秘密の部屋編 14
部屋に戻ったを待ち構えていたのは、ハリーとロンとヴォルと…そして何か申し訳なさそうにを見るネビル。
最初に口を開いたのはヴォルだった。
「で?俺はこいつらにどこまで話していいんだ?」
え…と?
何ゆえこんなことになっているのでしょうか?
「ヴォルさん、しゃべっていいの?」
「今更普通の猫の振りしてどうする。ロングボトムは知っているだろ、それにウィーズリーとポッターの前ではもう魔法まで使ったからな」
そう、ヴォルはを守るために魔法を使った。
杖なしで。
しかも猫の姿のままで。
それが魔法界でも珍しいことだとはにも分かる。
「え…と。…というわけで、ヴォルさんはしゃべれる上に魔法も使えるけど気にしないでね」
ひょいっとヴォルを抱き上げて、その言葉だけで終わらせようとする。
勿論、納得などするはずがないのはハリーとロン。
「猫がしゃべれるのはアニメーガスかもしれないからともかく、猫が魔法を使えるなんて僕聞いたことないよ?」
「って、魔法族のロンが言ってるんだけど、どういうことなのかな?。」
にっこり微笑むハリー。
こ、怖いんですけど…。
「ええっと。だから、ヴォルさんは特別で……」
「ネビルが言うには、アニメーガスなんだって?」
ちらっとがネビルに目を向ければ、「ご、ごめんね…」と小声で謝るネビル。
まぁ、こんな状態のハリーに質問されれば答えざるを得ないだろうが…。
「ポッター君。でもね、いくらアニメーガスでも杖なしでは魔法使えないでしょ?だからヴォルさんは正確にはアニメーガスじゃないんだけど…」
「そう、それなんだよね。杖も使わずに魔法を使えるなんておかしいよ、その猫」
「そうだよ、ハリーの言う通りだ。絶対おかしいよ、その猫!」
ヴォルを指差すハリーとロン。
そんな二人の様子にから少しずつ表情が消えていく。
ヴォルを睨むハリーとロンはのその様子に気付かない。
「たかが猫ごときに助けられたなんて認めるのは自分のプライドが許さないから、俺をおかしいと言うのか?お前らは…」
ああ言われて黙っているヴォルではない。
とんっとの腕から抜け出し、すっと二人を見上げるヴォル。
見下ろしているのはハリーとロンのはずなのに、ヴォルの雰囲気からそんな様子には見えなくなる。
「下らないプライドだな…。その程度の力で何を言う?半人前の魔法使いが…」
「なんだと!」
「ロン!!」
掴みかかろうとするロンをとめるハリー。
ロンは顔を真っ赤にして怒っている。
でも、ロンを止めながらもハリーも怒っている。
「僕達は確かに半人前だよ。だって、まだ魔法を覚え始めたばかりだからね」
「まだホグワーツの2年だからというのが言い訳か?少なくとも俺がお前らの年の頃はまだましだったぞ…」
「君と僕が同じ年だった頃?猫の君と僕が…?」
「俺が本当に猫だと思っているのか?…ならば見せてやろうか?俺の…」
ヴォルの言葉にはっとなる。
慌てて、それを遮る。
「ヴォルさん駄目だってば!」
ひょいっとヴォルを掬い上げるように抱きしめる。
ヴォルの人の姿をハリー達に見せるわけにはいかない。
「…?」
「ごめんね、悪いんだけど人の姿はまだ駄目」
「何でだ?」
「あとで話すよ」
今年起きるだろうことを…。
何故なら、今年の事件はヴォルにも少なからず関係していることだから…。
話を聞く権利はあるかもしれないと思う。
「ごめんね、ポッター君、ウィーズリー君。ヴォルさんが気に触るようなこと言っちゃって…」
「が謝ることなんてないよ。だって、おかしいのはその猫だよ!」
「ヴォルさんのことを悪く言わないで」
すっとはハリーを真直ぐに見る。
いくらハリーでも、何も事情を知らなくても、そんな風に言う権利はない。
そんなことを言わないで欲しい。
「なんだよ、それ!自分のペットが可愛いからって、その猫を庇うことはないだろ?そいつは僕らを侮辱したんだぞ!」
「うん、ごめんね、ウィーズリー君」
「だから、何で君が謝るんだ!しゃべれるならその猫に謝らせればいいだろ!」
「だって、ヴォルさんは謝らないから」
「ああ、俺は何も間違ったことを言ったつもりはない」
「なんだって?!」
ロンはさらに顔を赤くする。
けれど、ハリーはロンを諌める。
「ロン、よそう」
「何言ってるんだよハリー!君は悔しくないのか?!」
「悔しいけど。こんなところで争ってもなにもいいことなんかないよ」
「…そう、だけど」
ハリーはをちらっと見てから、ロンと自分のベッドの方に向かった。
の方を全く見ようとせずに。
部屋の中は気まずい雰囲気に包まれる。
は苦笑するしかなかった。
夜中、ハリーもロンもネビルも寝静まった頃、とヴォルはまだ起きていた。
