秘密の部屋編 26
何も分からぬまま時間だけが過ぎていきハロウィンになる。
確か今年のハロウィンでハリー達は絶命日パーティーに参加する予定のはずだ。
はそう思い、ハリー達と一緒にいるのはやめようと思った。
絶命日パーティーにはちょっと参加はしたくないのである。
「想像するのも気味悪いからね…。これも私の特権」
「何が特権だ?」
隣にはヴォル。
しかし姿は人の姿になっている。
今、とヴォルは二人で図書館の禁書の部屋にいた。
禁書棚のところで、こっそり立ち読みである。
ルシウスからの手紙の内容の手がかりがつかめないので結局は禁書に手を出すしかなかった。
ちょっと力を使って、姿を消して禁書の棚へと近づいた。
ヴォルと一緒に文献あさりである、…と言ってもヴォルは全然協力していないが…。
「気にしないで、ヴォルさん」
「気になる」
「大したことじゃないって」
「じゃあ、話せ」
「嫌だって言ったら?」
ヴォルはの両側にはさむように手をつく。
「そうだな…どうするか?」
にやっとヴォルが笑みを浮かべてを見る。
は持っていた禁書で、ばっと半分顔を隠す。
ガードしているつもりだ。
何しろヴォルには前科がある。
「別にほんと大したことじゃないって。今年ハリー達は、ハロウィンの日は絶命日パーティーに参加するはずだから、巻き込まれる前に離れておこうって思っただけ」
「つまり未来を知っているものの特権と言うわけか?」
「そういうこと」
だから大したことじゃないって。
話を読んだだけでも、絶命日パーティーには絶対に参加したくないと思ったである。
ハリー達には悪いが巻き込まれては困るのでここは逃げさせてもらう。
「いつもそうやって、傍観者でいてくれると助かるんだが…」
ヴォルはため息をつく。
なにかあれば危険を承知ですぐにいってしまう。
危険だから駆けつけるのではなく、危険だから駆けつけるのはやめて欲しいものだと思う。
「そういえばヴォルさん」
「何だ?」
「秘密の部屋ってもう開かれた?」
「どうしてだ?」
「うん?だって、ハリーがバジリスクの声聞いたって言ってたし…」
「ポッターが?あいつはパーセルマウスだったのか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
むっとするヴォル。
隠し事とかはしてほしくないのだ。
しかし、からすれば聞かれなければ答えようがないとでもいうのか…。
「ハリーのあの傷あるでしょ?あの傷のせいでヴォルデモートの力の一部がハリーに移っちゃったんじゃないかって」
「誰かに聞いたのか?」
「いや、そうじゃないけど…。多分ダンブルドアがそう考えているってだけで…」
「、お前人の考えまで読めるのか?」
「さすがにそこまでは出来ないって!ダンブルドアがハリーにそう言うはずなのを知ってるだけ」
「そうか…」
魔法が効かない、未来が読める、心まで読めるとなれば怖いものなどそうないだろう。
そこまでの力があれば、の場合はさらに危険なことに首を突っ込むのではないかとヴォルは心配したのだが…。
はそういえば…と思いだす。
「ねぇ、ヴォルさん。ちょっと聞きたいんだけど…」
には気になっていたことが一つある。
ヴォルの考えを聞いてみたいと思っていたのだ。
「ジニーいるでしょ?」
「…?ああ、ウィーズリーの妹か。それが?」
「うん、ちょっと気になったんだけど…」
「…?」
第三者の声にびくっと反応して振り向くとヴォル。
そこには、棚を覗き込むようにしているジニーの姿。
…なんか、最近妙にジニーとの接触率が多い気がすると思う。
食事の時や談話室にいる時とかも話しかけてくる時が多いと思う。
「こんなところで何してるの?」
「それはこっちの台詞だよ、ウィーズリー。君こそ…」
「私は別に…」
ジニーはちらっとヴォルを見る。
ジニーの手にはやはり日記が大事そうに握られている。
そこでハタと気付く。
ひょいっとしゃがんでヴォルから抜け出す。
「…?」
ヴォルは怪訝そうにを見る。
「ウィーズリー、ここにいるのを見つかったら叱られるよ。行こう」
はヴォルの言葉を気にしないでジニーの腕を掴んで連れて行こうとする。
ただ、あの体勢ではジニーに誤解されてしまうと思ったから抜け出しただけなのだが…。
ヴォルはそれが気に入らなかったらしい。
ジニーを睨む。
ジニーはそれに気付き、ヴォルを見下すような笑みを浮かべる。
「!離れろ!」
「へ?…何?」
ヴォルの声にが振り向こうとした時は遅かった。
ジニーはの腕をつかみ、少女とは思えないほどの力で棚に押し付ける。
わ…と驚いた声をあげるが、次の瞬間ぴたりっと首筋に杖をあてらた。
「を離せ」
ヴォルはジニーをぎろっと睨む。
は驚きで呆然としている。
「油断大敵だよ。さて、君が誰か話してもらおうか?」
「自分で調べるんじゃなかったのか?」
「調べるのもいいけど、脅す方が簡単だろう?」
ジニーの話し方が違う。
がちょっと気になっていたこと本当だったらしい。
もしかして、ジニーはリドルに体を殆どのっとられているのではないかと…。
しかし、ふと思う。
「もしかしてヴォルさん、リドルと面識ありなの?」
ジニーをのっとったリドルの話し振りからすると、ヴォルと面識があるようなことを言ってる。
「何故僕の名前を知っている?」
「え?…だって、その日記に『トム=リドル』って書いてあるでしょ?」
「、ウィーズリーの妹がそいつの器だと気付いてたのか?」
