秘密の部屋編 51
クリスマス休暇は本当にいろいろあった。
思い出すだけで恥ずかしいことやら、そういろいろ。
でも、重要なのは…!!
ハリー達がポリジュース薬を使わなかったことだ。
「あの薬も間に合わないし、なにより聞きたい本人が帰省してしまったら何もできないわ」
とはハーマイオニーの言。
そこでハタと思ったのが…。
ちょっと待って!
マルフォイ君がクリスマス休暇に帰ったの?!
の知る中では、ドラコはクリスマスはホグワーツにいたはずだ。
そしてハーマイオニーが作ったポリジュース薬を使って、ハリーとロンが秘密の部屋について聞く。
それが成されてない。
どうしたものか…。
何か手を打たなければ…と考えているにハーマイオニーが聞いてきた。
「ねぇ、。ってマルフォイと仲いいわよね」
ハーマイオニーだけでなく、ハリーとロンも一緒だ。
は現在図書館にいたりする。
どうにかしなければ…と思いつつもやはりルシウスからの試練の方も気になるのでそれについて調べているところ。
授業が終われば図書館はもはや恒例になっている。
「まぁ、あれで仲がいいと言えるかどうか分からないけど…、マルフォイ君がどうしたの?」
ポリジュース薬ができたのだろうか?
「詳しいことは聞かないで、。お願い!マルフォイを呼び出して欲しいの!」
「呼び出すって…、どこに?」
「人気のないところならどこでもいいわ」
呼び出すくらいなら構わないけど、果たしてマルフォイ君が私についてきてくれるのか。
でも、ポリジュース薬でクラッブ君とゴイル君になるなら呼び出す必要もないんじゃないのかな?
まぁ、構わないけど。
「別にいいよ。マルフォイ君が、僕が誘ったからって来てくれるって保障はないけどね」
「大丈夫よ!それと、もうひとつ!」
「うん?」
「その時、も一緒にいて」
「僕も?」
「ええ!」
ハーマイオニーは何かを期待するかのようにを見る。
は思わず苦笑する。
ハーマイオニーはがハーマイオニー達が何をするかを知っていることを知っている。
だから、そのフォローをして欲しいのだろう。
「了解、グレンジャー。できる限り協力するよ」
何しろ、このポリジュースの件が上手くいってないのは自分のせいかもしれないのだから…。
できる限りは協力しよう。
仕方ないと思いつつも、最近ドラコと話すのは嫌ではない…寧ろ楽しかったりするなのである。
早速行動に移そうと思っていただが、スリザリンとの魔法薬学の合同授業の後、ドラコの方から話しかけられた。
実際、ドラコから話しかけられることは殆どないので、としてはかなり驚いた。
「!」
「マルフォイ君?」
腕をひっぱられ引き止められるが、別には嫌な顔ひとつしない。
はふとドラコを見て気がつく。
「…?」
にまじまじと見られてドラコは顔を少し顰める。
「マルフォイ君…休暇中に背伸びた?」
の今の身長は元の姿より少し低めにしてある。
来年は元の姿と同じくらいでいいだろうと思うが、今はこの身長を維持。
ハリーより少し高め、ロンよりかは低い。
ちなみにハーマイオニーよりは少し高め。
ドラコとは同じくらいだったはずだ。
今みれば、ドラコと会話するのに少し顔を上げなければならない状態。
「成長期だから背くらい伸びるに決まってるだろ?もポッターも小さいくらいだ」
そう、実際の身長は低い方になってしまう。
ハリーは家庭環境があれなので元々小さいのだが、は元の姿より大きくなることなどできず、今の状態を維持しているのだが…このままだとハリーにまで抜かれてしまうだろう。
「あ、それよりマルフォイ君、何か用事?」
「ああ、話はちょっと別の所に移動して…」
「ここじゃまずい話?」
「……ちょっと」
ここは廊下である。
勿論生徒達が今でも歩いている。
周りに聴かれるのはまずい話なのだろう。
は周りを見て、ハーマイオニーを見つけると合図する。
丁度いい機会だ。
「じゃ、いいところがあるからそこに行こう、マルフォイ君」
今度はがドラコの腕を引っ張る。
ドラコはついてこようとする、クラッブとゴイルを制す。
「お前らは待ってろ」
この2人といつも一緒のドラコにしては珍しい行動だ。
しかし、ドラコとこの2人が一度離れなければハリー達の作戦は難しいだろう。
がドラコと一緒の時にポリジュース薬を使ってくるのか、それともがドラコと話している隙に入れ替わって後で聞くのか。
どちらの方法を使ってくるのかは解らないが、に協力できるのは少しだけ。
がドラコを連れてきたのは禁じられた森の近くにある日当たりのいい場所。
