秘密の部屋編 37
マートルには「また今度ね」と言って、その場を離れた。
ヴォルは猫の姿に戻り、の腕の中。
大人しく寮の自分の部屋に戻れば、部屋の中にはハリー、ロン、それから何故かハーマイオニー。
ちなみに、ネビルは今日の授業でちょっとごたごたがあって疲れていたらしく、もう寝ていた。
「おかえり、。」
にっこりと笑みを浮かべて出迎えたのはハリー。
どこかその笑みに黒さを感じるのはの気のせいだろうか…?
「……あ、うん。た、ただいま。…それより、なんでグレンジャーがここにいるの?」
「あら?悪いかしら?」
「いや、悪くないけど…ここ男子寮…」
「大丈夫よ、。ここに来るのは二度目だから…。ばれたりしないわ。」
「二度目って…」
前も来た事あるんだ。
でも、私は会ってないってことは私がいなかった時…?
「それより、…。僕達はマルフォイが怪しいって話していたんだけど、はどう思う?」
「は…?マルフォイ君?」
ドラコの何が怪しいというのだろうか…?
話題になっている話の内容が分からずは首を傾げる。
もっとも予想はつくが…。
「「秘密の部屋」のことだよ!」
「あ、ああ…。もしかして、その話をするためにグレンジャーもここにいるの?」
「勿論よ!だって、ハリーが疑われているのよ?」
「でも、ポッター君は違うでしょ?」
「それを証明する為に犯人を捜すのよ!」
ハーマイオニーの言葉に頷くハリーとロンだが、半分好奇心でもあるだろう。
どこか目の輝きが楽しそうに見える。
「それで、どこからマルフォイ君が怪しいなんてでてきたの?」
「だって、!僕の知る限りマルフォイ以上に怪しいのなんていないよ!」
「そうだよ、だってアイツの家はあのマルフォイ家だよ?純血主義のマグル嫌い!」
「マグルを嫌っていたスリザリンが創った『秘密の部屋』よ。スリザリンの『継承者』の敵、それはマグル出身の人のことでしょう?純血を重んじる『スリザリン』の『継承者』、スリザリン寮で純血を重んじてると言ったらマルフォイでしょ??」
ハーマイオニーがハリーとロンの言葉に説明を付け加える。
『継承者』の敵とはマグル出身のもの。
だから、マグル出身のものが狙われるのではないか…?
マグル出身を狙うということは、マグル出身を嫌っているものが犯人。
それでいてサラザール=スリザリンは純血を重んじていた。
ということは、犯人は純血主義であり、自身もその純血を誇っている人物。
「それで、マルフォイ君?」
頷く三人。
まぁ、分からないでもない。
彼らの知る人物の中では一番怪しいだろう。
その犯人が、ハーマイオニー達の言う通りに表でもそう振舞っていれば…の話だが。
50年前の犯人のリドルは、スリザリン寮ではあった。
でも、ドラコのようにマグルを嫌ってはいただろうがそれを態度に出すことはなく、優等生として過ごしてきた。
だからこそ疑われることなどなかった。
「でもさ、考えてみてよ。その『継承者』が普段、マグルを嫌っていて純血を誇っているという態度をとっているとは限らないかもよ?むしろこの事件を起こす為に、そのとき怪しまれない為にそんな態度は隠しているかもしれないんだよ?」
「、そんな器用なことできるような人なんていないよ。絶対、マルフォイだって!」
ロンが断言する。
断言までするか…普通?
