秘密の部屋編 15
ハリーとロンのに対する雰囲気は朝になっても変わっていなかった。
仕方ないと思い、はネビルと一緒に朝食の席に向かう。
こんな時運が悪いのか、席がハリー達と向かいになってしまった。
かなり気まずい雰囲気が漂い、静か朝食になる。
ハーマイオニーだけが、この雰囲気に首を傾げていた。
ばさばさ
朝食恒例のふくろう便。
そのうち一匹がの目の前に止まる。
が手紙を取ろうとした瞬間、
がしゃぁぁぁん
の前に止まったふくろうを巻き込んで一匹のふくろうが派手に着地…というか転がり込んだ。
持っているのは赤い手紙。
「げ…」
それを見て思いっきり嫌そうな顔をしたのはロン。
ハーマイオニーは心配そうに転がり込んできたふくろう…ウィーズリー家のエロールを立たせ、手紙をロンに渡す。
「『吼えメール』だ。ど、どうしよう…」
「『吼えメール』って何?」
「…今に分かるよ」
しぶしぶとロンは赤い封筒をそっと開ける。
「ロナルド=ウィーズリー!!!」
モリー婦人の大きな声が大広間に響き渡る。
「車を盗み出して、果てはその車でホグワーツに来たそうね!ダンブルドアからの手紙を読んだ時は、心配しましたよ!私とアーサーがどんな思いだったかわかりますか?!お前もハリーもも死ぬかもしれなかったのですよ!いいですか?!今度同じことをすれば退学と言われる前に、私が貴方の首根っこ引っ張って家に連れ帰りますからね!」
かなりの大声だった。
大広間中に聞こえただろう。
くすくす笑う生徒もいれば、側にいた生徒達はあまりの大声に耳がじんじんとしていた。
も少し顔を引きつらせながらそれを見ていた。
かなりすごかった…というのが正直な感想だ。
「ね、」
「ん?何?ネビル」
「あのね、言いにくいんだけど。のところに来た手紙も……」
ちらっとその手紙を見るネビル。
もそちらを見れば、その手紙は赤い。
こちらも『吼えメール』らしい。
おそるおそるはその手紙を手に取る。
確かに自分宛らしい。
周りは2通目の『吼えメール』に興味深々である。
カサリっとは手紙の封を切る。
すると手紙が浮き上がりロンの時と同じように勝手にしゃべりだす。
「。ホグワーツへは素晴らしい方法で行った様だね。悪戯仕掛け人の1人だった私もさすがにも吃驚したよ。でもね……1回目は許したけど今度心配掛けたときは許さないって言ったよね?覚えてる?勿論覚えてるよね?覚えてないなんて言ったらどうなるか分かるよね?私だけじゃないよ、あのバカップルも心配してるよ?そうだね…、クリスマス休暇には一度帰っておいで。その時ゆっくり話し合おうね、。勿論、これはお願いじゃなくて……強制だからね、」
始終優しい声で宛の『吼えメール』は終わった。
ロンの時とは違い、まわりはしんっと静まり返っていた。
その場に偶然居合わせていたセブルスに同情の視線を向けられていたことには気付かなかった。
口調は優しいけど、すっごい怖いよ、リーマス。
どうやら、クリスマス休暇は強制的に帰らねばならないようである。
帰ったら帰ったで怖いが。
待っているのはリーマスだけでなく、記憶だがジェームズとリリーとハリーもいる。
「、…誰からのだったの?」
「あ…うん。保護者というか同居人というか」
ははは…と乾いた笑みを浮かべながらネビルに答える。
「「過去、悪戯仕掛け人だったとは、の保護者って誰だい?」」
両側から話しかけられ驚き振り返る。
そこには予想通りの現在悪戯仕掛け人のウィーズリー双子。
「えっと。何の事でしょう?」
「とぼける気かい?」
「『吼えメール』の主が言っていただろう?」
ばっちり聞いていたんですね…。
耳がいい。
「…そうですね。名前は教えられませんが…ムーニーと言えば分かりますか?」
「「ムーニーだって?!!」」
「あの伝説の悪戯仕掛け人の?!」
「僕らが尊敬する大先輩の!」
興奮するように話す双子。
ムーニーはリーマスの悪戯仕掛け人としての名前。
「は彼と知り合いなのかい?!」
