SWEET BOX10




SWEET BOX 10






恒例、リリー、セフィア、3人でのお茶会。
お茶会と言っても、同室のこの3人でお茶を飲み、お菓子を食べながらお話をするだけなのだが…。

イースター休暇も終わり、ホグワーツ4年生としての生活が始まった。
相変わらずリリーとジェームズはらぶらぶで、セフィアとシリウスは喧嘩が絶えない。
リーマスと付き合うことになっただが、休暇中は結構ベタベタ…というより一方的にリーマスの方が抱きついてくる…していたが学校が始まってみればとくに去年の後半と変わりがない。
残念なようなほっとしたような気分だ。

「ねぇ、。私、嫌なことをジェームズから聞いたんだけど」
「あら、リリー、偶然ね。あたしもあのヘタレ馬鹿から変なこと聞いたのよ」

をじっと見るリリーとセフィア。
きょとんっと可愛く首を傾げる

「もう!ってば可愛いわ!!」

リリーはがばっとに抱きつく。

「1ヶ月も会わないうちに、ってばすごく可愛くなっちゃって!」
「リ、リリー。別にお世辞はいいって…」
「お世辞じゃないわ!もう!なんで自覚ないのかしら?って結構モテるのよ?」
「やだ、リリーってば。冗談でも笑えないよ〜」

苦笑するだが、リリーとそれからセフィアはため息をつく。
この親友は自分に対しての自覚が足りない。
去年の中ごろまでは確かに特に目立つことはなかっただが、甘いものが好きだということを隠さなくなってからというもの、友人達に見せる甘いものを食べた時の笑顔など存在感が全然違ってきたのだ。
それを本人は無自覚。

「ねぇ、。リーマスと付き合い始めたって本当?」

セフィアが顔を少し顰めながら問う。
リリーも興味あるようにを見る。
はほんのり顔を赤くする。

「えっと、うん。一応」

恥ずかしげにだが肯定する。
まだ信じられないのだ、あの人気あるリーマスが自分のことを好きだなど。

「やっぱり、あの腹黒狼は前々からに対する態度がいきすぎだと思ってたのよ」
「可愛いをあの腹黒なんかに、あたしたちの守りが甘かったのね、リリー」
「全くだわ、セフィア。あの4人の中じゃあ、シリウスに次ぐ危険人物なのに、が可哀想だわ!」
「いいえ!リリー。シリウスはヘタレな分、脅せば何とかなるわ。でもリーマスは本性黒よ!脅しがどこまで通用するか」
「ええ、問題はそれよね」

リリーとセフィアで真剣に話し合う。
かなり怖い会話のような気もする。
何のことか分からないは首を傾げるばかり。

「リリーもセフィアも何言ってるの?リーマス優しいよ?」

自分の恋人がどうやら誤解されているらしく、はフォローをしてみる。

「甘いわ!!!」
「そうよ!確かにには優しいかもしれないけど…」
「危険なのよ!隙を見せたら何をされるかっ!」
「いい、!リーマスに襲われそうになったら、蹴ってでも殴ってでもいいから逃げなさい!!」

(襲われそうって、狼になったときのこと?でもセフィアはリーマスが人狼だってことは知れないはずだし…)

「二人とも心配しすぎだよ。ホント、大丈夫だってば。心配なのは、私の方が嫌われないか…」

悲しげな笑みを浮かべる
だが、リリーとセフィアはそこできっぱり首を横に振り、口をそろえて

「「それは絶対にないわ!」」

きっぱりはっきり言い切った。
その勢いにはちょっと驚く。
口をそろえてきっぱりと言い切られたのだから。

「あのリーマスに限ってそれはないわ!」
「そうよね、にべた惚れですもの」

(べた惚れって…)

どうやらのリーマスに対する認識と、二人のリーマスへの認識が少々違うようである。
それはやっぱり、リーマスの二人への態度とへの態度の違いが物語っているようなのだが。
はどうしてリリーとセフィアがリーマスのことをそんな風に思っているのか首をかしげずにはいられなかった。



