SWEET BOX1




SWEET BOX 1






グリフィンドール3年生、友人は同室のリリー・エヴァンスとセフィア・ブラック。
同室の二人は有名だが、はごくごく普通の目立たない少女だった。
茶色い肩までの髪と同色の瞳。
どこにでもいる普通の生徒だと、皆が思っていた。
そうあの時までは…。



、お茶にでもしない?」
「いいお茶請けがあるわよ」

同室の二人、リリーとセフィアが呼びかけてくる。
ここは談話室。
は調べ物の帰りに談話室を通りかかった。
そこにいたのはリリーとセフィアだけではない。
グリフィンドールではかの有名な悪戯仕掛け人たち4人が一緒にいた。

「え、あ、でも…」

できれば彼ら4人とは近づきたくないのだ。
リリーとセフィアならば、彼らに近づいても何も言われない。
しかし、が彼らに近づくとネチネチ嫌味を言われるのだ…彼らのファンに。

「遠慮なんてよくないわよ、
「そうよ、。たまには付き合いなさい。いつも逃げるでしょう?」
「別に逃げてるわけじゃ…」
「じゃあ、いらっしゃい」

女帝リリーのにっこりとした微笑と、有無を言わせずを引っ張るセフィア。
はセフィアの隣に座らせられる。
悪戯仕掛け人4人と向かい合う形で。
目の前にお茶と、クッキーが置かれる。
はちらっと目の前に座る彼らを見る。
彼らはなど気にしない様子で思い思いに話をしている。

(私にどうしろと?!後で色々言われるに決まっているから、この4人には近づきたくないんだよ。リリーとセフィアはみんなに認められているからいいけどさ)

リリーは彼ら悪戯仕掛け人のリーダー的存在であるジェームズと付き合っている。
リリーをいじめようものなら、ジェームズが黙っていないだろう。
それにリリー自身、性格もよく成績もよくそして運動神経もよいのだ。
文句のつけ所が殆どない。
セフィアは、悪戯仕掛け人の中ではもっとも女子生徒に人気があるといわれているシリウスの従兄弟だ。
シリウスとは昔からド突き合う…もとい仲良く話す仲である為に何も言われない。

?お茶さめちゃうよ?」

に話しかけてきたのはピーター。
悪戯仕掛け人の中では一番ぱっとしない子だが、は彼が一番接しやすかった。

「あ、うん。ありがと、ピーター」
「クッキーも美味しいよ?」
「そうだね、もらうよ」

わずかながらピーターに笑顔を見せる。
彼ら悪戯仕掛け人、ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリュー、の4人。
学年首席のジェームズ、次席ではあるものの顔立ちもよく女子生徒に大人気のシリウス、優しげな笑顔とそしてジェームズとシリウスには及ばないものの成績もかなりよいリーマス、成績もどれも普通のものだが…心優しいピーター。

「ピーターはさ…」
「何?」
「よく、あの3人と一緒にいられるよね」

誰も彼も個性の強い集まり。
彼らに付き合っているピーターは本当にすごいと思う。

「…確かに、僕はジェームズたちみたいにすごくないけど」

落ち込んだ様子で言葉を返してきたピーターには慌てた。
そういう意味で言ったのではないのだ。

「違うよ、そうじゃないの。あれだけ個性の強い人達とよく一緒にいられるなって、すごいって思ったの。私だったら、無理だもの。あまり近づきたくないし…」
「近づきたくないって、もしかして、リリー達に誘われても一緒にお茶しなかったのは僕達がいたせい、なの?」

その通りなのだが、肯定もできずは俯いた。
ピーターはごめんねと謝る。
は少し冷めたお茶を口に運ぶ。
楽しそうに笑い合う、リリー、セフィア、ジェームズ、シリウス、リーマス。
はそれを見ながら今度はクッキーを口に運んだ。
そして一口かじり…


「…っ?!」


驚いたように、そのクッキーを見る。

「どうしたの?
「っピーター!」
「な、何?」
「このクッキーどこで買ったか知ってる?!」
「え?何で?」

鬼気迫るものをから感じたピーター。
ちょっぴり怖くて後ずさる。
しかしはそんなことは気にしない。
ぐっと拳を握り締める。

「すっごく美味しいのよ!!これはもう、お父さんにも是非教えたいくらい!」
「お父さんって…」
「ウチのお父さん甘いお菓子にすっごく目がないの!このクッキーは今まで食べた中じゃあ一番美味しい!」

