賢者の石編 23
はクリスマスでの一件で注目を集めてしまった為、しばらく大人しくしていようと決めた。
どうも、注目を浴びることばかりしてしまっているような気がする。
ハーマイオニーは、クリスマスの一件のことを聞いて、「私も残ればよかったわ!」と後悔していた。
いや、残らなくていいって。
ハリー、ロン、ハーマイオニーはなにやら忙しそうにバタバタしていた。
まだニコラス=フラメルを探しているようだ。
口出しはできないはそれを大変だね〜と眺めていることしか出来なかった。
「あれ?」
ちょうど寮に戻る途中。
何やらネビルとドラコがもめているのが見えた。
なんとも珍しい組み合わせである。
「何やってるの?ネビル。それにしても、マルフォイ君といつの間に友達になったの?」
に気付いた二人が振り向く。
ネビルは嬉しそうに、ドラコは嫌そうに。
とんだ邪魔が入ったとでも思っているのだろう。
「誰と誰が友達だって??僕はこんな穢れた血を友だなんておぞましくて考えられないな」
「穢れた血って、ネビルの両親は二人とも魔法使いのはずだけど?」
最も、今は二人とも入院中の身。
死喰い人(デス・イーター)の魔法によって精神を病んでしまっているからだ。
「べ、別に純血でもこんなマヌケと友だなんて冗談じゃない!」
「まぁ、友達なんて人それぞれ好き好きだしね、口を挟む気はないよ。じゃ、行こうか、ネビル」
ネビルを連れて寮に戻ろうとしただが、せっかくネビルをからかって遊ぼうとしていたドラコとしては面白くない。
は自分で言っていた通り、ネビルとドラコが友達になったとは思っていないかった。
ドラコがネビルにちょっかいをかけようとしていたのだろうと思っていたし、それを知っていた。
だから声をかけたのだ。
「待てよ、」
「何?」
とりあえず、立ち止まる。
はネビルをとんっと叩き、先に行って、と促す。
ネビルは「…」と心配そうに呟いたが、ドラコとを見てやはりドラコが怖いので寮の方に急いで走っていった。
「ロングボトムは薄情だな、君を置いて逃げるなんてな」
「別に逃げたわけじゃないよ、マルフォイ君に関わって無駄な時間過ごしたくなかったんじゃないの?」
「なっ?!お前!この僕にそんなこと言っていいと思ってるのか?!」
「思ってるから言ってるんだけど…」
「僕はマルフォイ家の跡継ぎなんだぞ!!」
「いや、そんなこと今更言われなくても誰でも知っているってば」
は静かに受け答える。
反面ドラコは怒りで顔が真っ赤である。
「父上に言ってお前を魔法界から追い出すことも出来るんだぞ!」
「それ、多分無理だよ」
「なんだと?!お前マルフォイ家の力を知らないな!」
「権力とかいう問題じゃないから」
そのくらいでがホグワーツから追い出されてしまうのならば、最初からホグワーツへの入学許可証はこなかったはずだ。
必要だからはここにいることができる。
本来の年齢も違うというのもあるのにここにいることができるのは、必要があるからだ。
「それにしても、前々から思ってたけどね」
「何だ!」
「マルフォイ君はさ、家名とか寮とか関係ない友達を1人でも作ったほうがいいよ?」
「よけいなお世話だ!!」
「そう言うと思ったけど、やっぱ心から信用できる友人は必要だと思う。でないと、そのうち自分が1人だって気付いて寂しくなっちゃうよ?」
「僕は1人なんかじゃない!!」
ムキになるドラコ。
ドラコの態度は、有名な家の子として生まれた者にありがちな態度だと思う。
たった一人でもいいから、家名や寮など全く関係なく無条件での友人というのを作っておいた方がいいのではないか?
