秘密の部屋編 18
ふわふわあったかい感触。
ぼそぼそと聞こえる話し声。
の沈んできた意識が浮き上がろうとしていた。
うっすらと開けた目に飛び込んできたのは見覚えのある天井。
ぼぅっとしたまま横を向けば、セブルスとダンブルドアの姿。
が意識を取り戻したことに気付いたのか、にっこり微笑むダンブルドアと、こちらに向かってくるセブルス。
「大丈夫か?」
セブルスはの額に手をあてる。
「まだ、少し熱いな」
「あの…?」
そこでは自分がセブルスの部屋のベッドに寝かされていることに気付いた。
どうやら自分は倒れたらしい。
「、何があったかは聞かないが、無理はせんことじゃよ」
「ダンブルドア…」
「大方、ポッターどもを助ける為に無理したのだろう?気絶していた残りのピクシー達を調べたが、魔法が掛けられていたようだ」
「魔法?ハリーを襲うような…ですか?」
は尋ねながら体を起こす。
セブルスはそれを止めようしたが、が笑顔で大丈夫だと制止する。
まだ、体はだるいが眩暈はもうない。
「そうだ。ポッターを狙っていたようだが、魔法の掛け方がいまいち甘かったせいか、ほかの生徒達も襲ったのだろう。大体、ピクシーを授業中に放つなど何を考えているのだか…。ダンブルドア、何故あんなのを教師にした?」
「彼は優秀な魔法使いじゃよ。生徒の母親から多数の推薦があったほどじゃからの」
「ミーハーな魔女の推薦を真に受けたのか?」
「ホグワーツは寄付で成り立っておるところもあるのじゃよ、セブルス」
「つまりは寄付金盾に断れなかったと」
「彼の授業も又、個性的で生徒達にはいい経験になるじゃろうて…」
ふぉっふぉっふぉっと笑うダンブルドア。
笑って誤魔化すな。
と、セブルスは言いたかったが、相手は校長である。
さすがに口を閉ざした。
「でも、ハリー無事なんですよね?」
「傷一つなく…な」
「それなら、いいです」
ほっと息をつく。
「何がいいです、だ。貴様、去年アレだけ無茶しておきながら今年も同じようなことするつもりなのか?」
「あ、いや、今年は穏便にいきたいんですけど…」
「けど?」
「多分、去年より波乱万丈になるかな?とか?」
へらっと笑みを浮かべる。
ルシウスのこともある。
今年も自身どうなるか分からないのである。
「……」
「あ!それより、教授!どうして教授があそこに駆けつけたんですか?」
秘儀、話を逸らそう作戦!である。
「あの時間我輩は授業がたまたまなかったからな。全く、あんなのに捕まるとは不運としか言いようがない」
「同じ教師なのに…なんか酷い言いようですね、教授」
「貴様はアレを教師と認めるのか?」
「まぁ、一応。三流ギャグ小説作家ですし」
「……それは認めていると言えるのか?」
認めているとは言えないだろう。
ロックハートの書いている本は、体験記であり、少なくともギャグ小説などを執筆してはいない。
しかし、から見れば、あれは三流ギャグ小説らしい。
「ん、でも、ありがとうございました。もう大丈夫ですから、行きますね」
「まだ、寝てろ」
「え?だって、早く行かないと就寝時間に…」
「もう、寮から出ていい時間じゃない」
「もうそんな時間ですか?!」
そんなに意識がなかったとは思わなかったので驚く。
セブルスの部屋は地下室なので、外が明るいのか暗いのか分からない。
今が昼なのか夜なのか分からないのだ。
「、今日はここでゆっくり休みなさい」
「ダンブルドア…」
「あまり、無理をしてはいかんよ」
優しい笑みをみせたダンブルドアはそのまま静かに部屋を出て行った。
が心配で、の目が覚めるまで待っていてくれたらしい。
校長である以上、ダンブルドアとて暇ではないはずなのだ…多分。
「ほら、とっとと休め」
ぼすんっと、押されてベッドに倒れこむ形になる。
セブルスはそのまま、机に向かって採点か何か作業を始める。
「ありがとうございます、教授。…おやすみなさい」
セブルスは振り返る事はなかったが、は満足そうに目を閉じた。
自分の役目を知られては迷惑がかかる。
そう思っていても、多少なりとも事情を知っている人がいるということは嬉しいことなんだと、この時改めて思ったのだった。
そのまま、朝まで目が覚めることなく、は眠りにつく。
眠りについたを見て、セブルスがため息をついていたことは知らずに…。
目が覚めて周りを見れば、椅子に座ったまま腕を組んで目を閉じているセブルスが見えた。
寝ているのか起きているのか分からない。
は起き上がってセブルスに近づき、顔の前で手を振ってみる。
反応はない。
どうやら寝ているようだ。
寝ているときまでも眉間にあるシワに苦笑がもれてしまう。
コンコン
「スネイプ先生。スリザリン2年、ドラコ=マルフォイです」
マルフォイ君?!!