4年生ともなると授業は難しくなる。
しかし、首席カップルジェームズ&リリー、次席コンビシリウス&セフィア、それからリーマスも彼らには及ばないまでも得意教科ではトップの成績だったりするので、特に4年生になったからといって問題はない。
は別に猛勉強しなければならないほど酷い成績ではないのだが、勉強しなければついていけない。
今日はピーターと二人で図書室でお勉強をしていた。
しかし、ピーターは分からないところ先生に聞いてくると言って今席を外している。

「えっと、トリカブトの根が…、ヨモギの葉と…?」

が今やっているのは魔法薬学のレポート。
カリカリと羊皮紙に書き込んでいくが、なかなか進まない。
こっそりリリーに聞いて『野草と魔法と魔法薬』という本が分かりやすいとのことでそれを図書室から借りてあった。
ぺらぺらっとめくる。

「蓮の花、じゃなくて葉だっけ?乾燥させて煎じて…柳の樹木を薄めたもので…焼く?じゃない、煮込む?あれ?」
「蓮じゃなく百合の花だ、それを乾燥させて煎じて柳の樹木を薄めたもので煮込む、だ」
「あ、うん。ありがとう」

カリカリとは羊皮紙に記入していく。
しかし、うん?と思う。
隣にピーターはいないはずだ。
一人だったはずなのに答えた声は?
顔を上げてみれば、一人のスリザリン生。

(あれ?この人見覚えがあるような気がする)

「あの?」
「『野草と魔法と魔法薬』の本はまだ使うか?」
「へ?」

突然問われた内容にきょとんっとする。

「その本はまだ必要かと聞いている」
「あ、はい。で、でも、大体は終わったので、必要なら構いませんけど?」
「いや、貴様が使うなら僕は構わない」

そのまま用は済んだとばかりに立ち去ろうとするスリザリン生。
言葉も無愛想だが、表情も無愛想だ。

「あ、あの!!」
「なんだ?」

が呼び止めて律儀に止まってくれるところがあるということは優しいのだろう。

「これ、使い終わったら持ってきますよ?」
「いや、それは…。そうだな、頼もうか?ミス・?」
「へ?私の名前?」

(どうして知ってるんだろう?私はスリザリン生に知り合いとかいなかったはずだけど)

「いつもポッター共と一緒にいるだろう?その本を使い終わったら言ってくれ」
「あの…」
「今日は僕は寮に戻るが、明日は図書室にいる」
「え?はい。じゃあ、明日には終わりますから渡します。あの、名前は?」

はこの目の前のスリザリン生を知らない。
相手は自分のことを知っているようだ。
どこかで見たことがあるような気はするが。

「セブルス・スネイプだ」
「スネイプさん?」
「ああ、それじゃあ、僕はこれで」

ばっとローブを翻してさっていくスリザリン生のセブルス。
はスリザリン生だからという偏見とかが全くない。
人狼の父をもつ身としては寮が違う程度では気にしないと言うことだ。
の育った町はそういう町だ。

「あ、そっか。思い出した」

はセブルスをどこかで見たことがあると思っていた。
それもそのはず。

「よくリーマス達のターゲットになってるスリザリン生だ」

悪戯仕掛け人のターゲットになって被害を受けているのを何度か見ている。
特にシリウスなどはセブルスを毛嫌いしているらしい。
シリウスの前でセブルスの名前は禁句だとか。

(でも、さっきちゃんと間違い教えてくれたし、結構いい人なんだろうな。リーマスはあの人のこと嫌ってないみたいだったから、話しても大丈夫だよね)

お気楽思考の
その考えが間違いだったと気付くのは少し後のこと。
宿題もひと段落つき、お茶の時間にしようと図書室を出るだった。



グリフィンドールの談話室に戻ってみれば、仲良くお茶しているリリーとジェームズ、それからリーマス。
はそちらに近づいていく。

「あら、。終わったの?」

リリーがに気付き声をかけて来る。
は頷き嬉しそうにリーマスの側にいき、隣に腰掛ける。
ちょうど、ジェームズ、リリーと向かい合う形になる。

「親切に教えてくれた人がいるの。あ、私ももらっていい?」
「ええ、いいわよ」

が紅茶のポットを指し、リリーが新しいカップを魔法で取り寄せる。
ありがとう、とはお礼を言ってカップに紅茶を注ぐ。
それから、お砂糖を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ…。