意外とここは穴場で誰も来ない。
この時期、雪が降り積もって寒いせいもあるのか、人気は全くない。
「寒いな…」
「だね…。どこかの部屋の方がよかったかな…」
手をさすりながら白い息を吹きかける。
ドラコはスリザリンカラーのマフラーをしているが、意外と寒くても平気そうに見える。
こうしてみれば、やはりドラコもかなり整った顔立ちをしているのが分かる。
ヴォルもルシウスもセブルスも、の知るスリザリンの人たちは顔立ちが整っている人がかなり多い。
「休暇中…」
「うん?」
「いや、クリスマス休暇中、家に帰って父上に聞いてみたんだが…」
「聞いたって…」
もしかして、マルフォイ君が休暇に家に帰ったのって…。
「に何をするつもりなのか…を。でも、父上はあまり答えてくれなかった」
「まぁ、ルシウスさんがそう簡単に教えてくれるとは思わないけど」
「父上が言ったのは『ひとつ間違えば命が亡くなることもあるだろうが、それはそれで面白い結果だな』…それだけだった」
「うあ…、それはちょっと先が不安になるな〜」
は呑気そうに答える。
ファンダールの件もそうだが、ルシウスならばそれくらいはするだろうとは想像していた。
こちらが全力で対抗しないと命に関わることになるだろう。
だからこそ、こうして調べているのだ。
まだ調べる本はいろいろあるし、なによりもダンブルドアからもらった本は見ていない。
なるべく自分の力だけでなんとかしたいと思っているは意地っ張りなのだろうか。
「マルフォイ君、大丈夫だよ僕は」
「何を根拠にそんな自信がでてくるんだ?」
「自信ってわけじゃないけど…」
は苦笑する。
どうにかする自信があるわけじゃない。
でも、自分にはしなければならないことがあるのだ。
「僕はルシウスさんの試練程度で根を上げている場合じゃないんだ。だから、大丈夫」
やるべきことはまだある。
見守り導くこと。
自身が知る未来へと…。
「父上の試練程度って…、君は……」
呆れたようにを見るドラコ。
ファンダールの件でが少し怯えているのではないかとドラコはドラコなりに心配はしていたのだ。
だから、クリスマス休暇に家に帰ってわざわざルシウスに聞いた。
父から返ってきた言葉は余計不安になるようなものだったが…。
「を心配するだけ無駄ってことだな」
ぽつりっとドラコは呟く。
その言葉がに聞こえたかどうかは分からない。
ドラコは隣のをちらりっと見る。
スリザリン生、純血一家に育ったドラコはマグル出身は嫌いで、グリフィンドール生も大嫌いだ。
マグル出身は純血一族に比べれば劣り、見下すのは変わらない。
はドラコの嫌いなマグル出身でグリフィンドール生。
『穢れた血』と『魔法も使えない劣等生』だとドラコがどんなに見下したり、罵ったりしてもまったく堪えない。
「マルフォイ君?」
はじっと見てくるドラコを不思議そうに見る。
グリフィンドール生の殆どは、スリザリン生であるドラコを嫌そうに呼ぶ。
のドラコを呼ぶ声には、悪い感情は全く見えない。
「『穢れた血』が、純血を甘く見ると本当に後悔するぞ?」
ふんっと馬鹿にするように笑ってやる。
こういう言葉を言えば、殆どの『穢れた血』や『グリフィンドール生』は怒鳴り返してくる。
そういう反応が普通だ。
「そうだね、後悔しないように頑張ってみるよ」
は苦笑しながらそう答えるだけ。
ドラコの嫌味も軽く受け流す。
受け流されるのは、最初はそれはもうムカついたものだ。
けれど、その反応がいつも返ってくると慣れてくる。
面白いと感じてしまう。
「君がそうだから、父上は君を気に入ったんだろうな」
と接しているうちに分かってきたこと。
父であるルシウスがどうしてを気に入ったのか。
「は…?」
きょとんっとする。
は普通の人とは自分が違うことをあまり認識してない。
怒るでもなく敵意を向けて来るわけでもない。
「僕は寒いからもう戻る」
「え?ちょっと、マルフォイ君…?!」
「、本当に父上を甘く見るなよ。父上は、やると決めたからにはどんなに被害がでようと気にせず遠慮しないタイプだからな」
ドラコは自分にできる最大の忠告をする。
今まで見てきたルシウスに気に入られたものの姿はそれは悲惨なものだった。
殺される程度ならまだマシ。
大抵は精神的に追い詰められて、気が狂って病院行き、一生を病院で怯えながら過ごすというパターンだ。
どんなに気に入らない相手でも、最初はいい気味だと思うが…最後の方は哀れでならない。
ドラコはには、そうなって欲しくないと…何故か思っていたのだった。