開き直りは大切06




開き直りは大切 06




あの後、は退学にならず、ダンブルドアに注意を受けただけだった。
そして、リドルを避けまくって3ヶ月ほどが経つ。
ようは1人にならなければオッケーなのだ。
大勢の前でリドルもに声をかけようとは思わないだろう。
何かいいたげな視線をしょっちゅう感じるが、気づかないふりをしている。

、今日は勉強はいいのか?』
『うん。あとで起きてゆっくりやる〜』


将来のことを考え始めたは、勉強にそれなりに真面目に取り組むようになった。
黒曜のためにも魔法界での安定した職業が必要であると思ったのだ。
物騒な闇祓いなどという職に就く気はないが、魔法省はそれなりに安定した職で魅力的だ。

はスリザリン寮では1人部屋である。
誰も同じ部屋になりたくなかったというのもあるだろうが、何よりもどうやら1人あぶれてしまっているようで、ずっと1人部屋だ。
妙な諍いがないから部屋の中はとっても平和だ。
それに黒曜ともべらべらパーセルタングで会話しまくりができる。
今日は授業がないので、まだベッドの中でぬくぬくしている。

『あのサラザール様の末裔のこと、は知っていたのか?』
『うん?ああ、ミスターのこと?えっと…黒曜ってゴーント家とか知ってる?』
『ああ、聞いたことならばある。サラザール様の末裔の家系の1つだ』
『そう、確かミスターはその家系だよ。母親がメ…メ…名前忘れた。とにかく、ゴーント家の一族でお父さんが性格悪い美形』


流石に何年も経っているので記憶はおぼろげだが、結構覚えている自分がすごいと一瞬思ってしまう。
あの話は一時期ものすごく大好きで、プロフィールを片っ端から覚えたりした覚えがある。
あの頃の自分は若かった。
しかし、今の方が年齢的はもっと若い。

『確か、スリザリンの唯一の末裔じゃないかな?あ〜、でも、叔父さんは生きているんじゃない?』
『サラザール様の末裔がまだいらっしゃるのか?』
『いると思うけど、あまり期待しない方がいいよ。完全純血主義の凝り固まった人だと思うし。えっと…リトルハンなんとかって所にいるはずだけど、今度行ってみる?』
『純血主義…なのか』
『貴族なんてそんなもんじゃない?あっさり私に説得された黒曜の方が珍しいよ』
『だが、の考え方の方が説得力がある』
『いや〜、そう言われるとちょっと嬉しいかも』
『だから、サラザール様の末裔のあいつも、両親や血族でなくを気にかけるんだろうな』
『は?ミスターのこと?』
『そうだ。血族のことを聞いても何の反応を示さないというのは、そういう事だろう?』


黒曜の言葉がに向けられたものではないと気づき、はもごもごっと布団の中からやっと顔を出す。
目に入ったのはにっこり微笑むリドルの顔だった。
ありえない人物がいて、かなりぎょっとする

「ミサキは、随分と僕のことに詳しいね」

黒曜の馬鹿ー!
ミスターがいるなら、いるって最初から言ってよねー!

「ミサキが避けてばかりいるから、強硬手段に出てみたんだ」
「さ、爽やかな笑顔で何女子寮に忍び込んでるの?!ミスター!」
「バレなければいいと思うんだ。幸いミサキは1人部屋みたいだし、ミサキが言わなければ減点もないよ」

普段自分の方が校則違反しまくりのだ。
このくらいのことで教師に言いつけたりはしない。
リドルもそれが分かっているのか、慌てる様子などまったくない。

「ねぇ、ミサキ。今日こそ、隠していること全部話してもらうからね。時間はたっぷりあるし」
「なんのことかな?」
「僕は自分の母親がサラザールの末裔だなんて、初めて知ったよ。てっきり父親の方が魔法使いだと思っていたしね」
「へ?だって、ミスター自分がサラザールの末裔だって知っていたんじゃないの?」
「それは知っているよ。でも、両親のどちらがってのは誰も知らなかったみたいで僕も知らないんだよね。ミサキはよく知っていたね?」

