クリスマス休暇 01
クリスマス休暇。
リーマスの家へと戻ってきたはやはりこってり搾られ、リーマスの恐ろしさを身にしみたのだった。
年が明けて、学校が始まるまではここにいるということが強制的に決定させられていた。
「、暇なら友達でも呼んだらどうだい?この家は広いからクリスマスパーティーくらいは開けるよ?」
暇そうにしていたにリーマスが提案する。
にっこりと爽やかな笑みがどうも怖いと思ってしまう。
「で、でも」
「遠慮しなくいいんだよ。こんな広いだけの家なんだから」
確かにこの家は広い。
住んでいるのはリーマスととヴォルの3人。
加えて、記憶のジェームズとリリーとハリー。
記憶の彼らに一づつ部屋を与えても部屋があまるくらいだ。
はふと思いだす。
「あ、そういえばね、リーマス」
「なんだい?」
「ウィーズリーの双子にリーマスを紹介して欲しいって言われていたんだけど…」
「私をかい?何でまた」
「尊敬する悪戯仕掛け人の一人、ムーニーに会いたいんだって」
そういえば紹介してと言われていた。
クリスマス休暇か、イースター休暇になるとは言ってあったが。
「じゃあ、クリスマスパーティーしようか?その二人を呼んで」
「いいの?」
「勿論だよ。美味しいケーキつくらないとね」
楽しそうなリーマス。
リーマスはお菓子作りが得意だし、好きらしい。
リーマスが作るものは美味しいのだが…甘すぎるところがある。
「…甘さ控えめでいいからね」
一応忠告はしておくのだった。
*
リーマスがダンブルドアに手紙をだして、双子を家に招待したい旨を伝えたらしい。
普通ならば、クリスマス休暇に寮に残る生徒達が外出などはできないのだが、ダンブルドアの許可もあること言うことで、今回は特別となった。
問題は……
「「メリークリスマス!!!」」
突然暖炉から、おそらくホグズミードから来たのだろう、来た途端に吃驚させてくれる双子。
丁度は、クリスマスパーティーの準備の途中だった。
料理を運ぶ途中のままでは固まっていた。
「「「メリークリスマス、!」」」
なぜかといえば、来たのは双子だけではなかったからだ。
声をそろえて双子の後から来たのは3人。
よく見慣れた3人組。
ハリー、ハーマイオニー、ロンだった。
(ちょっとマテ!だって、確かこのクリスマスでポリジュース薬完成させて、秘密の部屋のことマルフォイ君から聞く予定じゃなかったっけ?!なんで、クリスマスイブにこの3人がここにいるの?!)
クリスマスに、秘密の部屋のことを聞きだすのだろうと思って、はこの3人は誘わなかったはずだ。
それなのに、何故ここにいるのだろう?
「な、なんで、ポッター君達まで?」
非常にまずい気がする。
なにしろ、ここの家にいるのは、ヴォルとリーマス。
ヴォルは猫の姿のままでいてもらうとしても、リーマスは、双子だけに紹介するならともかく、ハリーたちはまずい気がする。
今のの姿は少年のものだ。
双子が来るということで、今日は朝からこの姿である。
「僕達が来たのいけなかった?」
の驚きようにハリーが悲しそうな表情になる。
はそれに慌てる。
「そ、そんなことないよ!ちょっとびっくりしただけ、歓迎するよ」
にっこりと笑顔を作る。
その言葉を聞いてハリーは打って変わって笑顔になる。
「そう、それはよかった、」
(ハリー、その表情の変わりようは、私は騙されたと思ってもいいかな?)
ハリーの変わりようにがそう思っても仕方ないことだろう。
さすがあの二人の息子である。
「それはそうと、。僕らが尊敬するムーニーはどこだい?」
「会わせてくれるんだろう?」
会わせるつもりで呼んだのだから会わせるつもりなのだが…。
ハリー達が予定外だ。
(まぁ、なるようにしかならないか)
はため息をつく。
「今、キッチンでクリスマスケーキ作ってるから、またあとでね」
「そうかい?」
「それじゃあ、楽しみは後だね」
「そうだな、相棒」
「後でじっくりと悪戯の極意を聞かないとな!」
「勿論さ!」
(聞かなくてもいいよ)
心の中でそう呟く。
ところで、とはハリー達を見る。
「来てくれたのは嬉しいけど、ポッター君達、クリスマスに何かやるつもりだったんじゃないの?」
そう、ポリジュース薬を使うのではなかったのか。
材料もそろっているはず、本もある。
秀才のハーマイオニーがいる。
だから大丈夫だと思っていたのだが、ハーマイオニーがのその言葉に苦笑する。
「やっぱり、は気付いていたのね。私達が何かしようとしてること」
「うん、まぁ」
まさか、最初から知っていたとは言えない。
「だって、しょうがないじゃない。したくても準備が整ってないだもの」
ハーマイオニーが深いため息をつく。
ハリーも仕方なさそうな表情だ。
「マルフォイがまさか帰省するとはな」
「ロン!!」
「…あ、ごめん!」
ロンの呟きをハーマイオニーが咎める。
ロンはちらっとを見た。
そういえば、は3人が何をするか知らないことになっているのだった。
ポリジュース薬を作ることも、それを使ってドラコに聞こうとすることも…。
「別に言っても大丈夫だと思うよ、だもん。のことだから、僕らが何しようとしているかくらい気付いているんじゃない?」
ハリーがどこか不機嫌そうな表情でを見る。
にしてみれば、空笑いを返すのみだ。
「まぁ、検討はつくけどね。ポッター君達はマルフォイ君を疑っていたんだし」
「はマルフォイじゃないって思っているんだよね」
「う、ん」
「じゃあ、協力してね。前も言ったけど、マルフォイの行動チェックしてほしいんだよね。そうすれば、僕らもマルフォイに聞きやすいし」
「別に協力ならいつでもかまわないよ、ポッター君。ただ、僕はマルフォイ君と仲良いわけじゃないから行動チェックしきれるかは微妙だけどさ」
丁度ルシウスの関係で、今年はドラコと話すことが多い。
「!!誰かの行動チェックなら!」
「僕達も協力するよ!」
「何しろ僕らに目を付けられた獲物は!」
「一匹たりとも逃がしたことがないからね!」
「そう、!」
「君を除けばね!」
突然、双子がの両側からステレオ声を張り上げる。
思わず耳を塞ぎたくなったが、顔を顰めて二人の顔を交互に見るだけにする。
その後深いため息も出てしまう。
「いえ、結構です。先輩方に借りを作るのは怖いですからね」
(しかも、私がいつ獲物になったんだ?)