はふぅっとため息をつく。
ドラコは完全に怒りで冷静さが見られない。
ばっと杖をに向ける。
「本当はロングボトムにかけようと思っていた魔法だが、君が実験台になれ!足を縛れ!!」
ドラコの杖から薄い光が飛び出ての足に向かう。
光はの足を取り巻き、何事もなかったかのようにフッと消えた。
は足踏みをして足を動かしてみるが、別に何の変わりもない。
「なっ?!!」
魔法が全く聞かなかったことにドラコは驚く。
かけた魔法は完璧だったはずだ!何故?!!と叫ぶ。
「無闇に人に魔法を向けるのはよくないよ。…でも、今のは忘れてもらうよ、マルフォイ君」
「何を…!」
「僕に魔法が効かなったことが君に知られるのは本位じゃない」
はすっと右手をドラコの額にかざす。
どこから情報が漏れるとも限らない。
『今のことを忘れろ、記憶の彼方に封じ込めろ』
ふっとドラコの目が虚ろになる。
は手を下ろす。
『そのまま寮まで静かに帰ってね、マルフォイ君』
ドラコはの言葉のままに虚ろな目のまま、素直にスリザリンの寮に向かっていった。
マルフォイ家はヴォルデモート派である。
ドラコに僅かでもが怪しいと思わせることを見せるのはよくないだろう。
*
寮に戻ったをネビルは心配そうな表情で待っていた。
「!!大丈夫だった?」
「ん?何が?」
「あの、さっきのマルフォイの…」
「ああ、全然平気だよ。気にしないで、ネビル」
素直な反応が返ってくるからなかなか楽しいし。
とてもからかい甲斐のある面白い子だと思う。
特に返ってくる反応が子供らしくて可愛らしい。
「…大したものじゃないけど、このカエルチョコあげる」
「ありがと、ネビル」
「ううん」
と言って素直に受け取っただが、動くこのカエルチョコは好きではなかった。
まるでカエルの踊り食いするみたいで、口の中で最初はちょろちょろチョコが動くのだ。
ネビルはにカエルチョコを渡すと嬉しそうに部屋に戻っていった。
(どうしようかな、これ。魔法界のお菓子はどうも奇抜なものが多くて好きになれないんだよね。特にこういう類のお菓子は特に)
悩んでいるの目に、丁度談話室に入ってくるハリー達が目に留まる。
はハリーに近づき声をかける。
「ポッター君、カエルチョコ好き?」
「?いきなりどうしたの?」
「いや、これ、もらったんだけど、僕は余り好きじゃないからあげるよ」
ぽんっとハリーの手の中に押し付ける。
ハリーは嬉しそうににお礼を言う。
その隣で、ロンとハーマイオニーが試合に出ない方がいいとかなんとか言っている。
「何でポッター君が試合に出ない方がいいの?」
(怪我でもしているとか?まぁ、それならクィディッチなんかやらない方がいいだろうけど、怪我などしているようには見えないよね)
「聞いて!!今度のハッフルパフとの試合、スネイプが審判やるのよ?!」
「教授が?珍しいね、どういう風の吹き回しなんだろう?」
「スネイプはハリーを狙っているんだ!」
「教授が?!」
狙っているのではなく、その逆だろう。
(教授はハリーを守ろうとしているんだから…)
しかしが口を挟むことではない。
「でも、結局はクィディッチの試合にでるんでしょ?ポッター君は。…ね、ポッター君?あれ?どうしたの?」
カエルチョコの包みをあけ、中のカードを見ていたハリーは驚いた表情をしていた。
不思議に思いは尋ねるが、ハリーはすぐにロンとハーマイオニーを嬉しそうに見る。
「見つけた!!ニコラス=フラメルだよ!!」
ハリーは手に持っていたカードを見せる。
カードはダンブルドアのカードだった。
『ダンブルドア教授は特に、1945年、闇の魔法使いグリンデルバルドを破ったこと、ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見、相棒であるニコラス=フラメルとの錬金術の共同研究などで有名』
と書かれていた。
グリンデルバルドの名前には一瞬反応する。
ヴォルデモートが闇の帝王として現れる以前に現われた闇の魔法使い。
「ちょっと待ってて!」
ハーマイオニーはそのカードを見ると自分の部屋に駆け出していった。
彼女の様子にハリーとロンは驚く。
こんなにはしゃいだ様子のハーマイオニーを初めて見たからだ。
ハーマイオニーは巨大な古い本を抱えて談話室に戻ってきた。
「まさか、この本にのってるだなんて思いもつかなかったわ!!…見て」
ぱらぱらとページをめくる。
そしてあるページで止まり、指で書かれている文を辿っていく。
「あった、これよ!『ニコラス=フラメルは我々の知る限り、唯一賢者の石の創造に成功した者!』」
はそれを聞いて複雑な気持ちになった。
賢者の石の存在を知ってしまったようだ。
ハリー達の口からセブルスが完全に疑われていることが聞こえるが、訂正はしない。
疑われるようなことをする教授も教授だし。
真剣に話し合っている3人をは傍観するだけ。
出来る限り、未来を変えない程度の助言はしよう。
けれど、賢者の石を守りきるのは君達のやるべきこと。