秘密の部屋編 31
はスリザリン寮への道をセブルスと一緒に歩いていた。
ドラコに別れ際、スリザリン寮へ来るよう言われたからだ。
「すみません、教授。いろいろお手数をおかけして…」
「構わん」
「でも、助かりますよ」
相変わらずのぶっきらぼうな話し方のセブルス。
はそれに苦笑する。
「マルフォイ君が手助けしてくれるっていうのは…予想外だったんですけど……」
「油断だけはするなよ、」
「教授?」
「スリザリンには闇の陣営の者が多い…。近づくことでさえ危険だということを頭の中にいれておけ」
は少し驚いた。
確かにスリザリン生には闇の陣営に属する者達が多いだろう。
でも、セブルスは比較的スリザリン生には寛大だ。
スリザリン生を警戒するようにしろ、などというようなことを言うとは思わなかった。
「そうですね…。でも、マルフォイ君みたいに可愛い子とか結構多いですから…。憎めないですよ」
スリザリン生にはグリフィンドール生として、そして一部のスリザリン生徒達にはいように目の敵にされているだが、スリザリン生は嫌いじゃない。
ドラコをはじめ、なかなか可愛い子たちが多いと思う。
それは、が彼らより実年齢が上のためにそう思うのだが…。
「可愛いって……貴様はどういう感覚している?」
「どうって、まっとうな感覚のつもりですが…?」
「どこをどう見てそんな台詞がでてくるのか、我輩には理解できん」
「そうですか?でも、私からすれば12歳の子供なんて可愛いもんですよ。この時期ですと5つ以上の年の違いは大きいですしね」
ホグワーツ生は最高学年で7年生。
つまり17歳だ。
最高学年までいけばさすがに可愛いとは言えないが、5年生くらいまでならば、にとっては可愛いものだ。
「5つ以上の年の違いとはどういうことだ?」
セブルスがを見る。
はその言葉にきょとんっとなる。
「あれ…?教授知りませんでしたっけ…?」
「何をだ?」
「私の実年齢」
リーマスには最初に説明する時に言った。
ダンブルドアには言っていない気がするが、多分知っているだろう。
勿論、ヴォルにも初対面の時に言った。
ついでに年相応に見られないらしいことをヴォルとリーマスには言われている。
「実年齢…だと?」
「はい。…私、2年生ですけど12歳じゃないんですよ?」
「ならば、いくつだ?」
「多分19です」
「は…?」
「ですから、多分19歳ですよ」
多分とついているのは多少自身にも疑問に思うことがあるからだ。
最近になって気づいたことだが、の体はあまり成長をしていない。
と言っても、年齢的に成長などするのはすでに難しい時期なのだが…。
この世界に来たのは18歳の時、あれから1年経った筈なのだが体が一年分を経ていないような感覚がする。
それは、ホグワーツで過ごしている間は少年の姿になっていたことが原因なのかもしれないが…。
一応精神年齢で考えれば19歳とは言えるだろう。
「19だと?!!!嘘を言うな!」
「嘘じゃありませんよ、失礼ですね…。私の元の姿は19歳に見えませんか?」
「全く見えん。」
「酷っ」
きっぱりと言い切るセブルスにちょっぴり傷つく。
ヴォルにもリーマスにも、さらにセブルスにも年相応には見られていなかったようだ。
日本人とはやはり幼く見られがちなのか…。
「教授までリーマスと似たようなこと言うんですね…。酷いです」
「事実だ。こればかりは、不本意だがルーピンの意見と同じようだな」
「酷いですよ…、教授。そんなこと言うなら、いつか絶対19歳年相応だって思わせるような姿になってみせます!」
「無謀なことはするな。恥をかくだけになるぞ。……ああ、ついたぞ。寮の入り口だ」
が決心を固めた所で、スリザリン寮の入り口についたようだ。
セブルスが何か合言葉を言ったが、考え込み始めたの耳には何と言ったのか分からなかった。
ゆっくりと扉が開かれる。
「帰りはマルフォイに送ってもらえばいいだろう」
「あ、はい。ありがとうございます」
がスリザリン寮に入るのはこれが2回目。
スリザリン寮にグリフィンドールの制服で入るなど、かなり勇気のいることだ。
しかし、は全く気にしていない。
躊躇うことなくスリザリン寮の中に入っていた。
とりあえずは談話室に向かう。
1度しかきたことないので、場所はうろ覚えなのだが…。
周りをきょろきょろしながら歩く。
グリフィンドール寮は比較的明るい感じの雰囲気だが、スリザリンは静かな雰囲気だ。
悪く言えば暗いのだが…。
「あ、マルフォイ君」
談話室についてみれば、ドラコがいつもの二人と一緒に話しながらお菓子を食べていた。
談話室にはドラコだけではなく他のスリザリン生もいる。
視線がに集まるが、は気にせずドラコの側に近づく。
「……?」
ドラコは驚いたようにの方を振り向く。
しかし、来いと言ったのはドラコの方だ。
「なに驚いてるさ?マルフォイ君。マルフォイ君が来るようにって言ったじゃない」
「いや、確かに言ったが…。どうやって来たんだ?」
「どうやってって、教授に連れてきてもらったよ?だって、マルフォイ君がそうしろって言ったじゃない」
「……本当にそうしたのか?」
心底驚いているドラコ。
まさか、冗談のつもりだったのだろうか…?
