秘密の部屋編 47






「さて、誰か前に出てきて代表で模擬をやりませんか?」

ロックハートが壇上の上で声をかける。
ざわつくだけで誰も立候補する者はいない。
ただ、半数ほどがの方に視線を集めていたが、は先ほどセブルスに見学しろと言われたばかりだ。
の決闘を見たくても、見たいなどといえばセブルスの減点がふってくるかもしれないので怖くて言えない。

「マルフォイとポッターはどうかね?」

やっぱり…。
内心ため息をつく

「それはいいですね!!では、二人とも前へ!!」

ロックハートはセブルスの案に大賛成して、二人を見る。
ハリーは嫌々ながら、ドラコはニヤニヤ笑いながら壇上に上がる。
セブルスがドラコの方に近づき、なにやらこそこそアドバイスをする。
対するハリーにはロックハートが何かアドバイスをするが、ハリーはウンザリとした様子でそれを聞いていた。
ロックハートとセブルスが離れ、ハリーとドラコが向き合う。

「ふん…、怖気づいてはいないだろうな?ポッター」
「君じゃないし。僕が君ごときを怖がるわけないだろう?

ハリーの言葉にひくりっと口元を引きつらせるドラコ。
だが、すぐにニヤリとした笑みを浮かべる。

「あの無能教師のアドバイスは役に立つのか?」
全く立たないね。君の意見に同意するのは嫌だけど……あの無能ぶりばかりは否定できないし、したくもないよ。
………。

ハリーの言葉にドラコはなにも返せなかった。
にこっと笑みを浮かべたハリーがちょっと怖かったからもあるが、面と向かって自分の疑問を肯定されたことが以外だった。
確かにロックハートは無能だ。

「いいですか?私が数を数えますから、3つ数えたら同時に武装解除の呪文ですよ!」

ロックハートが声高々に説明するが、睨み合うハリーとドラコは殆ど聞いてない。
武装解除の呪文を唱えるなど素直なことはしないだろう。

「1……2………3…!!」


『サーペンソーテイア!!蛇よ出よ!!』

ぱしんっ!

炸裂音がして、ドラコの杖の先から一匹の黒い蛇が出現する。
大きさとしてはかなり大き目の蛇だ。
蛇はハリーと向き合うような形になり、周りでそれを眺めていた生徒達は小さな悲鳴を上げながら遠ざかる。
ハリーはじっとその蛇を見ている。

「蛇を出すなんて…!下がってるといいですよ、ポッター。私が追い払いましょう!」

ロックハートがハリーの前に立ち、杖を振り上げる。

ぱしゅんっ!!

ロックハートの杖からは小さな光が飛び出して一瞬蛇をはじいただけで何も変わらなかった。
はその様子をみてため息をつく。
殆どの生徒もそれを呆れた様子で見ていた。
仕方ないというように、セブルスが足を踏み出した時、蛇の動きがぴたりっと止まった。
ハリーをじっと見ている。
しかし、すぐにハリーから目を逸らした蛇は一番近くにいた生徒に襲い掛かろうとした。
先ほどのロックハートの攻撃…らきしもので腹を立てているらしい。
シャーっと大口を開けて、ハッフルパフの生徒に襲い掛かる。

『やめろ!!手を出すな!』

ハリーの口から何かの言葉がもれた。
とたんに蛇は大人しくなる。
しゅるしゅるっと…ハリーに従うように大人しくなり…

「な、なんだよ!一体!!」

蛇に襲われそうになったハッフルパフの生徒がハリーに向かって叫ぶ。
しかし、ハリーは困惑したように彼を見ていた。
ハッフルパフの生徒はハリーを責めるように睨んでいた。
周りもざわついてくる。
どうしてこんな反応をされるのか分からないハリーだったが、ロンとハーマイオニーがハリーをぐいぐい引っ張って、そのまま連れて行ってしまった。



