秘密の部屋編 46






ハリー達3人は、を関わらせないようにこそこそと『ポリジュース薬』の計画を練っているようだ。
が覗き込もうとするとハーマイオニーが静止する。

を危ないことに巻き込みたくないのよ!貴方はいつでも怪我をするから!」

との事である。
『ファンダール』の1件以来、への気遣いをして3人はを無茶なことに巻き込まないようにしたらしい。
今もまだ右肩を固定されたままのの怪我を見れば当たり前とも言える行動だろう。



は思った。
どうもロックハートの授業は問題が起きやすい。
それはロックハート自身が通常の授業方法から外れて別のことをしようとするからだ。
つまりは目立ちたがり屋のおせっかい。
恐らく、今日もその1つなのだろう。
懲りないことに関しては尊敬に値するが…。

「校長から私がこのクラブを始める許可を頂きました。このクラブはそもそも中世の魔法使い同士の貴族の決闘が発端となり…」

今は授業外、授業も終わった時間である。
掲示板の張り紙に『決闘クラブ』なるものがあるということで見に来ていた。
の怪我もほぼ治ってきている。
マダム曰く、これなら数日中に完治するとの事。
その為、今回は特別に許可をもらって見に来ていた。
ロックハートの長々しい演説が続く。

「今回は私の相手役、そう!助手にスネイプ先生をお迎えしました。彼は魔法薬学の先生ですが決闘について多少の知識があるとのことで、今回是非私の助手を務めたいと自ら進んで…」
「……」

決闘場となるだろう壇上の上にはロックハートとセブルス。
セブルスの表情を見ては苦笑する。
思いっきり機嫌が悪そうだ。
眉間のシワがいつもより多い上に不機嫌オーラ全開だ。
ロックハートはそんなセブルスの不機嫌振りなどに全然気付かずにいつものペースでウキウキと説明を始める。
生徒の半数以上がセブルスの不機嫌ぶりに気付いていると言うのに…。

今日のロックハートは勇者に見えるよ…。
かなり無謀な勇者だけど…。

はロックハートはホグワーツ時代はグリフィンドール生だったのではないかと思う。
ここまで勇気のある人はいないだろう。
まぁ、勇気と言うより彼の場合は無謀だが…。

「決闘は作法のにのっとってやります。いいですか?このように互いが向かい合い…」

壇上でセブルスとロックハートが向かい合いぴしっと杖を構える。
なんだかんだとちゃんとやってるセブルスはやはり優しいとは思う。
互いに背を向けて、一歩二歩と歩き出す。

「三つ数えて最初の術をかけます。勿論殺す魔法などは使いませんよ?…1……2……3……」

背を向き合って離れた場所に立っていた二人がばっと同時に振り返る。
セブルスが叫ぶ。

『エクスペリアームズ!』

ばちっ

セブルスの杖からの紅い光で杖もろともロックハートは吹き飛ばされる。
豪快に吹っ飛ばされて壁に叩きつけらられ、気絶したかと思われたが、ロックハートはよろよろとしながらなんとか立ち上がる。
壇上に再び上り笑みを浮かべる。
この見栄っ張りの根性はそれはそれですごいだろう。

「先ほどのように…決闘は行うのです。スネイプ先生は武装解除の呪文を唱えましたが、むしろのあの場合は別の呪文、ああ、いえ、スネイプ先生の魔法が悪かったわけじゃありませんよ?現に私の杖は…ありませんね?しかし、あれは私がわざとやられたに過ぎません。簡単に決着がついては面白くありませんからね…」

くどくどと説明を始める。
はこのクラブに参加するわけにはいかないので隅っこで見ようと壁側に行こうとする。
ロックハートが二人組みを作りましょうと言って、セブルスがぱきぱきと指名して二人ずつ組ませる。
ハリーはドラコと。
ハーマイオニーはがっちりとした体格のスリザリンの女子生徒と。

「あら?はやらないのかしら?」

壁にもたれかかって眺めていたに声をかけてきたのはスリザリン生のシェリナだった。
の隣に立ち、同じように壁に寄りかかる。

「リロウズ先輩はやらないんですか?」
「あたしが…?嫌よ、万が一この体に傷をつけたら困るわ」
「傷のあとが残らないようにマダムがちゃんと治してくれますよ?」
「そういう問題じゃないのよ。あたしの体はあたしだけのものじゃないもの」
「リロウズ先輩それってどういう…?」

シェリナはの方を見ずに決闘を眺めていた。
その表情は静かなものだった。
の視線に気付き、シェリナはふっと笑う。

「婚約者がいるの、将来を約束した…。あたしは彼の為に生きて、彼の為に死ぬの。だから彼の許しがない限り、傷1つ付けるわけにはいかないわ」

にこっと笑みを浮かべるシェリナは毅然として見える。
は少し違和感を感じたが、それが何なのか分からなかった。

「でも、クィディッチも怪我をするんじゃないんですか?リロウズ先輩、クィディッチの選手ですよね?」
「ええ、そうよ。クィディッチだけはちゃんと許可をもらったもの。あたしのわがままでね…。その代わり、クィディッチ以外で怪我をすることは許さないって言われたわ」

