を石に変えた化け物の検討は少しついているの」
「そうなの?」
ハーマイオニーはこくりっと頷く。
流石ハーマイオニー。
学年首席はダテじゃない。
彼女ほど優秀な魔女などこの学年にはいないだろう。
「スリザリンの継承者っていうくらいだから、蛇に関係すると思って今調べているの」
「へぇ〜」
「まだ、ロン達には話してないけれど…、石化させる能力を持つ化け物を探しているのだけれど、問題は…」
「問題は?」
「その化け物がどうやって移動しているかってことなのよ。本に書いてある化け物はそう小さい体じゃないものばかりだわ。どうしていままでその化け物の目撃者が出てこないか、それが不思議なの」
そりゃそうだよね。
大抵化け物レベルのものはでかい体だけれど…まさかパイプを伝ってくるとは思わないだろうな〜。
ハーマイオニーならそのうち気付くだろうけどね。
「それとね、」
「うん?」
「ハリーが変な日記を拾ったの」
「変な日記…?」
リドルの日記、拾ったんだ。
ということは……ハリーは見た?
「それで、その日記からみた映像が秘密の部屋に関することで……」
「で?」
「が言っていたことは間違いじゃなかったのよ!」
「え?僕…?」
「そう!ハリー達はマルフォイからも聞いたようだけど、やっぱり秘密の部屋は過去、50年前に開かれたことがあったんですって!」
「そうなんだ」
「それで、その時の犯人が………」
ハーマイオニーが言いにくそうにいったん言葉を切る。
それはそうだろう。
ハリーが見た映像は50年前、リドルがハグリッドを犯人に仕立て上げたシーンだろうから…。
ハーマイオニーにとってハグリッドは大切な友達。
「…ハグリッドなの」
自然とハーマイオニーの声は小さくなっていた。
しゅんとして下を向く。
「でも、グレンジャーはハグリッドが犯人だなんて思ってないんだよね?」
「勿論よ!!」
「だから、その為にいろいろ調べているんだよね?」
「そうなの!だから…だからっ!」
はぽんぽんとハーマイオニーの肩を叩く。
ハーマイオニーは勉強一筋の硬い子だと思われがちかもしれない。
けれど、全然そんなことはない。
友達の為ならこんなにも一生懸命になれるとっても優しい子だ。
「大丈夫、大丈夫だよ、グレンジャー。ハグリッドは犯人じゃない、ポッター君も犯人じゃない。僕が断言する」
にこっとは笑みを浮かべる。
ハーマイオニーはの笑み安心した方にほっとしたような笑顔を見せた。
「不思議ね…。が言うとなんでも信じられる気がするわ」
くすくすっと笑うハーマイオニー。
はハーマイオニーが安心してくれてほっとする。
しかし、そう盲目的に信じてもらうと、としては少し心苦しい気分にもなるのであった。
そろそろ寮に戻る時間ということで、ハーマイオニーと一緒には寮に向かった。
今日も収穫なしである。
『伝導の書』については分かったので、残るは『カナリアの小屋』なのだが、『伝導の書』についてどういうことを仕掛けてくるのか、検討が全くつかないのが困る。
ヴォル辺りならば検討がついているかもしれないが、ヴォルはこの件に関しては全く手を貸してくれない。
が危険にさらされれば助けることはするだろうが、知恵を貸す気はないようだ。
「じゃあ、グレンジャー。また、明日ね」
「ええ、。おやすみなさい」
男子寮と女子寮は勿論場所が違う。
は自分の部屋に戻るのでハーマイオニーと別れた。
談話室にはまだ数人残っていたが、殆どの生徒は部屋に戻っている時間だろう。
すたすたと自分の部屋まで行き、扉を開けてみるとどうも空気が変だった。
何が変かというと、部屋の中が異様にちらかっていて、呆然としているネビルとハリーとロン。
「何かあったの…?」
は3人に声をかける。
はっとしての方を見たのはハリー。
「大変だよ!!!誰かが泥棒に入ったみたいなんだ!の荷物は…?」
「え?あ…うん。確かめてみるよ。ネビル達は大丈夫だった?」
「僕は…大丈夫…」
ネビルはぽつりっと呟いた。
ロンも僕も…と言う。
は自分の荷物をざっとみて見る。
何も盗まれていないのは分かってはいるが、一応確認。
教科書も無事、杖も無事。
特に大切なものを置いているわけでもないので大丈夫。
しかし、その前に杖を部屋においていくのはどういうことなのだろうか…?
最もには杖は必要ないのだからいいのだろうが。
「無くなってるぞ」
安心したに声をかけてきたのはヴォル。
ネビルもハリーもロンもヴォルが話をできると分かったとたん、ヴォルは部屋の中でのみ遠慮なく口を開くようになっていた。
未だにロンなどはヴォルが話をすると驚くのだが…アニメーガスを知っているだろう魔法族のロンがどうしてヴォルに驚くのはには分からない。
ロンからすれば、『例のあの人』と似た名前の、魔法を使える妖しすぎる猫を不信に思わないほうが変だと思うだろう。
「ヴォルさん…?」
「『伝道の書』、無くなってるぞ」
え…?
は『伝道の書』をしまっておいた場所を見る。
特ににとって必要ないものだが、無くなってしまうとそれはそれで困る。
魔力を持つものにとっては、特に強い魔力を持つものにとっては力になるものだろうから…。
「嘘っ?!何で…ヴォルさん気付かなかったの?」
「俺がいないときに荒らされたからな」
「うあ〜〜、どうしよう…!」
頭を抱える。
これもまたルシウスの計算のうちなのだろうか…?
「…も、何か盗まれたの?」
そう言ったのはハリー。
はハリーを見る。
「ポッター君も何か盗まれた?」
「あ、うん…、僕は日記を…」
そうか、そうだよね。
ジニー…というかリドルが日記を取り返すために、ここを荒らしたんだろうけど…。
ってことは、もしかして『伝導の書』がリドルの手に渡ったかもしれないってこと…かな?
ちょっとそれはまずい…かも。