秘密の部屋編 10






教科書は一応買った。
そして、力をつかって移動させてしまった。
教科書代が思ったよりかからなくて…というよりハリーからもらったのでただ同然であるが・・・ほっと一安心である。
帰りは暖炉を使いたくないと思ったは公共の交通手段で帰る事にした。
それはいいが、魔法界の地理についてはかなり疎いである。
もしかしなくても思いっきり迷っていた
今いる場所に人家がいくつか見られるのが幸いである。
どこかの家に駆け込み道を聞けばいいのだが…、いかにせん立ち並ぶ家が豪華すぎた。
遅くなればまたあの時の二の舞になりかねない。
今度こそはリーマスもそう簡単に許してはくれないだろう。
意を決してとりあえず近くの…この辺りでは一番豪華と思われる屋敷に向かう。


「こんなところで、何をしてる?」
うわ!


突然背後から声を掛けられて驚く
ゆっくり振り返ってみれば、そこには先ほど本屋で別れたばかりのルシウス。
それから、珍しい組み合わせとでもいうのか…セブルスも一緒だった。

「ルシウスさんに、教授…?何でこんなところに…?」
「それは私のほうの台詞だが?何をしているんだ…?」
「もしかして迷ったのか?

セブルスの問いにへらっと笑みを浮かべ

「はい。思いっきり迷いました。

正直に言う。
呆れる表情をするルシウスとセブルス。

「暖炉から帰れば迷うわけないだろう…。何故暖炉から……、ああ、そうか…

言いかけて1人で納得するルシウス。
ノクターン横丁でが間違えてあの店に来てしまったことを思い出したのだろう。

「それなら我輩が送ろう」
「教授が?意外ですね…、どういう風の吹き回しですか?」
「いやなら、ここで一生迷っているか?
送ってください

ひょこひょこ歩きながらセブルスの方に近づく
セブルスはルシウスの方をちらっと見る。
ルシウスは何も言わずにをじっと見ていた。

「ルシウス先輩は、と知り合いなのですか?」
「いや…、知り合いというか…今日ノクターン横丁で会っただけだ」
ノクターン横丁?!貴様、なんでそんなところに…!」

後半の台詞はに向けてのものだ。
その問いをにっこりと笑みで誤魔化す

「それは内緒ですよ、教授」
「相変わらず貴様は隠し事が多いようだな……」
「ほぉ…、隠し事か……興味あるな…。

は自分をみてくるルシウスを真直ぐ見返す。
ルシウスの瞳には興味深いというような感情が浮かんでいた。

「たいした事じゃありませんよ。…さ、行きましょう、教授」

さっさと動こうとセブルスを急かす
くいっセブルスのローブを引っ張る。
ルシウスはから視線を外さない。
ため息をつくセブルスは軽くルシウスに頭を下げ、を連れて行こうとする。


「…


ルシウスに呼ばれふっと振り返る

「何です?」

ルシウスに視線を向ける。
何か言いたいことでもあるのだろうか。

気付いていただろう?言ったのか?」
「いえ…。別にあれは僕が関与することじゃありませんから…」

ルシウスの言いたい事はおそらくあの日記のことだろう。
日記をジニーの鍋に入れたのをは気付いていた。
がジニーにそのことを言ってしまえば、ルシウスがこっそりジニーの鍋に日記をいれたことも台無しである。

「私がしたことを怪しまないのか?」
「怪しむべき…なんでしょうけどね…。大丈夫ですよ、僕は邪魔しません。近いうちにコトはおきますよ」

にこっと笑みを浮かべたにルシウスは驚く。
セブルスには会話の意味がよく分からない。
眉間にシワを寄せて黙っているだけだ。

「まさか知っているとは思わないが…。あれが何なのか分かっているのか…?」
「さぁ…どうでしょうね……。でも、僕は命の犠牲は出させませんよ
「その様子だと知っているようだな…。何故止めない?」
「それは僕にとっては止める必要がないからですよ。ルシウスさん」
「……そうか」

それに満足したのか、ルシウスはそのまま振り返りもせずに歩き出した。
が先ほど尋ねようとしていた屋敷に入っていく。
…ここってマルフォイ家だったんだね。
さすが有名な純血の家だ…。


「行くぞ、
「あ、はい!」

歩き出したセブルスに慌ててついていく
ここで置いていかれては困る。
本当に困るのだから…。





着いた先は、何故かセブルスの家だったりした。
複雑な道を行ったのでどこをどう来たのかさっぱり分からなかった

「そこに座れ」

通されたのは居間らしき部屋。
セブルスの家もマルフォイ家ほどでないにせよ、それなりの屋敷だった。
ふかふかのソファーにゆっくり座る

「腕を出せ」
へ……?
「腕を出せと言っている」

顔を顰める
なかなか腕を差し出さないにセブルスはの腕を自分で引っ張る。

わっ?!教授?!」

驚くを気にせずに、セブルスはの袖捲り上げる。
の腕があらわになり、そこには血を滲ませたかすり傷がいくつかある。
血は流れず、打撲した部分もあるらしく黒ずんでいる場所もあった。

「貴様はどうしてこう、傷を放っておくんだ!」
「はは…、すみません。ちゃんと家に帰ったらやろうと思ってたんですけど…」
それは本当か?
う…

言葉に詰まる
のことだから、リーマスやヴォルに心配掛けまいとそのまま放って置きそうな気がするのだ。
かすり傷とただの打撲だし、いいか…と思いながら。

「どこでこんな怪我をした?」
「はぁ…、ちょっと書店で派手に転びまして…」

本の山に突っ込んだ時に出来たものだ。
とりあえず、この右腕意外はたいした傷はない。
無意識に右腕だけで体を庇った為だ。

「貴様は自分に魔法が効かない事を本当に分かってるのか?」
「分かってますよ…」
「とてもではないが信じられん
「仕方ないじゃないですか…。やむを得ない時もあるんですよ」
「つまり、今回のこの怪我はやむを得ない事態だったいうのか?」
勿論です」

きっぱり言い切る
あの場でジニーの鍋に日記を忍ばせてもらわなくては、話が進まない。
にとってはやむを得ない事態だったのだが…。

「書店で転んだことの何処が「やむを得ない事態」だ。自分で気をつけていれば怪我などしなかっただろうが…」
「はは…。ごもっともです……」
「これからは気をつけろ。…と言っても無駄になりそうだな……、終わったぞ」

綺麗に包帯を巻き終わる。
薬をつけるときも丁寧にやってくれたセブルス。
怪我人を決して乱暴には扱わず優しくするところがセブルスらしい。

「さて…行くぞ」
「どこへ…?」
「貴様はもう忘れたのか?帰るのだろう?」
「あ、はい。そうでした」
「…ルーピンに心配掛けたくないのだろう?」
「確かにそれはありますけど…」

どちらかといえば、遅く帰ったときのリーマスとヴォルさんの反応が怖いから…?
とは口に出さない
遅く帰ったあの日からあまり日が経っていないのにも関わらず同じことをしようものならどうなるか…。
考えただけでも恐ろしいものである。


は無事にセブルスに送ってもらい、ヴォルやリーマスが帰宅する前になんとか家に着いた。
大人しく残りの宿題に取り掛かる。
残りの量はそう多くはないのだが…。
とりあえず、怪我を見つからないようにこっそり力をつかって治して、また宿題に取り掛かるのだった。