シェリナは純血一族の娘だ。
純血な血を保つ為に婚約者がいるのはおかしくないことだろう。
でも、にはそれが少し何か引っかかった。
そう……シェリナに嬉しそうな表情が見られないからだ。
婚約者の事を当たり前として受け入れているだけのように見えた。

「あの…リロウズ先輩……」
「あら?貴方の友達、ミリセントに殴られそうよ?」
「え?」

シェリナの言葉にははっとなり視線を向ける。
丁度ハーマイオニーが組み手のスリザリン生に体術で仕掛けようとしていた。
流石のハーマイオニーもあれほど体格が違う相手ではどうにもならないだろう。
はシェリナに言おうと思っていたことも忘れてハーマイオニーの方に駆けつける。

グレンジャー!

はハーマイオニーのローブを掴んでハーマイオニーの体ごと引き寄せて抱きしめるように庇う。
怪我をした右腕の方でハーマイオニーを庇うように支え、左腕で相手のスリザリン生…ミリセントの攻撃を防ぐ。
まだ少女とはいえ力はかなり強い。

「なにするのよ!あんた邪魔よ!!」
「体術は魔法じゃない。このクラブではルール違反だよ」
「うるさいわ!!邪魔しないでよ!その生意気な女の顔を殴ってやるんだから!」
「顔は駄目だよ。グレンジャーは可愛いんだから、顔を殴るのは駄目。僕でよければ変わりになるよ」
「あら、いい度胸じゃない。そんなヒョロヒョロの体で可愛い彼女を庇うって訳?」
「グレンジャーは僕の友達で彼女じゃないけど、グレンジャーが殴られるのは嫌だから変わりくらいは引き受けるよ。まぁ最も、僕にそれが当たれば、の話だけど?
なんですって?!!

完全に怒るミリセント。
怒りで顔が真っ赤だ。
流石のも、ハーマイオニーに暴力が振るわれようとするところを黙ってみていることはできない。
も少し怒っているのだ。
でなければここまでは言わない。
ミリセントがを殴ろうと腕を上げる。
もそれを受け止める覚悟をした。
ハーマイオニーが心配そうにを見ている。

この状況がロンに見られたら、また機嫌悪くするんだろうな…。

は呑気にそんなことを考えていたりした。
ハーマイオニーに淡い想いを抱いているだろうロンが、ハーマイオニーが他の男に庇われているのを見るのはいい気分じゃないだろう。


やめんか!ミス・ブルストロード!


怒鳴り声が響いた。
一瞬しんっと静かになる。
ミリセントの動きがぴたりっと止まり、ぎこちない動きで声のした方を振り向いた。
そこには眉間にシワを寄せた…といってもいつも眉間にはシワがあるが…セブルスがつかつかとこちらに歩いてくる。

「何をしている……」

セブルスはの前に立ち、ぎろっと睨む。
はそんなセブルスの様子に肩をすくめ

「何って、グレンジャーが殴られようとしたのをとめただけですが…?」
「そうは見えん。どうしてここにいる?」
「マダムには許可は頂きましたよ、教授。それにですね、可愛いグレンジャーの顔に傷でも付けられるのは僕は嫌です」
「我輩はミス・グレンジャーの怪我などより貴様に怪我をされる方が困るのだがな…。治すのは誰だと思っている?」
「教授ですね」

はきぱっと言い切った。
セブルスの眉間のシワが深くなる。
全く、この教授は素直じゃないな…と思う。

「大人しく見学をしていろ。絶対クラブに参加しようとなど思うな」
「了解しましたよ、とりあえずは」
とりあえずは…だと?
「ええ、とりあえずは…です」

はじっとセブルスを見る。

「…グリフィンドール5点減点」
酷っ!

ぼそっと減点を呟くセブルス。
だから陰険教師だと言われるのだ。
しかしに堪えた様子はなく

「そんなこと言うと、虹色ローブの件……触れ回りますよ?」
っ?!!!
「どうしますか?教授?」

ニヤっとは笑みを浮かべる。
虹色のローブの件とはもちろんジェームズから聞いたセブルスの素敵思い出…もとい脅しの材料の1つ。

「先ほどの減点は取り消す…。だが、大人しく見学していろ!」
「分かりましたよ」

くすくす笑うに対し、セブルスは不機嫌一直線。
そうやって反応を返すから標的にされやすいのだ。
昔はジェームズ達に、今はウィーズリーの双子達に。
だが、それもセブルスのいいところ。

…貴方ってすごいわ…」
「あ、グレンジャー。大丈夫?怪我ない?」

感心するハーマイオニーには心配そうに聞く。
ハーマイオニーはそんなに対して深いため息をつく。
自分の変わりに殴られそうになりながらも、人の心配をするに。
もっと、自分を大切にして欲しいとハーマイオニーは思った。