「酷いな、僕らは親切心で言っているだけなのに!」
「この心を信じてもらえないなんてっ!」
「ただ、協力する代わりにクィディッチの選手になってくれと脅迫しようとしていただけなのに!」
「僕らの望みはただそれけなのに!!」
「だから、何度も言ってますが無理ですって!それに脅迫ってなんですか、脅迫って!」
わざと言っているのだろうことが分るが、どうしてこうしつこいのだろう。
ことあるごとに勧誘に持ち込んでくる。
少し前まではまだよかった、なにしろロンが反対していたことだし。
しかし、最近はロンは全く気にしていない様子。
「随分にぎやかだね」
くすくすっと笑いながらリーマスがキッチンから来る。
手には、人数分の紅茶とクッキー。
「リーマス、笑い事じゃないんだよ。本当に、大変なんだから」
「まぁ、の気持ちも少しは分るよ。私の学生時代にもその二人に似た友人がいたからね」
「リーマスはその二人と一緒になって悪戯したクチでしょう?」
リーマスから紅茶を受け取りながらは顔を顰める。
リーマスの学生時代、彼の友人二人がまさにウィーズリーの双子のような感じだっただろう。
それでもリーマスは止めるどころか仲間だったのだから。
「ジョージ先輩、ウィーズリー先輩。こちらが先輩方が会いたがっていたムーニーです」
「初めまして、君らが今の悪戯仕掛け人かい?私はリーマス・ルーピン」
にこっとリーマスが笑顔を浮かべる。
双子は感激したようにリーマスに近づく。
「「はじめまして!」」
「今は僕らが「悪戯仕掛け人」を名乗っているけれど!」
「僕らの尊敬する「悪戯仕掛け人」の事は伝え聞いています!」
「地図と」
「そして、数々の武勇伝!」
「「是非、伝授を!!」」
双子には珍しく緊張している様子。
しかも言葉使いが丁寧になっている。
リーマスはくすくすっと笑う。
「構わないよ。なんなら、の弱点でも教えようか?」
「「それは是非ともご伝授をお願いしたい!!」」
「リーマス!!!」
はリーマスを咎める。
冗談じゃない。
は、自分の弱点を、弱点があるとも言っていないが、リーマスにさらした覚えがないのだが、リーマスが言う分冗談に聞こえない。
「まずは、教えていただきたい!」
「どうすれば、にファーストネームで呼んでもらえるかを!」
「そして、どうすればを仲間に引き込めるかを!」
「僕らはの力を必要としているのだから!」
「…だ、そうだけど??」
にこりっと笑みを浮かべてくるリーマスがかなり怖い。
「僕には僕の事情があって!」
「ファーストネームで呼ばないなんて他人行儀じゃないかい??」
「その通り!!ムーニーの言うとおりだ!」
「さぁ、!呼び方を改めよう!」
「ですから!!できませんって!先輩に当たる方をファーストネームでは呼べません!!」
「へぇ〜、先輩に当たる方、ね」
リーマスが意味あり気な視線を送ってくる。
この中でただ一人、リーマスだけはの実年齢を知っている。
「リーマスも、ウィーズリー先輩方も!悪戯話をしたいのなら存分にしてください!そこに僕を巻き込まないで下さいよ。ポッター君達があっけにとられているでしょう?!」
確かに双子とリーマスのペースにあっけにとられているハリー達だが…。
「それじゃあ、パーティー始めようか?ハリー、君にはジェームズの話をしてあげるよ。クリスマスプレゼント代わりにね」
「え?!!」
リーマスがにこっとハリーに笑みを向ける。
ハリーは父親の名前がでてきたことに驚いたようにリーマスを見上げた。
「私とジェームズは、学生時代友人同士だったんだよ」
ハリーは嬉しそうな表情になる。
しかし、は複雑だった。
今、この場でリーマスがハリーと知り合うのは果たしていいことなのだろうか?
リーマスのことだから、他の二人の親友のことに関しては話さないと思うし、記憶として残っているポッター親子のことも話さないとは思う。
は、ハリーのあまりの嬉しそうな表情に、リーマスを止めることはできなかった。