しかし、考えてみればまだ10代の子供が学校全体をも欺くような仮面などかぶりきることなどできないだろう。
まだ我慢などしきれる年代ではないはずなのだから…。
「それじゃあ、それを断言する根拠と証拠は?」
別にとがめるように言っていない。
だた純粋な疑問としては言ったのだが、ぐっと黙るロンとハーマイオニー。
「それを今から調べる為に相談してるんだよ、」
ハリーがきっぱりと言う。
「マルフォイが犯人じゃなくても何かを知ってるはずだからね。ハーマイオニーがいいアイディアを思いついてくれたんだ。だからもそれにちょっと協力して欲しいな」
「協力って…、何をするつもりなの?ポッター君達は…」
「内緒だよ」
「内緒って…、なにやるかわからないのに協力なんてできないよ?」
「それじゃあ、何やるかわかれば協力してくれるの?」
「う……」
「してくれるんだよね?」
ハリーがにっこりと微笑む。
リリーそっくりの笑顔で…。
「…わかったよ。協力するよ…、大したことはできないけどね…。ポッター君が疑われているなら、違うということを証明する為にね…」
「、ありがとう!」
「別にお礼を言われるほどのことじゃないよ。言うならそのアイディアが成功してからにして欲しいな」
苦笑する。
どんなアイディアかは知らないが、おそらく『ポリジュース薬』を作るのではないかと思う。
まだ2年生が作るのは難しい薬だろう。
は去年散々セブルスの部屋の本を読み漁っているので、『ポリジュース薬』の作り方は分かる。
「僕はマルフォイ君は違うと思うんだけどな…」
ぽつりっとは呟く。
昨日話したドラコは「違う」とに言い切っていた。
嘘でないことは分かっている。
「…?」
「ポッター君達がマルフォイ君を疑っているのは分かってるけど…。僕はマルフォイ君だなんて信じられないんだよね…」
「何で?!」
「え…?何でって…、だってマルフォイ君が「違う」って言ってたし…」
「いつ?!」
「えっと…昨日?ちょっと話があるって言われて……」
「、マルフォイなんかと会ったの?!」
なんかって…ハリーそれはちょっと酷いんじゃあ…。
「マルフォイ君はポッター君たちが思ってるほど嫌な相手じゃないよ?」
「それはだからそう言えるんだよ…」
「そうだよ。あのマルフォイ相手にそんなこといえるグリフィンドール生なんてだけだと思う」
「私も…あまり誰かを悪く言うのは嫌だけど…マルフォイだけは別よ。だって、あんなに嫌なやつなんですもの!」
の言葉に反対を示す3人。
嫌われてるな…マルフォイ君って…。
まぁ、気持ちは分からないでもないけど…。
苦笑する。
がどういっても彼らのドラコに対する嫌悪はなくならないだろうから、これ以上は言わないが…。
でも、結構いい子だと思うんだけど…。
「って、嫌いな人っていないの?私、が誰かを嫌ってるのなんて聞いたこともないわ」
「嫌いな人?なんで?みんないい人だもん、嫌いな人なんていないよ?」
「でも、だってマルフォイに言われたことあるでしょう?あのマグルを見下す言い方」
「う…ん、まぁ、あるにはあるね」
ハーマイオニーは『穢れた血』のことを言っているのだろう。
別にはそういわれても、それがかなり侮辱する言葉だという実感がない。
だから言われても何も思わないのだが…。
「あそこまで言われてどうしてマルフォイのこと嫌いじゃないの?」
「どうしてって言われても…、僕にはあの言葉があまり侮辱されている感じには受け取れないからかな?グレンジャーみたいに一生懸命魔法界のことを勉強していた訳じゃないし、ウィーズリー君みたいに魔法界で育ったわけでもないからね」
この世界に来て1年と少し。
未来を知っていることで…まだ馴染みきれない所もある。
「って……」
「うん?」
ハリーが何か言いたそうにをみる。
はそれに首を傾げる。
ハリーは迷ったように口を開いたり閉じたりする。
言うことを迷っているようだ。
「……なんでもない」
結局は言わないことに決めたようで、苦笑しただけだった。
はそれを気にした様子もなく「そう…」と答えるだけ。
僕は…ロンやハーマイオニーみたいに、と一緒に学校生活を過ごしたいんだ。
でも、はどこか…親友ほどに親しくなるのを避けてるんじゃないの…?
ハリーのその言葉は言われることはなかった。
同じグリフィンドール生であり、ルームメイトであり、謎も沢山あるだろう。
去年はハリー達を何度か助けてくれた。
それでも、はどこかで誰にでも一線引いているように感じられた。
それは、がまわりを巻き込みたくがない為に無意識にしていること。