賢者の石後日談




賢者の石後日談





「ハリー、大丈夫だったかな?」
「別に心配することもないだろ」

屋敷の今でゆったりとカップのお茶を飲んでいるのはヴォルデモートである。
ただお茶をしているだけなのに妙にサマになっているのは、彼の顔立ちがいいからだろう。
心配そうに窓の外を見ているのは黒髪の少女…と言っても差し支えない面立ちの

「どうにもならない時は私がでる。それまではハリーの好きにさせておけばいい」
「ふふ、ヴォルデモートさん、やっぱり優しいね」

にこりっと笑みを浮かべる
の言葉をヴォルデモートは冷静に受け止め、再びお茶を口に運ぶ。
ヴォルデモートのカップの中身は紅茶である。
もはや家族ぐるみの付き合いをしているポッター家から、何度か贈られてくるものだ。
未だに紅茶の種類はよくわからないは、いつも適当に入れている。
ヴォルデモートが何も言わないので、特にどの紅茶がどうのとか覚える必要もない。


しっしょぉーーー!!


ぱちんっと音がして、ハリーが姿現しで唐突に居間に現われる。
現在ホグワーツ1年…もうすぐ2年になる、ハリーはもはや一人前以上の魔法使い並みに魔法が使える。
姿現しも慣れたものだ。
ここにくる時はいつも姿現しだ。

「師匠知っていたでしょ?!!どうして初っ端の年から師匠もどきがいるわけ?!」
「何のことだ?」
「うわ、さっくりとぼける気?!紫ターバン先生のこと知ってたでしょー?!」
「知らんな」
「ああ!もー、この師匠はいつもこうだー!さん!何か言ってやってよ!!」

びしりっと自分の師匠ことヴォルデモートを指差すハリー。
世界広しとはいえ、魔法界で恐れられていた元闇の帝王にこんな態度をとれるのはハリーくらいなものだろう。
仲良く話せるポッター家のジェームズ&リリーでさえ、ここまで容赦ないことは言わない。
はその性格からか、ここまでびしりっと物事を言う事はない。

「うん、でもね、ハリー。ヴォルデモートさん、本当に知らなかったんだと思うよ?」
「嘘だ!絶対嘘だ!世界の出来事なら何でも知っている!世界は自分中心に回っている!!っていうような師匠があのことを知らないはずがないっ!」
「でも、ヴォルデモートさん、ずっと執筆活動しているから世の中の動きにそんな詳しくないと思うよ」
「ありえない!絶対ありえない!」

の言葉に首を横に振るハリー。
今のヴォルデモートは「モーフィン・ゴーント」という名で本を出版している。
それは闇の魔術に対する防衛術の本であったり、魔法薬学の本であったりだ。
闇の魔法に精通しているヴォルデモートだからこそ出来ることだ。
それがかなりの収入源になっている。

「あのゴミがクィレルについていることは知っていたがな、今年行動起こすとまでは知らなかったな」
「紫ターバン先生に師匠のゴミがついてるって知ってただけでも十分だー!」

ヴォルデモートならそのくらい予測できたはずである。
しかしあれをゴミとは2人共酷い表現である。
あれでも天下の闇の帝王のはずだ。
世間では…。

「知ってたなら忠告くらいしてよ!」
「それじゃつまらんだろ」
「何がつまらないんだよ!僕は命かかっているんだからね!」
「あんなのに命かけなきゃならないほど実力があるか?」
「そう思えるのは師匠だけだよー!!もー、さん、この計画なしになんか言ってやってよー!」

ヴォルデモートは再びお茶を口に運ぶ。
ハリーの叫びなどに全然動じていない。
というよりも、これは昔からよくあることだ。
無茶なことを要求するヴォルデモートにハリーが叫んで抗議する。
実際、ハリーの要求が通ることは稀だ。

「ヴォルデモートさんはハリーならできるって思っていたから言わなかったんだよ」
「うく…!そりゃ、あれは大した相手じゃなかったし、色々遊んだりしてスッキリはしたけど…」

実はハリーはクィレルを一目見て、あれがついているのだと分かった。
それが分かってからというもの、友人となったロンの双子の兄達の力を借りて、頭を集中的にねらって悪戯を仕掛けまくっていたりする。
時には足蹴にしたり回し蹴りをかましたこともあった。
しかし、そんなことは言えまい。

「ストレス解消もできたならいいだろ。で、勿論仕留めたんだろうな?」
「う………!!」

ぐっと押し黙るハリー。
これでは逃がしてしまいましたと言っている様なものである。

「だって仕方ないじゃないか!遊ぶのがついつい楽しくて楽しくて楽しくて……!!」

ハリーはヴォルデモート相手に魔法で対戦のようなものを何度かしているが、いつもいつも完膚なまでに叩きのめされているのである。
1度も勝った事がない。
しかもヴォルデモートは手加減をしている。
ハリーは禁じられた呪文を使いまくっていいのだが、ヴォルデモートは使わない。
いつかは絶対に一発くらわせてやりたいと常々思っているのだから、たとえもどきだろうが一発くらわせられるのなら、それはもう爽快だろう。

「ねぇ、ハリー」
「何?さん」

はハリーににこりっと笑いかける。

「友達、できた?」

の問いにハリーは一瞬驚き笑顔で頷く。
ヴォルデモートのおかげで、世間では英雄扱い、さらに鍛えられまくって一人前以上の実力を持つ魔法使いになってしまっているハリー。
きちんと同学年の中にとけ込めているだろうか。
それが少しだけ心配だった。

「ハロウィンで一緒にトロールやっつけたんだよ!ロンとハーマイオニーって言って、ロンは魔法族で、ハーマイオニーはマグル出身なんだけど、信用できる親友なんだ!」
「そう、よかったね」

が知るハリーポッターのお話と同じ親友を持ったハリー。
親友と呼べる相手ができてよかったと思う。

「あと、スリザリンにも面白いやつがいてさ。からかって遊ぶのが楽しいんだ!」
「スリザリン?」
「そうそう。変な名前のやつなんだけど、純血主義を振りかざしてふんぞり返っているところをヘコませるのがすごく楽しい!」

満面の笑みを浮かべるハリー。
その笑みがどことなくリリーが怒った時に浮かべる笑みに似ているのは気のせいだと思いたい。
それにしても純血主義のスリザリン生。
の頭に思い浮かんだのは1人の生徒である。
実際会った事はないが、その両親は知っている。

「その子、何て名前なの?」
「え?あいつの名前?えっと、確かドラコ・マルフォイ。なんかすっごい権力あって金がある家なんだってさ。もう、そいつ相手に実力でヘコませるのがこれが結構楽しくて!ハーマイオニーとタッグ組んで魔法薬学を完璧にこなして点数もらった時なんて、すっごい悔しそうだったし!」

とてつもなく綺麗な笑顔で話をしているハリー。
ヴォルデモートは興味なさそうに手元においてあった本を読み始めている。
はちょっぴり冷や汗をかいていた。

私が知っている内容とは変わるかなぁ…とは思っていたけど…。
ドラコ君、かわいそうかも。
ごめんね、ドラコ君。
でも、多分ハリーのこの満面の笑みを見る限りじゃ、当分続きそうだから頑張ってね。


こうしてハリーの変化により、「ハリーポッターと賢者の石」から物語りはだんだんと変わっていく。
……かもしれない?