秘密の部屋編 29
ロックハートの私室にいるのは、ダンブルドア、マクゴナガル先生、セブルス、フィルチ、ロックハート、ハリー、ロン、ハーマイオニー、である。
「お前が!お前が…!!」
フィルチはロックハートの部屋に入るなり、ハリーに叫び始めた。
ミセス・ノリスを大事そうに抱えて。
「落ちつくんじゃ、アーガス。ミセス・ノリスは石化しているだけじゃ。スプラウト先生のマンドレイクが成長したら薬も出来て元に戻すことが出来る」
「しかし、ダンブルドア!こいつがしたことには変わりないのです!」
「アーガス、ハリーがやったという証拠などないじゃろう?」
ダンブルドアは優しく言い聞かせる。
ハリーはおろおろとそれを眺めているだけである。
それでも自分がやったわけではないという気持ちを強く持つ。
「のぉ…、ハリー?」
「僕はやってません!」
「わかっておる」
「ダンブルドア!そいつしかいないんです!そいつは知っているんです!だからあんなことを書いたんです!」
「何を知っていると言うのかね…?」
ダンブルドアのその言葉に一瞬フィルチが黙る。
言うつもりはないのか…と思っていたが…。
「そいつは、私が出来損ないの『スクイブ』だって知っているです!」
そう言ったフィルチの表情は苦しげだった。
本当は言うのも嫌だったのだろう。
「でも、ダンブルドア。ポッター君は関係ないですよ」
が口を挟む。
一斉に皆の視線がに集まる。
フィルチは驚いたようにを見た。
「ミセス・ノリスが石化したのを見つけたのは僕が最初ですよ。その次が教授、そしてポッター君たちです」
「それは本当かね、セブルス」
セブルスは頷く。
それでも眉間に寄せているシワが増えていることから不本意であるのだろう。
「我輩があの場に来た時にいたのは、だけだ。ポッター達はたまたま居合わせただけだろう。一番疑わしいのはだが…」
セブルスがハリー達を庇ったようなことを言ったので、ハリー達は驚く。
まさか、あのセブルスに弁護などされるとは思ってもみなかった。
けれど、セブルスとしては事実を述べたまで。
「しかし、あの場にたまたまとは言え居合わせたことに関しては疑わしいとも言うがな…」
そこはやはりセブルス。
ハリー達へ嫌がらせはやっておく。
ははぁ〜と息をつく。
「僕はミセス・ノリスに指一本触れてません!それに僕『スクイブ』というのが何のことなのか知らないです!」
「嘘を付くな!私の部屋であの手紙を読んで笑っていただろう!!」
「僕手紙なんて読んでません!」
手紙?
手紙って何だっけ…?
思い出せないは首をひねる。
1年以上経った今でも本の内容は結構覚えているとは思っていたのだが、意外と忘れている部分もあるようである。
それとも、これは予想外のことかな…とも思いなおす。
「やめんか、アーガス。さっきも言ったが、ミセス・ノリスは元に戻す事はできるんじゃ。それでよしとせんかの?」
「しかし、ダンブルドア!私のミセス・ノリスがこんなことになったのに罰則もないのですか?!」
「疑わしきは罰せずじゃ」
フィルチの顔が歪む。
ハリーの方をギロッと睨む。
どうして罰を受けないんだ…とでも言うように…。
「でしたら校長、こういうのはいかがでしょう」
「なんじゃね、セブルス」
「疑わしいのは変わりないのですから、ポッターはしばらくクィディッチの選手から外れてもらうのは…」
「セブルス…。ハリーがやったという証拠は何もないんじゃ」
そうです、教授。
それだけのことでハリーをクィディッチ選手から外そうだなんてちょっと苦しい理由ですよ。
「校長!『マンドレイクの回復薬』は私が作りましょう!この私にかかればその程度の薬などものの数秒でできてしまいます」
今まで怖いくらい大人しかった……というか自慢話はしていたのだが誰も相手をしていなかった…ロックハートが自慢げに話す。
はちらっとロックハートに目をやり…。
「魔法薬学の先生は、スネイプ教授なんですけど…」
「この学校では我輩が魔法薬学の教師だが…」
とセブルスの言葉が重なる。
思わず顔を見合わせるとセブルス。
そういえば、確か教授がちゃんとこの台詞を言うんだったっけ…はそう思いだしていた。
別にロックハートの言葉への突っ込みは必要なかったのかもしれない。
「し、仕方ないですね…。この場はスネイプ先生に譲りましょう…」
「譲るも何も最初から教授が作る予定だったと思うんですけど…」
「いえ、この「闇の魔術に対する防衛術」の教師たる私こそが相応しい役目。闇の魔法で石に変えられた者を元に戻す薬を作る!」
ロックハート自己陶酔。
自分の世界に入ってしまっているような者を相手にしていても疲れるだけである。
はとりあずロックハートを無視してダンブルドアを見る。
「ダンブルドア。あの場で最も疑わしいのは僕であることを忘れないで下さい。処罰が必要なら僕が受けます。フィルチさんもそれでいいですよね?」
「……」
「お前がやった、のか?いや、違う!マグル出身のやつがあんなことするわけないだろう?!」
フィルチはまだハリーを疑っているようである。
ダンブルドアはを困ったように見ている。
「ハリー、ロン、ハーマイオニーはもう寮に戻りなさい。くれぐれも気をつけるんじゃよ」
「え?でもダンブルドア先生、は…」
「にはもう少し詳しい話を聞くでの…」
にっこりと笑みを浮かべているダンブルドアだが有無を言わせない雰囲気である。
しかし、ダンブルドアに逆らえないハリー達は躊躇いながらも従う。
ちらっとの方を気にしてはいるがどうにもならない。
は、あ…と思いつく。
「そうだ、グレンジャー」
「何?」
は持っていたリドルの日記をハーマイオニーに渡す。
「これ、ウィーズリーに渡しておいてもらえないかな?落としてあったみたいだから」
「ウィーズリーって…ジニーのことかしら?」
「うん、そう。お願い、グレンジャー」
「いいわよ。その代わり貸し一つね」
「う…」
快く日記を受け取るハーマイオニー。
やはり、ただでは動いてはくれないらしい。
とりあえず、ハーマイオニーのことだから、どっかの双子のように無理難題を押し付けてくることないだろう。
別に双子に無理難題を押し付けられたことはないが、それくらいのことをあの双子はやりそうだと言う意味で…。
ハリー達を見送る。
「さて、アーガス。ミセス・ノリスを寝かせて置く場所を決めねばならんな…。ミネルバ頼めるかの?」
「はい、判りました」
にっこりと笑顔で引き受けるマクゴナガル先生。
さぁ、行きましょうとフィルチを促す。
さすがのフィルチもマクゴナガル先生とダンブルドアには逆らわないようである。
「、セブルス。わしの部屋でゆっくり話そうかの…」
「校長、それでは私も!闇の魔法に対しては詳しい私がいた方が…!」
「ギルデロイ。今回の事件が「闇の魔法」に関わりがあるかどうかはまだ分からんのじゃよ」
「ですが、石化した現象など私はいろいろ見てきていますよ!」
「騒ぎを大きくしたくないんじゃよ。お主には事がどうしようもなくなった時に対処してもらうでの…。期待しておるよ」
「そうですね!あまり小さな事件で私が活躍しても、他の方々が活躍する場を奪ってしまいますからね。ええ、任せてください!どうしようもなくなったときこそ、私の出番ですから」
ダンブルドアはふぉっふぉっふぉ…と笑う。
セブルスは苦虫を噛み潰したような表情だ。
としてはセブルスの気持ちがよくわかる気がした。