「これくらいにしておこうかな?」
、それじゃあ入れすぎよ」
「そうかな?もう少し甘くてもいいくらいだけど」
「僕もそう思うよ」
「でしょう?リーマスとはやっぱり意見が合うよね!でも、紅茶の風味も味わいたいから」

とはは言うものの、砂糖5つも入れたのでは紅茶の風味も何もないのでは、とリリーは思った。
あえて口にはしなかったが。

「ところで?誰に勉強教わったの?セフィアかシリウスでも一緒にいたの?」
「ううん、違うよ。でも、リリー達が知ってる人だよ」
「私達が知ってる人?」
「うん。明日その人にこの本を読み終わったから渡しに行くの」

は『野草と魔法と魔法薬』の本を持ち上げてみせる。
実はリリーに勧められたこの本、かなり分かりやすかった。
セブルスもおそらくこの本が分かりやすいから使いたいのだろう。
別にこの本を独り占めする理由などにはない。

「セフィアでもシリウスでもない。私もジェームズもリーマスもずっとここにいるわ、ピーターのワケないわよね?」
「ピーターは先生に分からないところを聞きに行ってるはずだよ」

としてもあのスリザリン生であるセブルスがアドバイスをしてくれたなどとは思いもしなかった。
意外と優しい人なのだと思ったものだ。
しかし自分の名前を知っていることに多少疑問を覚えたのだが。

「一体誰なんだい??」

リーマスがにこにこと聞いてくる。
その背後のかすかに黒いオーラに気付いたのはリリーだけである。
さすが黒同士。

「スリザリン生なんだけど…」

ぽつりっと言葉にしたに驚きを見せたのは、勿論リリー。

「スリザリンですって?!!、なんてことなの?!大丈夫?何もされなかった?!」
「だ、大丈夫だってば、リリー。だって、リリーもよく知ってる人だよ?私の名前まで知ってて…」
のこと知ってるのは当たり前よ」
「なんでそう言い切るの?」

疑問に思うだが、よく悪戯仕掛け人たちと一緒にいれば仕方ないことである。
それに加えここ半年ほどのは自分を隠さずにリリー達とよく笑っている。
前の大人しいイメージなどどこへやら。
それで注目されない方がおかしい。

「それで?誰か名前は分かるんだよね??」

先程よりも笑みを深くして尋ねるリーマス。

「うん。セブルス・スネイプさん」

にっこり笑顔つきで答える


ぴしっ


「「「……」」」


談話室が一瞬にして凍りついたように静かになる。
リーマスとリリーは笑顔のまま凍りつき、ジェームズはそれをみて口元を引きつらせている。
談話室にいた不運な他の生徒達もこのブリザードのごとき冷気に巻き込まれている。

「ス、スネイプって、言ったわよね??」

少し震えた声でリリーが尋ねる。
はどうしてまわりがそんな反応をしているのか分からず首を傾げる。

「そうだよ?リリー。知ってるでしょ?よくリーマスたちのターゲットに…」
「ええ!勿論よぉ〜く、知ってるわ!でも、でもね!!」

リリーがきちんと忠告をしようとしたその時、


「へぇ〜、セブルスに勉強を教えてもらったんだ?」


笑顔を保ったままのリーマスがどこか黒いオーラを撒き散らしながらを見る。
流石のもこれはちょっと怖いと思う。
リリーはそのリーマスの様子に軽くため息をつく。

、自業自得」
「え?何?リリー?」

はリリーに問おうとしたが、リーマスが突然ぐいっとを引っ張る。
リーマスはを座っているソファーに押し付ける。
笑顔が怖い。


「な、何?リーマス?」

表情は笑顔なのだが、目が全然笑っていないリーマス。
オーラには気付かなくても、目が笑っていなければでもリーマスが本当に笑っていないことは分かる。

「セブルスに何教えてもらってたの?」
「ちょっと、ちょこっとだけ宿題のアドバイスもらっただけ!…リーマス?何で怒ってるの?」

(怒っているよね?何でか良く分からないけど…)

