古の魔法 3






居間のソファーに座ってはジェームズ、リリーと向き合っていた。
テーブルにはリリーの入れた紅茶とクッキー。
ちなみにハリーが何故かの膝の上にいる。
気に入られてしまったようだ。

「あ〜。ね〜、う〜」

(か、可愛い…!)

憧れであるハリーの赤ん坊時代を見れるとは思っていなかったは赤子ハリーを存分に鑑賞していた。
嬉しさのあまり頬が緩む。

「ハリーに気に入られたようね」
「それじゃあはハリーの初恋になるのかな?」
「なっ!なりませんって!!そもそもハリーとは挨拶程度しか話を!」

真っ赤になって否定する
だぁ〜とハリーがにこにこしながらに手を伸ばしてくる。
可愛さのあまりきゅっと抱きしめる。
するときゃっきゃっと嬉しそうな声が聞こえてくる。

「嬉しそうね、ハリー」
「そうだね、ここに越してきてからは僕達家族だけだったからね。ハリーも少し寂しかったのかも知れないね」

悲しげな笑みを浮かべるリリーとジェームズ。
この場所は「秘密の守人」しか知らない。
それゆえ、誰かが訪問してくることなど緊急でない限りはないのだ。

、聞いてくれるかい?」

ジェームズの真剣そうな声には顔を上げる。
ハリーを抱きしめる腕を緩めて、膝に乗せるだけにしておく。
少しハリーが不満そうな表情をしたのに心残りを感じてしまう。

「はい、私はそれを聞く為に、そして見届ける為にここに来たんですから」

頷く
そしてジェームズは語りだす。
今の彼らがどういう状況に置かれているのかを。



「僕達はヴォルデモートに狙われているんだ」

ヴォルデモートの名に少しびくっとする
は『例のあの人』の名前を怖くて言うことができないでいる。

「だから隠れる為に「秘密の守人」をつくった。「秘密の守人」は僕達の学生時代の親友、そう、シリウスだったんだ」
「じゃあ、やっぱり、シリウス・ブラックは…」
、まだ話には続きがあるわ」

両親の信じていたことが嘘だったと思ったはリリーの言葉に少し希望を持つ。
両親が信じているシリウス・ブラック。
も信じたいと思う。

「そう、最初はシリウスにするつもりだったんだよ。そうしたらシリウスがピーターの方が盲点だからピーターにしようって」
「ピーター?」
「ピーター=ペティグリュー、私達の親友の一人よ。そして「秘密の守人」でこの場所がヴォルデモートにばれていると言うことは…」

悲しそうに顔をゆがめるジェームズとリリー。
つまりはその親友だったピーターが裏切ったということだ。
ヴォルデモート、もしくは闇の陣営の者にこの場所を言ってしまった。

「じゃあ、シリウス・ブラックは裏切ったそのピーターって人を許せなくて、十数人のマグルを巻き込んでそのピーターって人を殺したって事?」

確か、シリウス・ブラックが殺したのはピーター=ペティグリューと十数人のマグルだと新聞に書いてあった。
裏切った親友を許せなくて?
それならば、彼はやはり殺人犯であることに変わりがないのではないのか。

「待ってくれ、。シリウスはそんなことをするはずがない。むしろ自分で地雷を踏んで運よく生き残ってる確率の方が高い。あいつはそれだけ馬鹿だ」
「そうよ、シリウスに限って、ジェームズの言う通りよ。シリウスは人を、しかも無関係のマグルを殺すような人じゃないわ」
「でも、新聞では!」

そう書いてあった。
はそう言おうとした。

「ねぇ、。それは果たして真実なのかしら?貴方はシリウスがマグルを殺すところを見た?」

リリーの言葉には首を横に振る。

は、この時代に何をしにきたの?」

その問いかけにはっとなる
シリウスを信じている両親。
裏切ってないと、殺人犯ではないと信じている。

「私は確かめる為に、何が起こったのかを確かめる為にここにいる」

の言葉にリリーは満足そうに頷いた。

「でしょう?先入観を持っては駄目よ、見えるものも見えなくなってしまうわ」

シリウスが悪い人と思っていたら、真実も見えなくなってしまうかもしれない。
何も考えずありのままを見て自分が思ったことを信じればいい。
それを両親に伝えればいいのだ。
はそう思った。


「1つだけ、約束してもらってもいいかい?

ジェームズがまっすぐな視線を向ける。
もまっすぐとその視線を受け止める。

「君が言うにはヴォルデモートが来るのは6日後だよね」
「はい」
「その時、君は隠れているんだ。いいね」
「え?何で?」
「君は本来ならこの時代にいるべきじゃない子だ。怪我をさせるわけにはいかないよ。怪我でもさせたらセイスやカレンに僕が怒られてしまうよ」
「でも、それじゃあ!!」

真実を見に来たというのに隠れていたのでは意味がない。
は反論しようとする。

「大丈夫、隙間から見れるようにはしておくよ」

ぽんぽんっとジェームズに頭を撫でられた。
はその言葉に頷くしかできなかった。
迷惑はかけられない。
何しろ自分は足手まといにかならないのだから。

「大丈夫よ、。私達はそう簡単にやられたりはしないわよ」
「そうさ。せっかくセイスとカレンの娘が危険を承知で僕達のことを心配して来てくれたんだ。死ぬつもりはないし、シリウスをアズカバンになんかはいかせないよ」

を安心させるように微笑むリリーとジェームズ。
その笑みはなぜか信じられる気がした。
この二人ならば、の知っている通りの未来なんてこないんじゃないかと。
ハリーが幸せに両親と一緒に暮らすことができるのではないかと。

「うん…」

も笑みを見せる。
それでも少し残る不安な気持ちはなくならない。

「ねぇ?う?」

に手を伸ばしてくるハリー。
はハリーの手をきゅっと握り締める。
本当に可愛い。
この子があのハリー・ポッターだなんて思えない。
いや、今のハリーが可愛くないわけではないが、赤ん坊のころというはやはり特別なのだ。

「ハリー、その子はよ、
「リリーさん、名前教えてもまだちゃんと言えないですよ」

苦笑する
でもリリーは根気よくハリーにの名前を言う。
ハリーは「あ〜」とか「う〜」とかしか話さない。
まだきちんと言葉を覚えてはいないのだろうと思うが…。

「う〜?」
「違うわよ、ハリー、よ」
「いいですよ、リリーさん」
「ねぇね、きゅ〜」

ハリーがぎゅっとに抱きついてくる。
というよりしがみついているように見えるが…。
はハリーをきゅっと抱きしめる。

(もう〜、可愛いよ〜ハリー!!)

どうやらは完全にハリーに気に入られたようである。
その様子をほほえましく見守るポッター夫妻。
リリーは結局の名前を呼ばせることを諦めた。

ヴォルデモートが来るまであと6日。
全ては6日後に決まる。
この暖かい家庭が壊れることがありませんように。