リドルはを逃がさないようにの顔を挟むように両手をついてくる。
ぎしりっとベッドが少しきしむような音がして、の顔を覗き込んでくるリドルの目が物凄く妖しい。
この年でこの色気は絶対に反則だろうと思う。

「出生のことなんて今はどうでもいいんだよ。僕はミサキのことを知りたいんだ」
「へ?出生のこと別に気にならないの?」
「僕を捨てた親なんてどうでもいいよ。どうせロクでもない親なんだろうし、関係ないしね」

あ、あれ…?
父親憎んでマグル殲滅の道歩んでいるんじゃなかったの?
それともこれから憎むだけ?

「ミサキはもしかして全然気づいてない?」
「な、何が?」
「相変わらず鈍いね。昔からその鈍さが変わらないのが困りものだよ」
「鈍いって、昔はただ単に言葉を聞き取れなかっただけで鈍くなんてないよ、失礼な」
「いや、十分鈍いよ。だって、僕の気持ち、全然気づいてないだろ?」

はリドルをじっと見上げる。
寂しそうな笑みを浮かべるリドル。
そこまで言われると流石のもリドルが何をいいたのか検討がつく。
しかし、しかしだ。

「あ、あのですね、ミスター。ミスターって今12歳ですよね」
「うん、そうだよ。どうして、今更丁寧な口調になるんだい?」
「い、イエ!特に意味は…!」

冷や汗がだらだらと流れてくる。
もしかして、もしかしてとは思うが、自分はリドルにとっても好かれているのだろうか。
昔から孤児院でひっついていて、周囲がリドルに怯える中、変わりなくひっついていて頼っていて、同じように蛇としゃべったりしていた。
しかし、の精神年齢を考えてみればリドルは弟のような存在である。
下手すれば息子のような存在と言ってもいい。

「12歳といえば、まだ色気より食い気のような気がするのですよ」
「僕はミサキなら食べたいよ」

まて、12歳!
そこで問題発言するな!!

「自分の事はどうでもいい。ミサキの方が謎が多くて分からないことが多い。だから、不安になるんだ」
「ミスター?」
「ミサキはどこからそれを知ったの?ミサキは僕と会うまでどんな生活をしていたの?ミサキの両親は?ミサキの友人は?そして…」

リドルはに顔を近づけてくる。
とても切ない表情では顔を逸らすことができなかった。
額と額がくっつきそうなほど顔が近づく。

「ミサキはいつまで僕の手の届くところにいてくれる?」

はそれに答えることができなかった。
リドルは闇の帝王になるだろうと思っていたので、ホグワーツに来たら自然と離れていくものだとずっと思っていた。
ヴォルデモート卿なんかには係わり合いになりたくないし、平和で安全な生活をは望む。
だが、それはリドルにとってすごく傷つくようなことだったのではないのだろうか。
ダンブルドアも言っていた。
リドルがヴォルデモート卿となる未来は確定しているわけではないのだ。

「一緒にホグワーツに行けるって聞いた時はすごく嬉しかったのに、ミサキはホグワーツに入学してから僕に話しかけもしてくれないし、孤児院に戻った休暇中も話かけてこなくなったよね」
「う…、それは…」

リドルを嫌いになったわけではない。
ただ、関わらない方がいいかな〜と思っていただけだ。
リドルの方もに話しかけてこなかったし、それでいいと思っていた。

「嫌われたんだって思ってた。でもこの間、ミサキは昔と変わらずに話しかけてくれたから…」

リドルが嬉しそうな笑みを浮かべる。
がリドルを避けまくっていたことで、リドルを少なからず傷つけていたようだ。
ちょっぴり反省する

「ミサキの性格からすると、面倒ごと避けるために僕に話しかけなくなったのかなって思ってね」

ぎくりっとなる。

「面倒ごとに巻き込まれたくないから避けられているって思うと、気を遣って僕も話しかけないようにしていたのが、何だか馬鹿馬鹿しくなってね。とりあえず正直に行動に移してみたんだ」
「それで、この部屋に忍び込んだってこと?」
「うん。気になること色々あるし、全部聞こうと思ってね」

