秘密の部屋編 24







部屋に戻れば、なにやら難しい表情のハリーとまだ起きていたネビル。
ロンは疲れた〜と言ってベッドにぼすんっとダイブ。
も自分のベッドに腰を下ろす。

「ネビル、まだ起きてたんだね。どうしたの?」
「あ、うん…。を待っていたんだけど……」
「でも、もう夜遅いよ?」

寝なくていいの?
はそう言うが、ネビルはなにやら不安そうな表情を向ける。

「どうしたの…?」
「……なんか、変な音がするんだ…。その音が気になって眠れなくって…」
「音ってどんな…?」
「ズルズルってなにか引きずるような音と、シューシューって声みたいな…」

引きずる音とシューシューって声ねぇ。
それは十中八九、バジリスクだね。
さすが、ネビル。
そういえば、今日あそこでジニーに会ったって事は、あのあと秘密の部屋を開いたんだろうね。


「僕も…音じゃないけど、変な声が聞こえた」


ぽつんっとハリーが言う。
ロンがベッドから身を起こす。
ハリーは俯いたまま手を握り締めていた。

「ロックハートのサインの宛名を書いて終わって帰る時なんだけど…『来い……引き裂いてやる………殺してやる……』って声が…」

ハリーはぶるっと震える。
その体を支えるように自分の腕で抱きしめる。

「でも、その声はロックハートには聞こえてないみたいだった…」
「じゃあ、ハリーの空耳なんじゃないの?ロックハートのサインの宛名なんか書いてて疲れてたんだよ」
「でも、確かに聞こえたんだ」
「ふ〜〜ん」

イマイチ信用してない様子のロン。
ハリーにだけしか聞こえない声。
当たり前だ。
何しろ蛇の声なのだから…。
意味は分からなくても、声だけでもネビルが聞こえたのは、ネビルがリズ・イヤーだから。

はどう思う?」
へ…?

尋ねたのはロン。
まさか、ロンから話の矛先を向けられるとは思っていなかったは間抜けな返事を返してしまう。

「う〜〜ん、そうだね…。僕には何も聞こえなかったけど…、ポッター君が聞いたっていうなら本当なんじゃないの?」
「でも、にも何も聞こえなかったんだろ?僕もだけどさ…」
「場所が違ったからじゃないの?」
「でも、ネビルには何か聞こえたらしいけど?」
「ネビルは特別だよ」

ね?とはネビルに同意を求める。
ネビルの耳は特別である。
ヴォル曰く、パーセルタングだろうが聞き取ることができるらしいから。

「ネビル…?何でネビルが特別なの?

ハリーがじっとの方を見る。
そうか、ハリー達は知らなかったんだっけ?
と思う。

「ネビルは『リズ・イヤー』って言ってね、どんな言葉でも正確に聞き取れる耳を持ってるんだよ」
「『リズ・イヤー』…?僕、そんなの聞いたことないよ?」

ロンが首を傾げる。
魔法界で育ったロンは、魔法界でのことは大抵知っていると思っていた。
でも、『リズ・イヤー』というのは初めて聞いた。

「なんでもすごく珍しいらしいよ。遺伝性のものなんだけど、親がそうだからと言って子供もそうなるって確率は…確か5%…だったかな?」

つまり、現在『リズ・イヤー』である魔法使いは殆どいないとも言っていいほどの確率だ。
それだけ珍しいということ。

「珍しい特技持ってるんだね、ネビル。それで、それって何の役に立つの?」

ちらっとハリーがネビルを見る。
ちょっとそのいい方はキツイんじゃないかな…?
はそう思うが…。
ネビルは気にせず首を傾げただけだった。
本人もついこの間までは知らなかった能力だ。
自覚して使えるようなものではないらしい。

「でもさ、ネビルが聞こえたっていうなら、その、ハリーが聞いた声って普通の人には聞こえない声ってことなのかな…?」
「そう…かもしれない。…他にこの声が聞こえる人がいればまた話は違ってくるかもしれないけど…」

ロンが首をひねり、ハリーも考え込む。
はその声が何なのか知っているが教えるわけにはいかない。
リドルの件は、とりあえずはまだ大事にはならないだろうから…。
確か、最初の犠牲はミセス・ノリス。
はそれよりも、ルシウスからの手紙に書かれていたことが気になっていた。
まずは、その試練の方が問題のような気がする。

「ねぇ、ウィーズリー君。ちょっと聞きたいんだけど…」
「何?」
「あのさ、『ファンダール』『カナリアの小屋』『伝導の書』のどれか聞き覚えのあるものある?」
「いきなりどうしたの?」
「うん…、ちょっとね…。どう?」

魔法界で育ったロンなら何か知っているのではないかという期待を込めてである。
ハリーが少し顔を顰めたのに誰も気付かなかった。
とロンの間にあった、少しギスギスした感じが無くなっているからである。

「……『カナリアの小屋』なら聞いたことがあるけど…」
「え?本当に?どこで?!」
「確か…フレッドとジョージが前に言っていたような気がする」
え……?

よりによって、あの双子ですかい…。

「それがどうしたんだい?
「…あー…、うん。ちょっとね…」
「『カナリアの小屋』ならきっと、フレッドとジョージなら知っていると思うから聞いてみたら?」
「…聞いて素直に答えてくれると思う?あの二人が…」

ここぞとばかりに何か条件を持ちかけてきそうな気がする。
というか、そうに違いない。

思わない
「でしょう?……しょうがない、地道に調べるかな…。あ、ネビルは何か知ってる?」

ネビルも魔法界の出身だ。
何か知っているのではないのだろうか…?
しかしネビルは首を横に振るだけである。
は、そっか…と少し残念そうな顔を見せる。

「調べるなら、僕、手伝うよ?
「あ、本当に?ポッター君」
「図書館の禁書の棚とかに行きたいなら、透明マントもあるし。

というか、まだ2年生なのに禁書をほいほい見たりしていいんかい?!
そのマントを与えたダンブルドアもダンブルドアだが…。
さすが、あのジェームズとリリーの息子だけはある。

「そうだね…、ルシウスさんからのものだから禁書みないと分からないかもしれないし…」
「ルシウスって…、ルシウス=マルフォイ?」

ハリーが思いっきり顔を顰めて聞く。
ロンもあまりいい顔をしてない。

…、マルフォイ家の当主と何があったの?」

ネビルだけが心配そうに聞いてくる。
は安心させるように笑みをみせ、ぱたぱたと手を振る。

「別に機嫌損ねたって訳じゃないから。ちょっと諸事情でちょっかいかけられる予定なんだけど、そのヒントがさっきの3つってこと」
「ちょっかいかけられるって…、狙われているって事なの?
「う〜〜ん、まぁ、そんなところなんだけど…、でも、大丈夫だから!」
の大丈夫はあてにならないよ!

ハリーはきっぱりと言う。
それはヴォルさんにも言われた気がする。
そんなに信用ないのかな…。

「協力するから何でも言ってね、
「そうだよ!ルシウス=マルフォイなんかに負けてたまるか!僕も協力するよ!」
「ぼ、僕も協力する!にはいつも助けてもらってばかりだから…」

ありがと…と返す
でも、巻き込むわけにもいかないと同時に思うのだった。