秘密の部屋編 8
ボージンは店の奥の方に行ってしまった。
がマグル出身だとしってもボージンは比較的友好的だ。
純血主義の魔法使いにしては珍しい。
やはり店主としての性なのか、お客をぞんざいには出来ないからなのか。
それとも、純血だろうがなんだろうが貴重なお客は大切に扱うということなのか。
は貴重な薬草やモノを持ってきてくれる大切なお客なのだから…。
適当に中を見ていって構わないと言われたので、はきょろきょろ見渡す。
しんっとしている店の中、1人でいると結構不気味だ。
こうやってこの店をじっくり見るのは初めてだったりする。
いかにも闇の魔法のグッズだ!と思われるようなものが多い。
「不気味なものばかりだね…」
とりあえず、気の済む程度には店内を見たので改めてダイアゴン横丁に向かおうとする。
がたんっ
物音がしてはっと振り返る。
ボージンかと思ったが、そこにいたのはと同じく煤と埃まみれになっていたハリーだった。
「ポッター…君?」
「…」
はきょとんっとした様子でハリーを見る。
そういえば…と思いだす。
確か、ハリーはフルーパウダーで上手くダイアゴン横丁にいけなくて、このノクターン横丁にでるというのを…。
まさか偶然にも同じ日にも同じことになるとは思わなかった。
「もしかして、ポッター君も僕と同じだったりする…?」
「あ、うん…」
「行き先言う時咳き込んだ?」
「…うん」
やはり、初めてフルーパウダーを使うものの運命らしい。
咳き込んで…よくこのノクターン横丁にたどり着くという。
「ダイアゴン横丁には買い物に?」
「そうだよ。ロン達も一緒に来てるはずなんだ。…はやく合流しないと」
「じゃあ、行こう」
は店の出口に向かう。
ハリーもその後をついていく。
何かに言いたそうな表情をしていたが。
ノクターン横丁を歩く少年二人。
向かっている先はダイアゴン横丁である。
「ねぇ、…」
「何?」
は振り向かずに歩き続ける。
きょろきょろ見回して、次はこっち…と歩いていく。
「って誰なの…?」
ぴたりっと歩みをとめる。
ゆっくり後ろを振り返りハリーをまっすぐ見る。
「どういう意味か分からないんだけど。僕は僕だよ、ポッター君」
「だって、考えてみれば僕はのこと何も知らないような気がするんだ…。さっきはマルフォイとかマルフォイの父親と仲良く話していたし…」
「聞いてたんだね。…仲良くっていうのちょっと語弊がある気がするけど…」
「でも、僕には分からないことばかりだ。1年の時、何ではあの時あそこにいたのかとか、ロンたちがこの間僕をダーズリーのところから迎えに来てくれたときなんで一緒にいたのかとか…」
「この間、ウィーズリー君たちと一緒にいたのはたまたまだよ、本当に偶然」
買い物に出かけた先で会っただけ。
それで、つき合わされたというか付き合ってしまったというか巻き込まれたというか…。
「僕はポッター君の敵じゃないよ、って前に言ったよね」
「うん」
「それだけで信じてもらうのは虫が良すぎるかもしれし、この先ポッター君が僕のこと信じられなくなることもあるかもしれない」
「そんなことないよ!僕は、友達を信じる!」
「ありがとう…。だけどね、僕にはダンブルドアにも話せないような隠し事があるから…。あまり、深く聞かないでいてくれるとありがたいんだよね」
「ダンブルドアにも?」
「うん、ある程度はダンブルドアも知っているんだけどね」
苦笑する。
ハリーにはは一生話すつもりはない。
「時の代行者」のことは…。
そして、誰にも話すつもりはない。
別の世界から来たことは…。
「じゃあ、から話してくれることはないんだね」
「うん、ごめんね」
「ううん。別にいいよ!でも、僕が勝手に調べるくらいはいいんでしょ?」
「あ、うん。別に構わないけど…」
調べても分かるようなことでもないし。
「絶対にの隠し事、見つけてみせるよ!!まずは、に僕のことファーストネームで呼ばせるのが目標だけどね!」
「うっ…!」
「ジョージはの弱みを握れば簡単だって言ったけど、ネビルみたいな例もあるし…。僕は僕のやり方でにファーストネームを呼ばせてみせるからね!」
「いや、そんな、張り切らなくてもいいんだけど…」
なんで、そんなに張り切るんだろう。
妙にハリーも自分に拘っている気がする。