「え?何で?だって知ってるって言ったじゃん、ヴォルさんには…」
「お前な…。説明省きすぎだ。そこまで詳しい事を俺は聞いてないぞ?」
「そうだっけ?」
状況を気にせずきょとんとすると呆れるヴォル。
ジニーは相変わらず杖をに突きつけたままである。
からは全く緊張感が感じられない。
「君達は今の状況が分かっているのかい?言わないと、このって少年の命はないよ?」
「僕を魔法で殺したら、死体の始末が面倒じゃないの?リドル」
「五月蝿いな。君は黙って怯えていればいい」
「別に怯えてないけど…」
というより、変。
すっごく変。
何がと言うと……ジニーの姿でリドルが話をしているというところがである。
違和感がすっごくあるんだけど。
ここで笑ったりしたら……二人とも怒るだろうな。
はちらっとヴォルを見る。
ヴォルはを心配するでもなく眺めている。
「好きにすればいいだろう?俺はを傷つける相手には容赦しない。お前程度の魔法でを傷つけられるものならやってみろよ」
「へぇ…。彼は君の大切な人じゃないのかい?」
「そうだが?」
ヴォルは態度を変えない。
ジニー…リドルはいらだたしげにを見る。
そのも怯えを見せずにさらに苛立つ。
「何を考えてる?」
怯えもしない、ただじっと見返してくるに尋ねる。
「何って…僕とウィーズリーの身長ってあまり変わらないんだな…とか?」
ジニーの顔が少し引きつる。
それはそうだろう。
杖を突きつけられているのにもかかわらずそんなのん気なことを考えられれば。
「君はっ!!」
「あと、ジニーの姿でその言葉使いは合わないなぁ…とか」
「君は何を考えているんだ!」
「え?何って…それを言ったじゃない」
には魔法が効かない。
それを相手が知るはずもないのだから仕方ない。
しかし、魔法が効かないことがばれてしまうのもまずい気がする。
「ねぇ、リドル…。僕は別に君の邪魔はあまりする気がないんだけど、離してくれないかな?」
「邪魔をしないという確証はない」
「そう言われても」
「そうだね……、じゃあ条件を出すよ」
「条件?」
突然ふっとジニーの体が崩れる。
は慌ててその体を倒れないように支える。
何か気配を感じて顔を上げてみれば、目の前には透けているがヴォルと似たリドルの姿。
は突然のことで驚く。
リドルは驚いたままのに顔を近づける。
自分の唇をのそれにそっと重ねた。
リドルは透けた状態のために、触れたかどうかなんてには分からなかった。
『これが条件だよ』
すっとすぐに消えるリドル。
ジニーの体がふっと起き上がり、固まったままのを残してそのまま逃げるようにぱたぱたと去っていった。
い、今の…何?
さっきまで脅していたのになんでこうなるの…?
は混乱していた。
しかしハタと気付く。
ヴォルの方を見てみれば、思いっきり不機嫌そうに顔を歪めている。
「ヴォ、ヴォルさん…?」
ヴォルはの腕を掴み、引き寄せる。
は驚く間もなく、ヴォルに唇を塞がれていた。
触れるだけのものではない激しいもの。
ヴォルの手は片方をの腰にまわし、もう片方での頭を後ろから固定する。
そろりっと舌を絡ませるように入れてくる。
それにびくっとが反応する。
たっぷり味わうように角度を変えて口付けを繰り返し、舌を絡ませる。
「ん……ぁ…」
あわせた唇の隙間から、声が少しだけ漏れる。
は自分の声が恥ずかしくて思わずぎゅっとヴォルの服を握る。
しかし、それがさらに煽ることだということに気付かない。
ヴォルはの唇を開放すると、次は首筋に顔を埋めた。
「ヴォ、ヴォルさ…?」
「声出すと誰かが来るぞ?」
「っ…!」
こんなところを見つかってしまえば言い訳は難しい。
力を使って記憶操作をすればいいのだが、知り合いにでも見つかればそれは難しくなる。
特によく顔を合わす相手ほどそういう記憶操作は難しい。
なにしろ、こういう場面は意外とばっちり記憶に残るはずなのだから…。
ヴォルはが逆らわないのをいいことに、首筋に痕を残していく。
の頭を支えてた手はいつの間にか、のネクタイに手を伸ばし、しゅるりっとといていく。
さすがにそこまでいってぎょっとする。
「ちょっ…。ヴォルさん、待って、待って!」
「何だ?」
「私今、男!少年の姿のままなの!」
「だからなんだ?」
別に気にしていない様子のヴォル。
しかしも突っ込みどころが違う気がする。
それでは、まるで元の姿の時なら構わないのではないかということになってしまう。
「だからなんだって…。男襲って楽しいの?!」
「別に俺はならどんな姿でも構わないが?」
「構ってよ!気にしてよ!なんでそう、抵抗感ないわけ?!」
ヴォルは顔を顰めてを離す。
どうやら、やる気を殺がれてしまったようだ。
「分かった。…今度はが元の姿になってる時に続きをやることにする」
「つ、続きなんていいってば!」
「大丈夫だ。が嫌がれば最後まではしないから」
「さ、最後って何ー?!」
「最後は最後だ」
の顔は真っ赤である。
引き抜かれそうになったネクタイを慌ててしめ直す。
ヴォルはふと思いついたように
「……日本人ってのはそういうのは遅れてるのか?」
「ほっといてよ!」
イギリスの人がスキンシップ激しすぎなんだってば!
とは言っても、ヴォルのに対するそれは親しいものにするにしてはいき過ぎている。
としてはやはりからかわれたと思っているのだが。
は自分で気付いていないのか。
本気で嫌ならもっと抵抗らしい抵抗をすればよかったものを…。
全く嫌がるそぶりを見せなかったため、恐らくこういうことは又あるのだろう。