秘密の部屋編 42
それから1週間、は大人しくしていた。
というより、大人しくさせられていたと言うべきか…?
ちょっと動こうとすればマダムから叱られるし、マダムがいない時は誰かしら他の人がいて動き回ることなどできない。
ハリーがお見舞いに来た時に気になることを聞いてみた。
「クイディッチの試合?まだだよ?が授業に参加できるようになってからすぐになるとは思うけど…。
「ほんとに?」
「うん」
「そっか…。あ、それとポッター君。あの時言っていたアイディアは進んでるの?」
とりあえず『ポリジュース薬』の進み具合も確認する。
ハリポタシリーズの本の中では出来事の時期が曖昧な部分もある。
ハロウィンやクリスマスなど、イベント時の出来事から逆算して予想をつけるしかない。
「あ…うん。それがね…」
ハリーは困ったように眉を寄せる。
うまくいってないのだろうか…?
「禁書棚の本が必要なんだけど…誰か先生のサインが必要なんだ」
「透明マントで行ってその場で読んでこれば…?」
「無理だよ!ハーマイオニーも内容を全部暗記なんて無理だって言ってた」
「それなら、誰かさらっとサインをくれるような先生に頼むとかさ」
サインといえば、ロックハートあたりなら喜んでしてくれそうなものだが…。
はそう提案してみるが…。
「駄目だよ、…。だって、ロックハートはに怪我をさせた事件のせいで、禁書の貸し出しのサインとかの権利を当分剥奪されちゃったから…。ロックハートのサインじゃ借りられないんだよ」
「え……?本当?」
「うん、本当」
そうくるとは思ってなかった。
流石に2年生に禁書の貸し出しを許可するような先生などあまりいないだろう。
しかも使いたい理由が理由なのだ。
「ちなみに、読みたい本って何?」
の言葉にハリーはちょっと考える。
「『最も強力な魔法薬』だったかな…?」
「ってことは、魔法薬学関係だよね」
「そうだけど…。?」
ハリーが不思議そうに尋ねる。
禁書をどうにか手に入れる方法でもあるのだろうか。
透明マントでこっそり持ってきてもいいが、無くなっている事がばれたら返しにくくなる上に騒ぎになって減点されてしまうかもしれない。
だから、ハリー達は透明マントを使って禁書を持ち出すことはしないのだ。
「魔法薬学関係なら教授が持ってるかもしれないと思ってさ」
「…教授って……スネイプ?」
ハリーが思いっきり顔を顰める。
その様子には苦笑する。
「教授に聞いて借りれるかどうか頼んでみるよ」
「え?いいよ、。どうせスネイプなんかに言っても減点されるだけだよ!」
「う〜ん、でも駄目モトでね。減点なんてことにはならないように気をつけるからさ」
「でも、!あのスネイプだよ?グリフィンドール生を見たら減点することしか考えていないような陰険贔屓教師!」
ハリーの言いたいことが分からないでもないが…。
にとってセブルスは優しい人だ。
それに、なによりも…。
「大丈夫だよ、ポッター君。教授の弱みの一つや二つくらい掴んでるから」
「弱み…?」
「うん、そう」
ハリーの父親のジェームズさんに聞いたからね。
楽しい思い出と一緒にそれはもう沢山の話をね。
「楽しみにしててよ」
先日からかわれた仕返しもしたいしね…。
ふふっと笑みを浮かべるにハリーがちょっと引いたのはには分からなかった。
そんなこんなで現在に至る。
医務室生活1週間を経てからの魔法薬学第一回目。
グリフィンドール生はいつもながらこの授業が余り好きではないらしく誰もが顔を顰めている。
だけが微妙に機嫌がよさそうだ。
何しろ久しぶりの授業。
右腕のギブスと包帯が痛々しいが、それはの力で怪しまれない程度に徐々に治療しているので特に問題は無い。
「今日は『ふくれ薬』についての講義をする。近いうちに実際作ることになるのでよく聞くように」
いつもの変わらぬ無愛想な表情のセブルス。
変わらずハリーを指名しては答えられないことに対して減点していく。
それをは何もせずに見ていた。
「相変わらずすることが陰険なんだね…教授は」
ぽつりと小さな声で呟く。
しかし、どうやらそれがセブルスの耳には聞こえたようでハリーの減点をやめ、の方を見る。
教室内が静かだった為に聞こえてしまったらしい。
「何かね、。質問があるなら聞くが…?」
「いえ、なんでもありませんよ」
「1週間も休んでいて何も質問が無いとはさぞかし医務室では勉強を沢山していたのだろうな」
教授って、グリフィンドール生から減点する時、生き生きしてるのってやっぱ生きがいなのかな…?