はむっとした表情をつくり…
「何さ…、だってマルフォイ君から情報もらう為にはスリザリン寮来ないとならなかったからさ…」
「別に明日でもいいだろう?」
「甘いね、マルフォイ君。情報を得るのは早い方がいいんだよ。ね、クラッブ君もゴイル君もそう思うでしょ?」
ドラコの隣にお菓子に夢中になっている二人に話を振ってみる。
実は、この二人のフルネームを知らなかったりする。
の認識では、「マルフォイ君のお付二人」という認識で、結構酷いものである。
そもそも、会話もしたことがないのだが…。
「この二人に聞いても無駄だ。そんなことを考える脳みそなど持ちあせてないだろうからな」
「うん、そうそうドラコの言うとおりだよ」
「僕達は、お菓子を沢山食べれば嬉しいよ」
否定しろよ、二人とも。
クラッブもゴイルもお菓子に夢中でドラコの話を良く聞かずに頷いているようだ。
ドラコはその様子に呆れる。
は軽くため息をつき、ドラコの空いている方の隣に腰掛けさせてもらう。
その間も、スリザリン生の視線が集中する。
かなりその視線が痛い。
なにしろ敵意に満ちているものばかりだからだ。
「それで、マルフォイ君。あの時言いかけたことって何だったの?」
「言いかけたこと…?」
「ルシウスさんが何とか…とか、あの欠片が何か知っているみたいだったしさ」
「ああ、あのことか」
ドラコはちらっと周りを見る。
周りの視線はに集中している。
といってもあからさまに視線が集中しているのではなく、意識がこちらに向いているとでもいうのか…。
「、僕の部屋へ行こう。そこで話す」
「マルフォイ君の部屋?いいの?」
「僕がいいって言っているんだからいいに決まってるじゃないか?それとも、君は嫌なのか?」
「別に嫌じゃないよ…。いいよ、じゃあ、マルフォイ君の部屋に行こうか」
苦笑して答える。
そういうところが可愛いんだよ、マルフォイ君は…。
心の中でそんなことを思っていたりしたが。
立ち上がるドラコについていこうとして、クラッブとゴイルも立ち上がろうとするが。
「お前達はいい。そこで好きなだけ食べていろ」
「いいの?!」
「ドラコがそうしろっていうならそうするよ!」
嬉しそうにお菓子に向き直る二人。
はくすくすと笑みをこぼす。
体格的にはかなり大きい方のクラッブとゴイルだが、こういうところはまだ子供なんだな〜と思える。
「ふん……。食べるだけしか考えてない馬鹿か…」
「こらこら、マルフォイ君、そういうこと言わないの。子供らしくて可愛いじゃない、お菓子に夢中だなんてさ」
「じゃあ、もお菓子に夢中になるのか?」
「まぁ、珍しいお菓子ならそれなりには…」
魔法界のお菓子はどれも珍しい。
好奇心で食べたりはするが、あそこまではしゃぎはしない。
そういえば、マルフォイ君が子供らしくはしゃぐ所って見たこと無いな…。
そう思う。
ドラコはハリーを見下しながらねちねち嫌味を言ったりする場面によく会うが、子供らしい面をあまり見たことがない。
やはり、マルフォイ家という有名な純血一族の中で育ったからなのだろうか…。
にしては、少し抜けた所があるみたいだけど…。