突然の訪問者に慌てる。
自分の姿を見直し、少年の姿であることにほっとする。
そして、まだ寝ている…と思う、セブルスを起こそうとするが…
「入りたまえ」
ドラコの声で目が覚めたのかセブルスの目は開いていた。
かちゃりっと扉の開く音。
ドラコは何か手紙らしきものを持って部屋の中に入ってくる。
視線を上げ、セブルスを見て、それからに気付く。
「…?」
「お、おはよ、マルフォイ君」
引きつった笑顔で挨拶をする。
ドラコは心底驚いたようである。
「なんで、君が…」
「何の用かね?マルフォイ」
ドラコの言葉を遮るセブルス。
ドラコの視線がセブルスの方にいきほっとする。
グリフィンドール生のが、スリザリン寮監のセブルスの部屋にいるのはおかしいのだから。
「父上からの手紙です。…それで、今日から試してみたいと思うのですが…」
「どれ…」
差し出された手紙を受け取るセブルス。
ざっと目を通す。
その間、やはりドラコはの存在が気になるらしくちらっとこちらに視線を向ける。
はふと思い出す。
「試すって、ニンバス2001?マルフォイ君」
「何故知っている?」
「風の噂で…」
「どこのどんな噂だそれは」
「ま、細かいこと気にしない、気にしない。マルフォイ君、シーカーやるんでしょ?」
「…そうだが」
いまいち納得いの行かないドラコだが、が夜の闇横丁で平然としていたのを思い出す。
闇の世界と関わりがありそうなのことだから、独自の情報網でも持っているのだろうと結論づける。
「がんばってね。ポッター君は手ごわいよ」
「僕がポッターなんかに負けるとでも?」
「うん」
「そこで頷くな!」
「だって、シーカー初めてでしょ?去年からシーカーやってるポッター君の方が上に決まってるじゃない。マルフォイ君は今から練習してそして追いつくんでしょ?」
「当たり前だ。ポッターに出来ることが僕に出来ないはずがないだろう」
当然のように答えるドラコ。
はくすくす笑う。
「今年はグリフィンドールに寮杯を持っていかれないようにしなくてはならないからな…。新シーカーの教育は必要だ」
セブルスはドラコに紙を一枚渡す。
「教授、それって、今日のクィディッチ競技場の使用許可ですか?」
「そうだが?」
「今日はグリフィンドールが使用するって分かっていてやってます?」
「それがどうした」
「…陰険ですね、教授」
「それで、貴様はどうする?」
「別に何もしませんよ。喧嘩してもなにしても結構、結構。クィディッチなんて僕には関係ありませんから」
の答えが意外だというように驚くセブルス。
ドラコもの答えにには驚いていた。
はふっと笑みを浮かべて…
「別に僕はすべてにおいてポッター君の味方ってわけじゃないですよ。命に関わることがない限りは傍観するだけです」
「それはそれで問題があるがな、」
「そうですか?」
「命に関わる、関わらざる関係なく、我輩は貴様が傍観者でいてくれることを願うが?」
「それは無理ですね」
危険な時だけは、の性格上動かずにはいられない。
クィディッチの勝敗云々など大したことではない。
「マルフォイが来たという事は、もう寮に戻れるだろうからな、マルフォイ、を頼むぞ」
「ちょっと、教授?頼むってどういうことですか?」
「そのままの意味だ。貴様は目を離すと何をしでかすか分からん」
「僕はウィーズリーの双子より大人しいですよ」
「どっちもどっちだ」
「酷いですよ!教授」
「ほら、さっさと行け」
を追い払うように自分の机にむかうセブルス。
ここでしつこくセブルスに話しかけても相手にされることはないだろう。
仕方なく、はドラコと一緒に部屋を出て行くことになった。