秘密の部屋編 5
セブルスはの姿に目をとめると、の前に立つ。
は驚いたまま、セブルスを見る。
「」
「は、はい!」
「帰るぞ」
………。
「…はい?」
首を傾げる。
何故、教授と一緒に帰るだろう…?
動かないにセブルスはさらに眉間のシワを増やす。
「手紙を受け取っていないのか?」
「いえ…。先程ちゃんと受け取りましたけど……」
「迎えがくると書いてあっただろう?」
「はい、確かに書いてありましたが……」
手紙に「迎えをやるから、すぐ帰って来るんだよ」と、リーマスの黒笑みが思い浮かびそうな文が書いてあった。
なので、リーマス自身かヴォルあたりが来ると思っていたのだが…。
「何で教授が…?」
「悪いかね?」
「いえ、別に悪くないですけど……」
「やつに薬を届けてやったら、頼まれただけだ」
つまりは脅されたんですね、教授。
頼まれただけで動くようなセブルスではない。
それに相手はリーマスなのだから…。
「お手を煩わしてすみません」
「全くだ。…帰るぞ」
ふぅっと軽くため息をつきながらは外にでようとするセブルスについていく。
セブルスは睨むようにたっているハリー達に目を止め、
「もう課題は終わっているのか?ポッターにウィーズリー。我輩の出した課題はそう簡単なものではなかったが…」
「嫌味はいいですから、とっとと行きましょう、教授。大体、あの課題の量は嫌がらせ以外の何ものでもないですよ。採点する教授が大変になるだけですから、今後はもっと簡単なのにしてくださいね」
「………。」
「言いたい事は後にしましょう。急がないと教授も彼に怒られるんじゃないんですか?」
「………………………そうだな」
少しの沈黙の後、セブルスはの言葉に頷く。
やはり、セブルスもリーマスには勝てないのだろう。
「……それでは、失礼する」
セブルスは小さな声で言い、は軽く会釈して外に出て行った。
ハリー達はセブルスを睨み続けていたが、何が変わるものでもない。
はぁ〜と深いため息をつきながらも、ウィーズリー家を後にしただった。
「おかえり、。随分遅かったねv」
にっこり満面笑顔で出迎えてくれたリーマス。
笑顔の裏に隠しきれない黒いオーラが見えて、思わずはセブルスの後ろに隠れる。
ヴォルは何故か黒猫の姿になっていて、の足元に擦り寄ってくる。
しかし、見上げてくる瞳は怒っているようだ。
「た、た、ただいま…。リーマス……。」
引きつりながらも笑みを浮かべている。
はっきり言って、このリーマスの笑顔はリリーの黒笑みの比ではないくらい怖い。
「は送り届けたから、我輩は帰るぞ」
「え?!待ってください!教授!!」
帰ろうとするセブルスのローブにしがみつく。
このまま、1人で残されてはたまったものではない。
「何だね…」
「帰らないで下さい!」
「何故、我輩が用もないのにこんなとこにいなければならない?」
「教授〜、見捨てないで下さいよ〜!」
「自業自得だろう」
「そんなことは分かってます!でも、怖いものは怖いんです!」
「我輩を巻き込むな!」
「巻き込まれてください!リーマスの相手なんて学生時代で散々慣れてるから大丈夫でしょう?!」
「誰が慣れているか!」
何より、セブルスがいればリーマスだけの相手で済むのだ。
ヴォルは黒猫の姿のままでいてくれるだろう。
セブルスはヴォルが人の姿になれることを知らないのだから…。
「何を言っているのかな?二人とも。」
とセブルスの会話を遮るようにリーマスが言葉を挟む。
さらに笑みが深くなっている。
めちゃくちゃ怖いって、リーマス…。
「と、とにかく、我輩は帰る!」
ばっとの手を振り払い、セブルスはさっさと出て行く。
追いかけようとしただが、セブルスは姿現わしを使って移動してしまいもう姿はそこになかった。
教授の薄情者〜〜〜!!
