賢者の石編 03
ホグワーツ特急の中、はゆったりと1人で読書中。
その手にある本は教科書だったりする。
別に予習のつもりはないが読んでおくに越したことはないだろう。
本に集中しかけていたの耳にコンパートメントの戸が開く音がした。
「ここ空いてる?あ、!」
(うわ、遭遇率高っ!確率的には絶対に会わないだろうと思っていたのに。だって、ホグワーツ生全員がこの列車に乗るんだよ?
その中の1人と会う確率なんて低いでしょ。大体あの本の登場人物に会える確率も結構低いのに)
「久しぶりだね、ポッター君。どうぞ、僕1人だから」
一応笑顔を作って見せる。
ハリーはの向かいに座る。
彼が一緒と言う事は、このあとはおそらくロンが一緒になるのだろう。
とりあえず、もう一度本に目を落とす。
しかし、話しかけたくてうずうずしているハリーを感じて集中できない。
「ここ空いてる?」
再びコンパートメントの戸が開いて入ってきたのは赤毛の男の子。
ハリーはをちらっと見る。
「ああ、どうぞ」
はハリーの横を指す。
ロンはとハリーをちらっと見て大人しく座る。
「おい、ロン」
赤毛の双子が、コンパートメントの戸から覗き込んでくる。
かの有名な悪戯好きの双子だろう。
「なぁ、僕達、真ん中の車両あたりまで行ってくるよ。リーがでっかいタランチュラを持ってるんだ」
「でっかいタランチュラなんて見ものだぜ!」
「ロンもどうだ?」
「いや、僕は見なくていい。フレッドとジョージで存分に見てきなよ」
双子はハリーの方に目を移し
「ハリー、自己紹介したっけ?」
その言葉にハリーは首を横に振る。
「僕達フレッドとジョージ=ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。じゃ、またあとでな」
「うん、またね」
双子はコンパートメントの戸を閉めて真ん中の車両に向かっていった。
突然来て、突然行った双子。
(本当にそっくりだったよね。まぁ、でも雰囲気で違いはなんとなく分かる気がするけど)
「君、本当にハリー=ポッターなの?」
ロンがハリーを珍しげに見る。
ハリーはちょっと顔を顰めるが頷く。
の方をちらっと見る。
はふぅ、と息をつき、ぱたんっと本を閉じる。
「あ、君は?」
今初めての存在に気付いたように尋ねるロン。
結構その態度は失礼だぞ。
「僕は=。君は?」
「僕はロナルド=ウィーズリー。ロンでいいよ」
「そう。ウィーズリー君、よろしく」
の言葉にロンは顔を顰める。
ロンでいいと言ったのにも関わらず、ファミリーネームで呼ばれたことがちょっと気に入らないようだ。
「ところで、君、本当にあるの?その…」
ロンはハリーに向き直り、ハリーの額を指す。
人を指差すことは良くないことだよ、と言いたくなる。
ハリーは困ったように前髪を掻き分け傷を見せる。
「これが、例のあの人の?」
「うん。でも何にも覚えてないんだ」
「なんにも?」
「そうだな、緑の光がいっぱいだったのを覚えているけど、それだけ」
「うわ〜っ」
ハリーの傷が少し痛々しい。
ロンの『例のあの人』の言葉にぴくりっとヴォルが動いたが、気づかない振りをする。
どうやら、二人だけの話が盛り上がっているようなので再び読書に専念するべく本を開く。
家族の話、ヴォルデモートの話。
途中車内販売でハリーはお菓子を買い、にもすすめたが断った。
ロンがスキャバーズに魔法をかけようとしたところにハーマイオニーが来た。
どうやら、順調に本の内容どおりに進んでいるようである。
は本を読むのが早いほうだと思う。
丁度今読んでいる本が終わる頃に…
「…それじゃあ、君なのか?」
(あれ?また聞き覚えのある声だ)
またコンパートメントの扉が開き、いたのはドラコ+クラッブ&ゴイルだった。
ハリーの方を見れば、ちょうど「そうだよ」と何か肯定したところ。
ドラコの方もに気づいたようだ。
「ああ、君は洋装店にいた」
「=だよ。ドラコ=マルフォイ君」
「僕のことを知っているのか?」
「まぁ、ね。知り合いにルシウス=マルフォイと懇意にしていた人がいてね」
もちろんその知り合いとは、の腕の中にいるヴォルのことである。
間違ってはいない。
懇意にしていた、と過去形なのだから。
「父上の知り合いならば、君の知り合いは、純血で高潔な人なのだろうな」
「さぁ、僕は彼のことを知識では知っていても、知り合って間もないから詳しくは知らないんだ」
(純血どころか混血だけどね。高潔はちょっと違うような気がするけど、ある意味有名人ではあるけどね、誰もが知っている)
「そうか。、それからポッター君。君も間違ったのとは付き合わないことだね」
ドラコはちらりっとロンを見る。
ロンはその視線にむっとする。
「そのあたりは僕が教えてあげよう」
「ご親切にありがとう。でも、間違ったかどうか見分けるのは自分でもできるよ」
「それに関しては、僕もポッター君と同じ意見かな」
すぅっと目を細めはドラコを見る。
の視線にぞっとするドラコ。
「ドラコ=マルフォイ。悪いけど、僕は読書中で静かにして欲しいんだ。用がないなら早く行ってくれないか?それに、君は怖いんだろ?」
「何が…!!!」
「だって、あの時ヴォルさんに怯えていただろ?」
はゆっくりヴォルを撫でる。
笑みを浮かべながら。
ドラコは顔を真っ赤にしながら、怒っているようである。
「だ、誰が!!そんな猫ごときにっ!そんな猫に怯えた覚えはない!名前が似ていただけだ!!」
「誰の名前に?」
は意地悪く尋ねる。
分かっていて聞いているのだ。
ドラコはぐっと押し黙る。
「まさか、ヴォルデモートだなんて言わないよね?ヴォルさんはヴォルデモートに似てないよ?」
(っていうか、似ているも何も欠片とは言え本人何だからね。そっくりさんじゃないし、同姓同名の別人でもない)
「っ…!!」
言い返す言葉もないのか、ドラコは顔を真っ赤にしながらコンパートメントの戸を乱暴にしめて去っていった。
(ちょっと言い過ぎたかな?)
ちょっぴり反省する。
本気で睨んだわけでも挑発したわけでもない、あの手の子供相手には威圧的に接した方が何かと楽だ。
力に弱いだろうから、こちらが上だと見せ付けてやれば絶対にあちらは引く。
相手が11歳の子供だからこそできることだが…。
「き、君も『例のあの人』名前を言った!!」
「ウィーズリー君?」
「よく言えるよね、怖くないの?」
「ううん、全然」
けろっと答える。
的ヴォルデモートは三流悪役というイメージがある。
怖いなどとは思えないし、彼の恐怖の時代を実際体験してみていないのでなんとも言えないのが現状である。
「その猫、ヴォルって言うの?」
ハリーがおずおずと聞いてくる。
「ああ、うん。本名は違うけど、ヴォルって呼び名は本名のアナグラムの省略なんだ」
「へぇ〜」
(素直に感心しているところ悪いけど、ハリー。彼の本名が「トム=マールヴォロ=リドル」でアナグラムが「I am Lord Voldemort」って言ったら、さぞや驚くだろうね)
驚くどころではないだろう。
はにこにこ笑みを浮かべている。
捻くれた性格かもしれない。