「是非、今後紹介してくれないか!」
「え?」
別に紹介するのはかまわないのだが…。
リーマスの家に双子を招待するということになるのだろうか…。
それはまずい気がする。
「駄目なのかい?」
「紹介するだけだよ?には別に損はないだろう?」
「まぁ、確かに損はないですけど…」
「それなら、いいだろう?」
は双子を見る。
雰囲気からどっちがどっちかはなんとなく分かるのだが、今はそれがやけにはっきり分かるような気がする。
「あの…ジョージ先輩、なんか随分強気なんですね」
少し遠慮が見えるのがフレッド。
容赦なく突っ込む方がジョージ。
のその言葉に驚く双子。
「…、僕らの見分けがつくのかい?」
「え?ええ、まぁ。だって、なんとなく違うじゃないですか」
双子は顔を見合わせる。
そして、ぐるぐると何度か場所を入れ替わる。
ばっと、1人だけの前に出る。
「僕はどっちだい?」
「フレッド=ウィーズリー先輩でしょ?」
また目を合わせる双子。
再びぐるぐると場所を入れ替わりに尋ねる。
それを何回かやる。
どっちがどっちか分かるのはもう本人くらいではないか…?と周りは思う。
しかし、双子の驚きようからは一度も間違える事はなかったらしい。
「すごいや!!」
「ママだって、たまに間違えるのに!」
「いえ、でも、さすがにどんな時でも見分けられる自信はありませんけど…」
一瞬見た姿で見分けろとか言われても無理だろう。
なにしろ、ぱっと見は本当にそっくりなのだ。
としても何処が違うと言われればなんと答えていいか分からない。
本当に、纏う雰囲気が違うとしか言いようがない。
「じゃあ、僕はもう行きますから…」
食事も終わったことだし、立ち上がる。
ネビルに行こうと促す。
頷くネビルも立ち上がりと一緒に行こうとする。
「!絶対にムーニーを今度紹介してくれよ!」
「しつこいですよ!ジョージ先輩!」
「いいだろ?減るものじゃないし!」
しつこく言うジョージ。
は顔を顰める。
確かに減るものではないし、リーマスとしても学生時代のことを話すのは別に嫌じゃないだろう。
それになにより、来年になればリーマスはホグワーツに来ることになる。
それならば、紹介しても構わないかもしれない。
「…しょうがないですね、すぐには無理ですよ?クリスマス休暇か今度のイースター休暇でよければ紹介しますよ」
「それで構わないさ」
にこっと笑顔を見せるジョージ。
やけに嬉しそうに微笑む。
ジョージのすぐ隣にいるフレッドは、リーマスを紹介すると言ったのにあまり嬉しそうではなかった。
「やっぱり、ってファーストネームで呼ぶ相手には優しいんだね」
ぽつりとつぶやくフレッド。
きょとんっとする。
同じようなことをハリーにも言われたことがある。
「そう…ですか?」
「そうだよ。なんでジョージだけファーストネームで呼ぶんだい?」
「何故って…。弱みを握られているから?」
「だね。にファーストネームを呼んで欲しかったら弱みを握るといいのさ!相棒!」
「ちょっ!ジョージ先輩!そういうことを勧めないで下さいよ!」
「慌てるってことは、握られたらこまる弱みでもあるのかい??」
「う…」
これでは「ある」と言っているようなものである。
確かにには、隠し事が沢山ある。
知られたくないような隠し事が…。
「そのの反応からだと、弱みは沢山ありそうだね…。ということは僕にもチャンスはあるってことかい?」
「何でそういう方向に行くんですか!」
「だって、ジョージだけじゃ不公平だろ?だからと言って、は弱みがないとファーストネームで呼んでくれそうもないしね」
「頑張れ相棒!応援するぞ!」
「応援しないで下さい!ジョージ先輩!」
俄然張り切りを見せるフレッド。
それを応援するジョージ。
は思った。
いくら急いでいたからって、あの時ジョージ先輩をファーストネームで呼ばなければよかったよ…。
この双子の追跡をかわせる自信……全然ないんだけど…。
新たな苦労が増えそうなであった。