「なんでそんなに拘るのかな。僕にファーストネームを呼ばれたからって何があるわけでもないのに…」
「、本当にそう思ってるの?」
「え?何で?だって、別に何も変わらないでしょ?」
ファミリーネームをからファーストネーム呼びに変わったところでの態度が変わるわけでもないと思うが…。
しかし、ハリーはそうは思っていないようで…。
「にファーストネームを呼ばれると、それだけに近づいたって事じゃないか。だって、去年はネビルだけに妙に親しげだったし…」
「え?そうだった?」
「うん。ネビルが実験で失敗しても笑顔でフォローしてたし、ネビルがスネイプに睨まれた時も庇ってたし…、急いでいてもネビルが呼び止めれば笑顔で答えていたし…」
「そ、そんなにあからさまだったかな?」
自分では意識していなかったが…、どうやらネビルをファーストネームで呼んでいるうちに身内扱いをしていたらしい。
身内に入れば、どうあっても甘くなってしまう。
「だって、僕が呼び止めても急いでいる時は、は立ち止まってくれなかったし、僕がスネイプに嫌味言われても何もしようとしないし!」
「そこまで態度が違うと普通は嫌うもんじゃないかな?」
「でも!は優しいから!ハロウィンでも僕達を助けてくれたし!ヴォルデモートと対峙した時も最後は助けてくれたみたいだし!」
「ヴォルデモートとの時の事は、僕は何もしてないし…。それに、友達なら友達のことを心配するのは当たり前だし、友達が危険なら助けに行くのが当然でしょ?」
「分かっていてもそれができる友達って少ないと思うんだ!それができるだから皆の本当の友達になりたいんだよ!」
困っていれば迷わず手を差し伸べる。
危険な目に合っていれば、自分が危険にさらされるとしても駆けつけ、助ける。
それが出来るひとは少ない。
でも、私が危なくても駆けつけるのは大丈夫だからって分かってるからで…。
ネビルが困っているのを助けているのは、多分弟が出来たみたいな感じだからなんだと思うけど…。
だって、同学年の子たちは皆年下だし…。
「うん。まぁ、僕にそれをとめる権利はないけど…」
「いいよ。僕が勝手にやることだからね」
にこっと笑みをみせるハリー。
その笑みが微妙にリリーの笑みと重なったのは気のせいにしておこう。
「ハリー!お前さんこんなところで何しちょる?!!」
突然大きな声が響いた。
声の方をみればハグリッドがずんずんっとこちらに向かってくる。
「あ、ハグリッド」
「こんなところにいてはいかん!」
ハグリッドはハリーローブについた汚れを払う。
ハリーの手をがしっと掴み、この場からすぐに立ち去ろうとする。
慌てたのハリー。
「待って、ハグリッド!もいるんだよ!」
「…?」
ハグリッドは初めてに気付いたように視線を向ける。
はこうやってハグリッドと面と向かうのは初めてかもしれない。
入学当初、ヴォルを池に投げつけたことであまり良く思われていなかったらしいので、ハグリッドとの交流はない。
「お前さんが、・か…」
「僕のことはいいですから、ポッター君をダイアゴン横丁まで連れて行ってください」
「でも、」
「僕はここには良く来てますから迷うことはありませんよ、ご心配なく」
「よく?目的は闇の魔法か?」
「さぁ?」
「ダンブルドアはお前さんを信用して守ろうとしているようだが、俺はそこまで信じられん。ハリーにはなるべく近寄らないでもらいたい」
「ハグリッド!!」
「ハリー、お前さんは闇と関わりを持つような魔法使いと関わってはいかん」
「ハグリッド!違うよ!は…!」
を庇うハリーの言葉を無視してハグリッドはハリーをつれてずんずん歩き出した。
引きずられるように連れて行かれるハリー。
ハリーはちらちらっとの方を気にしていたが、ハグリッドの力には敵わずに引きずらていった。
「闇の魔法…か、確かに興味はあるけど」
ふぅっとため息をつく。
ハリーの敵にはまわらないと思う。
でも、のことがヴォルデモートにばれれば、いずれはも狙われるのだ。
むしろハリーより危険かもしれない。
そんな時、ハグリッドのようによりもハリーを優先してくれるような人がいてくれるのは心強いことだと思う。
ハリーを今より、危険な目にあわさないためには、自分の近くにはいない方がいいのだから…。