秘密の部屋編 02





結局道に迷いに迷って、プリベット通りに近づいたのはもう日が暮れた頃だった。
お腹すいたと騒ぐ双子に苦笑しながらも、近くの店で軽い食べ物を買って食べる達。
何やっているんだろうな…と思いつつも付き合ってしまう
満腹になったあとは眠くなるのが人間の性というもので…。

次に目が覚めた時には夜中だった。

最初に目が覚めたのは
ばっと体を起こし周りを見回す。
辺りには人気が全くなく、真っ暗だ。

「ウィーズリー先輩!ウィーズリー君も!起きて!もう、夜中だよ!」

人気のないこの時間帯に子供だけで車の中にいるのに、何もなかったのは幸いと言うべきか。
の慌てた声に目が覚める双子とロン。
眠そうに目をこすっている。

?」
「寝てる場合じゃないですって!もう、夜中ですよ!」
「何だって?!」
「いや、丁度いいじゃないか。これなら空を飛んでお姫様を助けられるよ!」
「お姫…様?」

(お姫様って誰?)

達が向かっているのはプリベット通りである。
そこにいる彼らの知り合いと言えば1人しかいない。

「もしかして、ポッター君のこと?」
「「もちろんさ!」」

声をそろえて肯定する双子。

(ハリーが聞いたら怒るだろうな…)

と思いつつも苦笑するしかない

、運転変わるよ」
「こんなに暗いんじゃあ、飛んでも分からないだろ」

は頷き、後ろの座席に移る。
フレッドが運転席に座る。
後部座席には、ロン、ジョージ、の3人。
助手席にハリーを乗せる予定なのだろう。

「行くぞ!」
「落ちるなよ!」
「誰に言ってるんだい?ジョージ」
「もちろん君にさ、フレッド」
「この僕が落ちるようなヘマするとでも?」
「そんなこと思うはずがないだろう?」
「だよな、なんと言っても、僕らは」
「不可能を可能にする伝説の」
「「悪戯仕掛け人なのだから!!」」

楽しそうに笑い合う双子。
その勢いで車を発進させる。
ロンが横で「何が伝説の悪戯仕掛け人だよ…」と呆れていたが。
ふわっと浮遊感が体を襲う。
浮き上がる車。
ビルとビルを下にし、進んでいく。
向かう先は、勿論ハリーのいる場所。





ダーズリー家についてみれば、一つだけ鉄格子のついた部屋が妙に目立つ。
普通の家に見えるが、その鉄格子だけが妙に浮いてる。

「なんで鉄格子なんて」
「あそこに、ポッター君がいるからでしょ?」
「「「何だって?!」」」

に注目する3人。
運転していたフレッドまでもが振り返ってを見る。

「わっ!!ちょっ、ウィーズリー先輩!前!前!」

ふよふよとゆっくり浮き進んでいる車。
運転者であるフレッドが振り向いて慌てる
フレッドがすぐに気付き、ブレーキをかける。

「ロン!お前中を見てハリーがいるか確かめろ!」

フレッドは、格子窓の側ぎりぎりまで車を寄せる。
ロンはドアを開き、身を乗り出して中を覗く。
すると、部屋の中にいる誰かが窓に近づく。

ロン!

窓を開るハリー。
嬉しそうで、かなり驚いた様子でロンを見る。

「ロン、いったいどうやって…え?フレッド、ジョージ、まで?」

鉄格子から見えたハリーの顔色は思ったより健康そうで安心する。
叔母夫婦から酷い扱いを受けている事は知っている。
初対面でのハリーは結構やせてて頼りなさそうな感じも受けたが。

「どうしたんだよ、ハリー。魔法使うなんて」
「何で知ってるの?!」
「僕のパパが魔法省に勤めているんだ。学校の外では魔法を使っちゃいけないって言われてただろ?」

ちらっとハリーが車を見る。
それは魔法じゃないの?とでも言うように。
ロンは苦笑しながら

「これは僕達の魔法じゃないよ。パパのだよ。ハリーは自分で魔法使っちゃったんだろ?」
「違うよ!僕じゃない。それについては後で詳しく…」
「それはいいから、とにかく乗って」
「どうやってだい?」

ハリーは鉄格子を握り締める。
ロンはニヤと笑みを見せてロープを見せる。
ロープを格子にくくりつける。
取れないようにぎゅっときつく縛る。

「ハリー、ちょっと下がってて」

フレッドが車を動かす。
格子の窓の方に背を向け、前進する。
ハリーは少し後ろに下がって待つ。
ギギっと格子が外れようとする音が響く。
ハリーは叔父さんたちに見つかりやしないかと内心ビクビクものである。

ガキッ

格子が窓から外れる音、ロープにぶら下がられる形になる格子がブラブラ揺れている。
フレッドは器用に車を動かし、丁度助手席のドアを窓に近づける。

「ほら、ハリー」
「え?!でも、僕の荷物、箒とか杖とかが」
「どこに?」
「階段の下の物置に、でも鍵が…」

ハリーの部屋にも鍵がかかっている。
しかも、荷物は階段下の物置にあるらしい。
顔を見合わせる双子とロン。

「僕が行って来るよ」

はひょいっと窓からハリーの部屋に侵入する。

「ほら、ポッター君は先に乗ってて。僕が荷物をとってくるから」
「え?でも、鍵が…」
「大丈夫、大丈夫。電子ロックじゃない限り開ける方法はあるからさ」

(ヘアピンとか使ってね)

コツがいるが、結構できるものなのだ。
昔、ヘアピン一本で鍵明けが出来る友達がいて、せがんで教えてもらった。

(うん、懐かしい)

「でも、。荷物沢山あるんだよ?」
「平気平気」

パタパタ手を振る
しかし、車になかなか乗り込もうとしないハリー。
そのハリーにぽんっと手が置かれる。

「僕も行くよ」
「え?いいですよ。ウィーズリー先輩」
「急いだ方がいいだろ?人では多い方がいいさ。フレッド、お前達はすぐに出発できるように準備しててくれ」
「おう!待ってるぞ」

元気に返事をするフレッド。
相棒を信じている証拠である。
ロンは、まだ渋るハリーをなんとか車の中に引きずり込む。
どうしてもついてくる様子のジョージに苦笑をもらす

「騒がないで下さいね、ウィーズリー先輩」
「僕だってこの状況くらい分かってるさ」
「…どうだか」

は扉に近づき、小さく何を呟いてヘアピンを一本手に持つ。
持っていたわけではない、力で取り寄せただけ。
暗がりで側にいたジョージには分からなかっただろうが。

かちりっ

いとも簡単に扉の鍵は開かれる。
隣で感嘆のため息をこぼす。

「凄いな、。今度教えてくれよ」
「いいですよ、授業料は高いですけどね」
「授業料を取るのかい?」
「当たり前ですよ」

苦笑しながら答える
とジョージは足音を立てないように進んでいく。
部屋を出る間際、ハリーが

「一番下の階段に気をつけて。軋むから」

囁くように、それでも聞こえるように注意してくれた。
大丈夫、とにっこり笑みを見せて、ゆっくり階段を下りていく。
足音も立てずというのは、結構ドキドキするものだ。
慎重に、階段下の物置に近づくとジョージだった。