嫌な生きがいだけど…。
「、ふくれ薬の材料は?」
「カミュの草を乾燥させたものと、ヒノキの樹木、コウモリの羽、ちなみにお砂糖をちょこっと入れると甘くて美味しく飲めます」
「砂糖は不要だ、味などどうでもいい」
「でも、効果が同じならば飲みやすい方がいいじゃないですか」
「生徒が教師に意見するなどまだ早い。グリフィンドール1点減点」
にゃろぅ…、どうあっても減点に持ってくつもりだったな、教授は。
相変わらず授業中は陰険教師だ。
普段はそんなことないのに…。
「それと、」
「はい?」
「席を移動したまえ」
「はい…?」
現在が座っているのはネビルの隣である。
大抵はネビルの隣に座っているのでいつもの定位置であるのだが…。
「その腕ではろくに魔法薬を作ることもできまい。席を変わって手伝ってもらえるような優秀な者の隣へ移動したまえ」
「え?でも、ネビルでも平気ですよ…?」
「ロングボトムに貴様の手伝いができるか?逆ならば可能だろうがな……。マルフォイ」
「はい」
セブルスに指名されて立ち上がるドラコ。
「の手助けでもしてやれ」
「教授、別に今日は魔法薬を作らないんでしたら別にいい…」
「ふくれ薬を作るまでに貴様の怪我が治る事はないだろう?ならば、説明の段階から一緒にやるもの同士でいたほうがいいだろう」
「え?でも…」
「ぐずぐずするな、。さっさと席を移動しろ」
「ですけど…」
「グリフィンドール1点減……」
「分かりましたよ、移動します」
職権乱用め…。
何故グリフィンドール生がスリザリン生と組まないとならないのだ。
しぶしぶとは教科書等の必要なものを持ってスリザリン側へと移動する。
少しを心配そうに見ていたネビルに大丈夫だと笑みを向けておく。
「お世話かけるけど、よろしくね。マルフォイ君」
「別に構わない。できる限りのフォローはしてやる」
おや…?
私の手伝いに全然嫌そうな感じを出してない…?
不思議そうにドラコを見る。
の視線に気付きドラコは少し顔を顰めた。
「何だ?」
「あ、いや…。なんかマルフォイ君が素直に手伝ってくれるなんて意外だったからさ…。これ幸いとグリフィンドール減点のために何かしてくるんじゃないかと思って…」
「仕方ないだろ…」
「何が…?」
ドラコはため息をつき、の右腕を見る。
「父上のせいなんだろう…?それ」
はこれ?と左の人差し指で自分の右腕を指す。
ドラコはそれに憮然とした表情をする。
「悪かったな…、何もできなくて…」
「別にマルフォイ君が悪いわけじゃないよ。マルフォイ君、優しいね」
「なっ…!べ、別に僕は…」
「僕は君の大嫌いなグリフィンドール生なんだからさ、そんな気にすることないよ。命が危なかったわけでもないし…」
「けど…。あれは…あとで僕も調べてみたが、あれは闇の獣の中でかなり強くやっかいなヤツらしいぞ。とてもじゃないが学生レベルで対抗できる相手じゃない」
どうやら本当に責任を感じているようだ。
ドラコのせいではないというのに…。
くすりっと笑みを浮かべる。
やっぱり、マルフォイ君は優しい子だよ。