心の中で叫んでもセブルスは戻ってこない。
となると、一人で、リーマスの相手をしなければならないわけで…。
は恐る恐るリーマスを見る。
相変わらずの笑みを浮かべたままである。
「えっと……。ごめん…なさい、リーマス」
「それで?」
「二度とこんな事は致しません。…………多分」
「多分?」
「だって…先のことは分からないし……」
「?」
「ご、ごめんなさい!」
びくびくしながらちらっとリーマスを見る。
リーマスは深いため息をつき、穏やかな笑みを見せる。
「しょうがないね…。大目に見るのは今回だけだよ、何もなかったから良かったけど…」
「ほんと?」
「今回だけね」
「うん、ありがとう」
ほっとする。
しかし、世の中そんなに甘くはない。
「まぁ、私は今回だけ大目に見るって言ったけど…。彼はどうか分からないよ?」
「へ……?」
くすっと笑うリーマスに、間抜けな声をあげる。
足元を見てみれば、黒猫は見当たらず。
後ろを振り向こうとしたは、ひょいっと誰かに抱え上げられる。
「わっ…?!何?!」
驚いたを抱きかかえたのは、人の姿になったヴォル。
むっとした表情のまま2階の自分の部屋へと向かう。
「ちょっと、ヴォルさん?!何?!何で?!」
「を泣かせることだけはしないようにね」
「分かってる」
「…って、リーマス。見てないで止めてよ〜!」
「頑張ってね、」
「がんばってじゃないってば!」
ヴォルに連れられていくをにこやかに見守るリーマス。
とりあえず、今回はヴォルを信用しているようだ。
は鈍いようだし、ヴォルも気持ちを自覚したばかりのようだから間違いは起こらないだろう。
「それに、が女の子だって知っている人が少ないから、ライバルもいないだろうしね」
それが何よりである。
を少女だと知ってそういう気持ちで近づく相手がいれば、嫉妬で何をするか分からないが…。
ヴォルの部屋のベッドにゆっくりと下ろされた。
ちらっとヴォル見上げれば、やはり怒っているような表情。
「あの…。ヴォルさん…?」
「何だ?」
「心配かけて………ごめんね」
「全くだ」
はぁ〜とため息をつくヴォル。
じっとを見つめ
「本当に反省しているのか?」
「……してます」
「それなら、その証拠を見せてもらおうか」
「どうやって?」
ヴォルはをはさむように両手をつく。
はヴォルの動きをそのまま目で追う。
「その前に、その姿を戻せ」
「…あ、うん」
はまだ少年の姿のままだった。
指に嵌めた銀の指輪を外し、ポケットにしまう。
一瞬、ふわっとの周りだけに風が舞う。
少年の姿から元の少女の姿へ…。
「それで…ヴォルさん。何すればいいの…?」
「目、瞑ってろ」
「?うん…」
大人しく目を瞑る。
素直に言うことを聞くに苦笑するヴォルだが、危機感のなさに呆れる。
それでも、心配を掛けられた身としてはこれくらいしてもいいだろうと思う。
ゆっくりとの唇に自分のそれを重ねる。
触れるだけ…、そして少しずつの唇を舐めるようにして開かせる。
しっかりと味わうように、深く口付ける。
がびくっと驚くのが分かった。
ヴォルを押しのけようとするがびくともしない。
どれくらいたったのか、ヴォルはじっくりと味わった後、ようやく唇を開放する。
満足そうなヴォルとは対照的にはぼぅっとしている。
「心配かけた、罰、な」
もう一度、かるくキスを落とす。
の顔がかぁぁぁと、真っ赤に染まる。
2回目でもこういうことは全く慣れない。
「な、な、何…!」
「何って、キス」
「ヴォルさん?!」
「だから、心配掛けた罰。また同じことやったら、今度はもっとディープなのな」
「…っ?!!」
ニヤっと笑みを浮かべるヴォル。
ヴォルとしてはそれでも構わない。
としては、困る。
嫌ではなかった………気がする。
驚きの方が大きくてよく分からなかったが…。