はベッドの上で上半身を起こしている。
ヴォルは人の姿に変わっていて、のベッドに腰掛けている。
「ヴォルさん、今日のはちょっと言いすぎだったよ?」
「事実を言ったまでだ。去年ヴォルデモートを退けたことで少し浮わついているんだよ、あいつらは…。自分達の力を買いかぶりすぎだ、だから今回のようなことになる」
「もしかして、ハリーとロンのこと、心配してるの?」
ヴォルの顔を覗き込むように言う。
ヴォルはの肩を掴み、そのまま力任せに押し倒した。
わっ…と小さな声で驚く。
「俺が心配なのは…、お前だけだ」
ヴォルはの顔の両側に丁度挟むように両手をつく。
を上から見る形になる。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、ヴォルさん。私には「時の代行者」としての力があるしね」
「あのな…、お前も自分の力を過信しすぎだ。もっと慎重に行動しろ」
「そんなことないよ。ちゃんと自分の限界は分かってるつもり。でも、駄目かもしれなくても動かなきゃならない時があるから……」
「その時は、俺が力を貸す。だから、言えよ」
「ヴォルさん?」
不思議そうにヴォルを見上げる。
ヴォルの表情は真剣そのものだ。
しかし、その表情はこの明かりのない薄暗い部屋の中でははっきりと見えない。
にこの時のヴォルの表情が見えていれば、どれだけヴォルがを心配しているかわかったかもしれない。
「何かある時は、絶対俺を呼べよ」
「何かある時って、例えばバジリスクに襲われそうになった時…とか?」
冗談めかして答える。
暗がりで見えなかったが、一瞬ヴォルの表情がこわばった。
「ヴォルさん、今年は記憶のリドルが動いて秘密の部屋が開かれるよ」
「それで、バジリスク…か」
「うん。でも、命の犠牲はでない、皆助かる。だから、私は犠牲を出さない為に見守って…何か起きれば動くよ」
「それで、どうなればいい?の知る未来はどうなる?」
「最後に、リドルはハリーによって消滅させられる。まぁ、全ての元凶はルシウスさんなんだけど…」
そこでふと思い出す。
ルシウスと会った時に感じた嫌な予感。
もしかしたら…。
「もしかしたら、ルシウスさんは私の知らない何かの行動を起こすのかもしれない…。だって、今日ルシウスがホグワーツにいるなんておかしいもん」
「いたのか?ルシウスが…」
「あ、うん。校長室の前で会って、屋敷しもべを探しにきたとか、マルフォイ君に渡すものがあったからとからしいんだけど…」
「ルシウスの用はそれだけだったのか?」
「うん。私の知る限りは…」
ヴォルはヴォルデモートだった頃、ルシウスとはよく面識があった。
ルシウスの性格はそれなりに知っている。
彼はデス・イーターの中でも頭の切れるやつだったから…。
「ルシウスがその程度の用でホグワーツに来るなんて、おかしいな…」
「私もそう思う」
「アイツは無駄を嫌う、…そして誰よりも狡猾だ。まさにスリザリンらしいが…、それだけに油断はできない。まさか、このホグワーツに気に入った相手でもいるわけでもないだろうし…」
「え…?」
ぎくりっとなる。
ダンブルドア曰く、はルシウスに気に入られたらしいのだが…。
「アイツは気に入ったヤツができると、試そうとする。自分に相応しいか…とな。あんなのに気に入られる相手にとっては迷惑きわまりないだろうがな」
「試すって?」
「詳しくは知らないが、相手の命に関わるようなことも平気でやるからな。まぁ、それを乗り越えた相手は今のところいないと聞いているが…」
「へ、へぇ…」
「それで、まさかとは思うが」
「いや、それはないよ!!だって、ルシウスさんと会ったのは2回だけだし!」
「2回?」
「教科書買いに行った時に、ノクターン横丁でばったり…」
「…それだな」
はぁ〜と思いっきりため息をつくヴォル。
に興味を持つ気持ちは分からないでもないヴォルだが…。
「一般生徒が、夜の闇横丁で、しかも1人で平然としていたら誰でも興味は持つだろう?」
「で、でも、私は自分がマグル出身だって言ったよ?ルシウスさん純血主義でしょ?」
「アイツが仕えている主は純血か?」
ルシウスの主はヴォルデモート。
ヴォルデモートはマグルと魔女の間に生まれた子供。
リドルの日記を持っていたルシウスがそれを知らないはずがない。
「…違う、ね」
「あいつは確かに『混血』を見下す。何故なら『混血』には優秀なものが少ないからだ」
「で、でも!私は魔法使いでもないし!もしかしたら、ルシウスさんには嫌われているかもしれないし!」
「…だといいがな」
って、ヴォルさん、そういう事は早く言ってよ!!
本当にに気に入られていたら、それはつまり……。