序章 01





声が聞こえる。
真っ白い空間の中、響く声。
見る限りは白だけが存在し、他に何も存在しないかのような曖昧な空間。


―歯車が狂い始める

―少しずつ、少しずつ……

―このままでは、この世界は狂い…闇に覆われ……そして消えゆく。


(誰の声?深い、けれど何処か悲しげな声)


―世界を知る者よ

―導きし者

―力を貸して欲しい


(何を言っているの?私に力なんかかないよ)


―汝を我が世界に導こう…。


、大学一年、18歳。
容姿は平凡、黒い肩より少し長めの髪に黒い瞳。
彼女は今、夢と思われる白い空間の中に1人立っていた。
いや、1人ではないようだ。
銀色の髪の青年と向き合っている。
は顔を顰め、目の前の青年を見る。

「誰?」

真っ白い空間の中、ここが夢の中であるだろうとは思う。
目の前の青年は明らかに日本人ではない整った顔立ち。

『私は時の番人…。汝を我が世界に招く者』

「は?」

僅かに笑みを浮かべる青年の言葉に、顔を顰める

(いきなり何を言っているんだろ?この人)

『これから、この場で起こる事を正しき道に導いて欲しい』

青年がいつの間にか手に持っていた、30センチ程の棒切れを振る。
サァ…と周りの景色が変わる。
現われたのは、森の中の城。

「へぇ、すごい大きな城」

周りの景色が変わったことに驚きもしない
しかし、どこかで見たことあるような気がする。

『時は西暦1991年、ここホグワーツの歴史があるべき姿から狂い始める…』
「は?ホグワーツ?!!」

青年の言葉に驚く

(ホグワーツって、あのハリポタの?!夢にまででてくるとは…、ハリポタにそんなに嵌りすぎたのかな?そりゃ、今翻訳で4巻まででてる原作本全部持ってて、映画も全部見て、DVDも持っているには持ってるから、好きといえば好きなんだろうけど。夢に出てくるまで嵌ったとは思ってなかったんだけど)

『汝は、魔法使いではない、マグルだ』
「そうでしょうとも」

は、生まれてこの方魔法など使ったこともなければ、まわりでおかしなことが起こった覚えもない。
世間の基準で普通の生活を送ってきた。
自信を持って言える。
自分は生粋のマグルであると。

『汝に、知識を授けよう…、そして、この指輪を』

青年が差し出した銀の指輪。
の右手の薬指におさまる。
指輪の嵌る感覚までするなんて、なんてリアルな夢なのだろう。

『その指輪は、魔力を蓄えることが出来る。魔力が必要となったときに使うといいだろう』

は感心したようにその指輪を眺める。
細い銀色の指輪。
何の変哲もない指輪に見える。

『それでは頼んだぞ。時の代行者よ、正しき導きを……』

周囲の景色が歪む。
の意識も遠のこうとしていた。

「え?!ちょっと待て!夢とはいえ、なんでそんな訳の分からない説明で終わるの?!もうちょっと詳しく……!」

青年を引き止めようにも伸ばした手は届かず、頭の中に膨大な何かが入り込んでくる感覚で、は眩暈に襲われる。
グラリ、と揺れる視界…、そして沈みゆく意識。