力説する
実はも実の父の影響か、甘いものに目がないのである。
父に連れられいろいろなものを食べいるせいか、タダ甘いだけでは駄目で、舌も肥えている為に美味しいものしか駄目なのだ。
もそのクチである。
甘いものに目がない。

「今日のは、確かリーマスが…」
「リーマス・ルーピンね!」

はばっとリーマスの方を向いいて、ぐぃっとリーマスのローブを引っ張る。

「ね、リーマス!」
「え??どうしたんだい?」

突然話しかけられてびっくりするリーマス。
とはあまり話したことがないリーマス。
いや、それはリーマスだけに限らずジェームズとシリウスにも言えること。
挨拶をすれば返してくれる程度で、話しかけようとしても避けられている節があり、話しかける勇気がリーマスにはなかった。
彼女には嫌われているではないかと、思っていたこともある。

「このクッキー、リーマスが用意したもの?」
「うん、そうだけど?」
「どこのクッキー?少なくともホグズミードでこんな美味しいのはなかったはず!」
「あ、うん。それは僕の両親が送ってきてくれたものだから」

リーマスはの勢いに驚きながらも答える。

「どこのか分かる?」
「えっと…、「ボイリアス」ってお店のだったかな?」

の表情がぱっと明るいものに変わる。
その名前を知っているからだ。

「「ボイリアス」!!そう言えばあそこで限定ものが確か発売されるって聞いた覚えがあるけど、ずっと発売日が分からなくて、予約したくてもできなかったんだよね…」
「発売されたのは確か半月ほど前だよ。今から買うとしてもあと半月はかかるんじゃないかな?結構人気があるみたいだから」
「半月も?!」
「うん。僕の両親もやっと買えたものだって、手紙に書いてあったから」

(くぅぅぅぅ、不覚!まさかあのかの有名な菓子店の「ボイリアス」の限定ものを見逃すなんて…!やっぱり、ホグワーツにいたんじゃあ情報が入らないのが悔しい!)

「半月、半月か…」

遠い目をする
半月は長い。
そう、待つにはかなり長い。
最も、気分の問題だろうが。

「クッキーはこれだけしかないけど、チョコレートならまだあるからあげようか?」
「チョコレート…」
「うん、チョコレートも同時に限定発売されたみたいなんだよ」
「ええ?!チョコレートも?!…くぅ、私としたことがなんたる不覚っ!そんな情報すら知らなかった!」
「どうする?いる?」
「勿論!!」

は両手を合わせお願いするようにリーマスを見る。
好きなお菓子のためならば、なんでもしよう、まさにそんな感じだ。
の勢いにちょっとびっくりしているリーマス。

「そのチョコ部屋にあるんだけど」
「じゃあ、あとで取りに行く」
「取りに行くって、男子寮だよ?」
「全然問題ないよ。お菓子のためならどんな障害でも乗り越えられるし!!じゃあ、よろしく」

笑顔で手を振って部屋に戻っていく
それを呆然と見る他多数。
はおとなしく、その場にいた友人達は普通の生徒だと思っていたのだのだがどうも違うらしいと今更ながらに気づく。

って、あんな性格だったのね」
「そうね、ずっと同室だったけれど、大人しい子くらいにしか思ってなかったわ」

そう呟くセフィアとリリーだった。



その後、は予告通りに男子寮に忍び込んだ。

「リーマス!約束通りにもらいに来たよ」

は1人で堂々と男子寮であるリーマス達の部屋の扉の前にいた。
悪戯仕掛け人を避けていたのはなんだったのだろうとでもいうように晴れやかな笑顔である。
それほどにとってリーマスのチョコレートが魅力的なのだろう。
リーマスと同室のジェームズ達が驚いたのは言うまでもないだろう。

「本当に来たんだね、

苦笑しながらリーマスは部屋に促す。
しかし、は部屋の中に入ろうとしなかった。

「見つかっちゃやばいから、ゆっくりしてられないんだけどね。リリーやセフィアにも内緒で来たから」
「そうなの?じゃあ、ちょっと待ってて」

リーマスは部屋へと戻ってごそごそ荷物を漁る。
すぐに見つけたらしく、包みをもってのところに来る。
手のひらサイズの包みだ。

「はい、これ。数が少ないからあまりあげられないけど…」
「ううん、十分だよ!ありがとう、リーマス」

にこっとは嬉しさで笑みを浮かべる。
これがリーマスとの始まり。
まだ、この時の2人は出会ったばかりのようなものだった。