間髪いれずに肯定するリドル。
リドルの目に迷いは全く見られない。

「僕の知らないことを知っているミサキを知るたびにすごく不安だよ」
「いや、まぁ…、だってミスターに隠し事結構してるし」
「じゃあ、それ全部教えてよ」
「え…」
「ミサキの知っていること全部知りたい。ミサキのことで僕が知らないことがあるのは嫌だ」
「え、ちょ、ちょっと待ってミスター、目つきがものすんごく怪しんだけど…!」

顔は額と額が引っ付きそうなほど近く、リドルの手の動きがなんだか妖しい。
の頬を撫でるようにして首筋にするりっと移動する。

「言わないと襲うよ」
「…へ?」
「教えてくれないと、今からミサキを襲うよ」
「は、ちょ…!ミスター?!」

が被っていた布団が勢い良くはがされて、リドルはにの上に馬乗りになる。
物凄く危機感を覚える体勢である。

「まった!ミスター…ちょ…うひゃっ?!」

耳を思いっきり舐められる。
リドルの首筋が耳から首を辿って鎖骨に触れるが、くすぐったくてその感触にものすごくドキドキする。
しかし、ドキドキしている場合ではない。
この状況は物凄くやばい。

「ストップストップ!ちょいとまて!12歳!」

リドルの動きがぴたりっと止まる。
思いとどまってくれたかと思いきや、不機嫌そうな顔をに向ける。

「好きな相手を欲しいって思うのに年齢なんて関係ないよ、ミサキ」
「いや、でもですね、ミスター。物事には順序というものが…」
「順序…、確かにそうだね」

うんっと小さく頷いて、リドルはから少し体を離し、自分の右手をの頬に添える。

「愛してるよ、ミサキ」
「…へ?」

リドルの顔が近づいてきて、唇と唇がゆっくりと重なる。
ちょこんっと触れるだけのキスから、今度は深く重なり合うようなキスになる。

「ん…っ?!」

た、確かに順序って言ったけど、こういう意味じゃなくて!
って、ちょ…ま…、ミスター、これは12歳のキスじゃないよ!

はリドルを押しのけようとするが、びくともしない。
この年齢ではすでに男女の力の差が出てしまうという事だろうか。
ゆっくりと唇が離れる頃には、の息は切れていて、リドルは何故か不思議そうな表情でを見ていた。

「うん、なんか意外かも」
「み、ミスター…?」
「キスって他人の口の中を舌でひっかきまわすから気持ち悪いかと思ってたけど…」
「気持ち悪いって…、いや、その前に口の中舌でひっかきまわすって、それ12歳のキスじゃないから!もうちょっと可愛らしいキスにしよう!」
「今更何を言うんだい?大体なんでそんなに嫌がるの?」
「だから、物事には順序ってものがね!」
「ミサキの順序に沿ってたらミサキに逃げられそうで嫌だ。先手必勝って言うじゃないか」
「言わない言わない!大体なんでそんなに余裕なさそうに攻めてくるの?!」

似非優等生仮面被った余裕ぶりはどこにいった?!

「ミサキの事に関しては、僕は余裕なんて全然ないよ」
「は?」
「駆け引きしたくても、ミサキはいつも余裕でかわしてくし」
「いや、かわしてないし、覚えないし」
「それを鈍いって言うんだよ」

鈍いって言うか、ミスターの行動が分かりにくいだけなんじゃないの?!
って、そんなこと思っている場合じゃないし!

リドルはの首筋に顔をうずめて、唇を寄せる。
ぺろりっと舐められて吸い付いてくる。
思わずぴくっと反応してしまう。

「ちょ、まっ…!」

いくところまでいかないだろうとタカをくくっていただが、リドルは遠慮なく手を動かしてくる。
右手はの胸に、左手はの右の太腿を沿うように。

「話すっ!話すからっ!」

流石に身の危険を感じた。
12歳とはいえ、リドルならばナニをするのか分かっていても不思議ではない気がしてくる。
だが、12歳の子に襲われそうになっている自分がちょっとショックであったりするだった。