「驚いたわ…。あの子、パーセルマウスなのね…」

は隣のシェリナ=リロウズが驚いた表情で呟いたのが聞こえた。
他の生徒達もパーセルマウスがどうの…と騒いでいる。

「やっぱり、パーセルマウスは珍しいんですか?」

これだけ騒がれるということは…。
シェリナはの問いに頷く。

「私が知ってる限りパーセルマウスはたった一人よ。あの子を除けば…」
「やっぱり、サラザールの血を引くものにしかあらわれない能力なんでしょうか…?」
「ええ、そう言われているわ」

だが、それはサラザールの血を引く肉体的なものか。
それとももっと能力の根本的なものなのか。
ヴォルはパーセルタングを話せる。
ハリーもパーセルマウスだ。
必ずしも血縁が関係するわけではないだろう、きっと。

「あまり驚かないのね、は」
「そう……ですか?」

そりゃ、知ってましたからね。
それにパーセルタング自体もも今日初めて聞いたわけでもないし…。
相変わらず、シャーとしか聞こえなくて意味は分からなかったけど。

「今『秘密の部屋』の話題で持ちきりでしょう?そんなときにサラザールの血縁者しか使えないパーセルタングを使えるハリー=ポッター。気にならないの?」
「勿論、気になりますよ」
「そうかしら…?貴方の様子だととてもじゃないけれどそうは見えないわ」

鋭いな。
はそう思う。
多少気にしているとはいえ、ハリーがパーセルマウスであることは分かりきっているし、誰が秘密の部屋を開いたのかを知っているからこそ落ち着いていられる。


「随分と仲良さそうだな…」


壇上から降りてきたドラコがとシェリナの方に向かってくる。
つまらなそうな、納得できないような表情だ。

「お疲れ、マルフォイ君」
「別に、僕は大したことはしてない。…中断しなければ、僕がポッターを壁に叩きつけて勝っていたはずのに…」
「あら?もしかしたら、あのまま蛇に襲われて負けていたのはドラコの方じゃないの?」
シェリナ!!

ドラコに平然とそんなことを言えるシェリナを、はちょっと尊敬した。
プライドの高いドラコはそんなことを言われれば怒る。
ドラコを不機嫌にさせればどうなるか…、家柄のいい人たちは分かるだろう。
マルフォイ家にはかなりの力があるのだから。

「でも、蛇は失敗だったね、マルフォイ君。もしかして、教授の助言?」
「………スリザリンらしく蛇を出してみただけだ」

すねたように答えるドラコ。
セブルスが蛇を出せばいいと言ったのかは分からないが、それらしいことをアドバイスしたのは確かだろう。

「まぁ、いいじゃない。また今度再戦すれば」
「当たり前だ。今度こそはポッターに圧勝してやるさ」
「うん、がんばって」
「それと、!!」
「うん?」

ドラコは杖でびしっとを指し示す。

「怪我が治ったら僕と勝負しろ!!」
「へ…?」
「いいな!!」
「え?…なんで?」
「逃げるのか…?」
「いや、逃げるっていうか………。そんな勝敗の見えた勝負しても面白くないでしょう?」

の言葉にドラコはむっとする。
いや、むっとするというか怒りの表情を見せる。

、すごい自信じゃない」

隣でシェリナがからかうような口調で言う。
は苦笑しながら

「ええ、何しろ自信たっぷりですよ。僕はマルフォイ君に絶対負けます。
そっちかよ!!

きぱっと言い切ったにドラコのツッコミが入る。

「ナイス突っ込み、マルフォイ君」

ぽんっとドラコの肩を軽く叩いてやる。
シェリナといえば、爆笑していた。
しかし、ドラコが結構ノリがいいことにはじめて気付いたであった。
ドラコはからかうと面白い。

スリザリン生や元スリザリン生はからかうと面白い人ばかりなのかな…?
マルフォイ君とか、教授とか。
…でも、ヴォルさんとかルシウスさんみたいに、完全にひねり曲がった性格になるとからかうのは命がけになるだろうな……むしろこっちが遊ばれる…?

本人達が聞いたら恐らく不機嫌になるだろうことをは考えていたりしたのだった。