秘密の部屋編 01
はヴォル、リーマスとの同居をそれなりに過ごしていた。
宿題もヴォルとリーマスの手を借り適当に終わらせていた。
「ヴォルさん、リーマス、私ちょっと出かけてくるね」
ひらひらっと手を振り玄関の方に向かう。
その手には小さなバッグ。
服はTシャツにジーパンにスニーカーのマグル風の服装。
「どこへ行くんだ?」
「1人じゃ危ないよ?」
を引き止めるヴォルと、にっこりと微笑むリーマス。
その笑みは完全に脅しの笑みだ。
「大丈夫。ちょっと買い物に行くだけだから」
「俺もついていこうか?」
「いいよ。だって、マグルのお店に行くから」
「1人じゃ危険だよ?は女の子なんだから」
「でも、ヴォルさんもリーマスさんもマグルのお店のことなんて全然知らないでしょ?ついてこられても困るって」
確かに、の言う通りである。
ヴォルとリーマスはマグルのものにまるっきり疎い。
乗り物や、電気で動くものなど使い方がまるっきり分からないだろう。
「あ、そうだ、それなら…」
は銀の指輪を取り出し、右手に嵌める。
小さく何かを呟き…
ふわっ
の姿が変わる。
少女のものから少年のものへと…。
「これならいいでしょ?」
にこっと微笑む。
リーマスはその姿に驚く。
姿を変えるのはかなり高度な魔法。
「、その姿は?」
「あ、うん。私、ホグワーツではこの姿なんだよ」
「その姿って、少年の姿だよね?ということは、男として通っているのかい?」
「うん、そうだけど…」
それが何か?というにため息をつくリーマス。
本来なら少女であるのに少年でいるという危険性が分からないのだろうか…と思う。
「じゃ、とにかく行って来るね」
ひらひらっと手を振り、ヴォルとリーマスの了解の返事も待たずには出て行ってしまった。
危険性もなにも全く考えていないように見えた。
の姿が見えなくなって、リーマスがぽつりっと呟く。
「これじゃあ、君は苦労するよね」
ヴォルは何も言葉を返す事はしなかったが、呆れたような表情をしていた。
そして、ヴォルとリーマスは再び深いため息をつくのであった。
追いかけたいが、マグルの世界など行けば、迷って困るのは自分達であるから追いかけることもできなかった。
*
グリンゴッツで換金して、は街へと繰り出す。
買うのは文具や服など日用品。
あとは調理道具。
大きい荷物は、誰にも見られないようにこっそり力で転移させる。
一年間ホグワーツで過ごしたとはいえ、いまだ慣れないことが多い。
特に羊皮紙に羽ペン。
引っかくわ、滲むわでレポートを書くのにどれだけ苦労したか。
いつかパソコンで打ち込んで提出してやる…とか余計なことを思っているだが、今の時代まだパソコンはそんなに発達していないので無理だろう。
「えっ〜と、文具は買ったよね。うん、いいかな」
うん、と満足そうに頷く。
『狩りの宿』に戻ろうとした時にふと目に留まった、3人組がいた。
まだ少年のようだ。
兄弟のようで、3人とも似たような赤毛である。
何か言い争っているようで、周りから注目を浴びている。
しかし、は彼らに見覚えがあった。
赤毛の双子とその弟。
「ウィーズリー先輩?」
呟いた声は小さかった。
それでも聞こえたらしく、ばっと振り返る3人。
その勢いにぎょっとする。
心の隅で、この姿でよかったとほっとする。
「「「?!」」」
驚いたようにを見る3人。
ウィーズリーの双子とロンである。
「何やっているんですか?こんなところで…」
「何って、こそどうしたんだい?」
「1人なのかい?」
「まぁ、ちょっと買い物を」
仕方なく3人に近づいていく。
自分も注目されてしまうが仕方がない。
しかし、ここで無視などすれば尚目立つだろう。
「それにしても、ウィーズリー先輩たちはどうしてここに?」
彼らは魔法族。
魔法界で過ごしているはずなのに、どうしてマグルの世界にいるのだろう?
「ちょっとこの「フォード・アングリア」がね」
苦笑したロンの指した場所には一台の車。
トルコ石の色の旧式の車。
(これって、もしかしてあの空飛ぶ車?)
まじまじと車を見る。
何の変哲もない古い型の車に見える。
は車と双子&ロンを交互に見る。
(こんな昼真っから堂々と車を運転なんかしてて捕まらないのかな?)
彼らは免許など持ってはいないだろう。
それでよく運転するものだと思うが。
「もしかして、動かなくなったとか?」
「そうみたいだ。このポンコツが…」
苦々しげにいって、軽く車に蹴りを入れるロン。
はひょいっと車の中を覗き込む。
別に壊れているようには見えないが、とて車には詳しくないので分からない。
「そうだ!はマグルの中で暮らしていたんだろ?だったら何か分からない?」
「ええ?!そんなこと言われても…」
期待するようにを見るロンに困るだが、仕方なく車を覗き込む。
鍵はついている。
運転席に座り込んで、エンジンをかけてみる。
すると…
「あれ?」
いとも簡単にエンジンはかかってしまった。
拍子抜けである。
ギアを動かしてアクセルを少し踏み込んでみる。
何の苦もなく車は動いた。
「別に壊れてないみたいだよ?ウィーズリー君」
「え?ほんとうに?」
「うん。ガソリンもちゃんと入ってるみたいだし。動力は魔法使ってるのかと思ったけど普通の車と同じなんだね」
「ガソリン?それって何?」
「え?だって、この車の燃料ってガソリンじゃないの?」
「違うよ。パパが部品とか拾ってきてそのまま組み立てたからマグル式でも動くけど、本来は魔法で動いているんだ」
はじっと車を見る。
言われて見れば、普通の車にはないスイッチみたいなものとか、メーターとかが見られる。
じっと運転席に座り込んでいただが、ロンと双子が車に乗り込んできてぎょっとする。
「丁度いいや、!ハリーの所までは普通に行こう!」
「とりあえず、今は動けばいいし!」
「え?ちょっと待ってくださいよ、ウィーズリー先輩」
「「さぁ!出発!」」
今すぐに運転席から飛び出して逃げようとしても逃げられないだろう。
それに、免許も持っていない彼らに運転させるのは心配だし…。
ふぅっとため息をつく。
「僕は運転あまり上手じゃありませんからね、酔っても知りませんよ?」
「大丈夫さ!」
「僕らが車ごときに酔うわけないだろう?」
それもそうである。
ホグワーツでは、無免許運転など可愛いものだ、というような悪戯を沢山しているのだから。
「道案内、頼みますよ」
はギアを握り締めて動かす。
海外での運転は始めてだ。
それに、車の運転自体が物凄く久しぶり。
(標識とかルールとか違いそうだけど大丈夫かな。ま、でも…なるようになれ、だ!)
思い切ってはアクセルを踏み込む。
イギリスの中、普通の車のように走り抜けるフォード・アングリア。
危なくなりそうな時は分からないように力を使う。
目指すは、プリベット通り4番地。
(無事につけるといいけど…)