「分からない?」
「分からないって?」

ここで頷けばさらにリーマスの怒りが倍増する気がするので、肯定はしないでおく。

がどうしても一人で頑張るって言うから僕は待っていたんだけどね〜。なんでセブルスと一緒にいたりするのかな??君は僕の恋人だよね?」
「…うん」
「それじゃあ、僕以外の男なんかと一緒にいて僕が嬉しいと思う?」

思わないだろう。
だって不可抗力であっても、リーマスが自分以外の女の子と一緒にいるのは嫌だと思う。
リーマスはタダでさえモテるのだから。

「ご、ごめんね?リーマス」
「駄目」
「え?…リーマス」

は泣きそうな表情でリーマスを見る。
怒らせてしまって、嫌われてしまったのだろうか?
しかし、リーマスはにっこりと笑みを浮かべる。

が、その紅茶を飲ませてくれたら許してあげるよ」

(……?)

え?


ワンテンポ置いて答える
言われた意味が理解できなかったらしい。

「リーマス?」
「うん。がね、口移しでその紅茶飲ませてくれたら許してあげるよ」
「く、口?!ちょ、ちょっと待って、リーマス!ここ談話室!」
「分かってる。だから言ってるんだよ」
「だからって。駄目だよ!だって…」

ちらっと周りをみれば、興味津々の視線が感じられる。
真っ正直に視線を向けているわけではないが、皆気にしている感じが分かる。
リリーとジェームズも視線を向けてくる。

「リ、リーマス」

は困ったようにリーマスを見る。
半分泣きそうである。
そもそもにそんなことができるはずがない。
リーマスはふぅ、とため息をつく。

「仕方ないね。ごめん、いいよ、僕が無理言ったね」

少し悲しそうな笑みを浮かべて、紅茶を口に運ぶリーマス。
どうやら期待していたシーンが見られないとちょっとがっかりしたグリフィンドール生たちは視線をそらす。
リリーは少し安心したように少しがっかりしたように肩を落とす。
期待はしていたらしい。
ジェームズは意味深な笑みを浮かべている。
はほっとして自分も紅茶を飲もうとしたが

ぐぃっ

腕を引っ張られ、頭を固定され…、リーマスと唇が重なっていた。
さすがの不意打ちに驚くばかりの
談話室がしんっと静まり返る。
はリーマスの胸を押して離そうとするがびくともしない。
リーマスはの頬に手を添えて、更に深く口付ける。
びくりっとが震える。
リーマスは器用に舌での唇を何度も舐めるように口付けて、の口を開く。
少し開いた口から舌をいれ、の舌に絡める。
は力が抜けたように、リーマスにしがみつくようにリーマスの服を握り締める。
抵抗する余裕などないようだ。
リーマスの飲んでいた紅茶の甘さが口の中に広がる。

名残惜しそうにリーマスがを開放したのはそれから1分後。
その場にいた生徒達にとってはかなり長い時間だと感じられたのではないのだろうか。
談話室の静けさを破ったのはこの事態を引き起こした張本人。

の唇は甘いね」
「…っ?!!り、リーマスが紅茶に砂糖入れすぎだからよ!」

砂糖入れすぎの紅茶を飲んだ後だから甘いんだ、と言いたかったのだろう。

「じゃあ、も甘いって思った?」
「…うん、まぁ」
「甘いもの好きだよね?は」
「うん、好きだよ?」

(それが何?)

リーマスはにっこりと笑みを浮かべて。

「じゃあ、もう一度しようか?」
「っ?!」

顔を真っ赤に染める

(な、なんなの?!リーマスってば?!)

「だって、甘いもの好きだよね?」
「う、うん」
「僕も甘いもの好きなんだよ」
「それは知ってるけど…」

(だから、なんでそうなるの?)

の唇は甘いから、僕は好きだな。も僕の唇は甘かったんだよね?」
「あ、あの…」
「甘いもの味わえるからいいと思わない?」
「お、思わない!」

ぶんぶんと首を思いっきり横に振る
イースター休暇中にリーマスは確かにもう遠慮しない、とは言っていた。

(少しは遠慮してよ〜。しかも、なんかリリーもジェームズも静かだし…やけにしんっとしてるし)

ちらりっと周りをみれば、顔を赤くしながらあっけにこちらを見ている者、呆れたようなため息をついているもの。あわてて顔を逸らすもの。

「リ、リーマス!」
「何?」
「ここ談話室なのに!」

(なんであんなことするの?!)

こういう場所であっさりあんな行動をするリーマスはすごいと思うが、はそこまで堂々とはできない。

「だって、が僕に嫉妬させるようなこと言ったからだよ?」
「う…」

言い返せない、言い返せないが…納得のいかない様子の
リーマスは深いため息をつく。

。普通好きな子が別の男と一緒にいるなんて聞けば嫉妬するのは当たり前だよ?」
「別の男って…」
「セブルスと一緒にいたんだよね?」

じっと見てくるリーマスには慌てる。

「で、でも!スネイプさんはリーマスの知ってる人だよ?!」

リーマスは別にピーターとが一緒にいても気にしない。
がジェームズやシリウスと一緒にいることはめったにないが、そういうことがあってもこんなことはしないだろうとは思っている。

「だからこそ、だよ、。僕はそんなに心が広くないんだ。今日みたいに僕以外のしかも僕の知ってる男と二人っきりになるようなことになるのは嫌だよ?」
「だからって」

(さっきみたいなことするなんて!)

二人っきりの時はまだいい。
しかし、ただでさえそういう行為に慣れていないは恥ずかしいのだ。

「牽制、かな?」
「牽制?」
「そう。は僕のものだって、他の人に分かってもらうためにね。とりあえず、この場にいる人たちには分かってもらったようだから、に近づくなんて無謀なことする人はいないだろうけど…」

僕は独占欲強いんだ、とにっこり笑顔で言うリーマス。
はそれを身をもって知った気がする。
ただ、図書館で勉強を少し教えてもらっただけだというのに。

「だから、もう、セブルスと会っちゃ駄目だよ?」
「でも、明日この本渡すって約束…」
「それは僕が渡してきてあげるよ。勿論、今度に声をかけたらどうなるかって分からせてからね」
「リ、リーマス、それはちょっと…」
「何?」

にっこりとリーマスが微笑む。
その笑みに何もいえなくなる
親切で教えてくれたセブルスに少し悪いな、とは思いながらリーマスには逆らえないのであった。

「ちゃんと僕の恋人だって自覚もってね、
「うん」
はモテるんだからね」
「うん…は?え?」

頷いて言葉の意味に気付く。

(モテる?誰が?)

「気付いてないのよ、って」

呆れたような声はリリー。
確かに3年生の初め頃はは目立たなかった。
けれど、女の子は突然綺麗になるものだ。
それを周りが気付かないわけない。

「ね、
「何?リーマス」

リーマスを見る
リーマスはぎゅっとを抱きしめる。
談話室だというのに、外聞もなにもないようだ。

「僕はね、を一生は離すつもりはないんだ。だから、も観念して僕に慣れてね。僕は心が狭くてこういうことするけど…」

はそれに言葉では返さずにリーマスのローブをぎゅっと握り締めて、リーマスに体を寄せた。
言葉にできないくらい嬉しかった。
リーマスは人気があって、いつ気持ちが変わってしまうかは不安だった。
けれどもリーマスはこんなにも嬉しいことを言ってくれる。

(私だって、一生リーマスの側にいるよ。この気持ちは絶対変わらないもの)

嬉しい気持ちでいっぱいだっただが、大変なのはまだまだ序の口であるということが分かっているのだろうか。
リーマスも幸せそうにを抱きしめているが、リーマスには考えあっての事。
場所を考えて欲しい。
ここはグリフィンドールの談話室である。
今、談話室にに想いを寄せているだろう男子生徒がいることをリーマスは前もって知っていた。
牽制の上にさらに牽制の意味を込めて見せ付けているのである。

それに気がつかない、リーマスの黒さに気がつかないは果たしてどうなるのだろうか。
何はともあれ、苦労するのは目に見えている。


追記として、その後セブルスがどうなったかと言えば、いつもの悪戯のターゲットにされたことと、いつも以上に被害が酷かったことを述べておこう。
リーマス・ルーピンは悪戯仕掛け人の影の支配者であるのだから。