古の魔法 4
はリリーと一緒に仲良く食事の準備をしていた。
あれから5日。
ここから出ることができない以上、ジェームズとリリーのできることは食事の確保と睡眠。
つまりは暇なのである。
が来たことによって話し相手ができて嬉しいのか、ジェームズはよく悪戯の話を、リリーはの母のカレンとの話をしてくれる。
両親の昔の話を知らなかったは嬉しそうにその話を聞いていた。
「ねぇ、はハリーとはどういう関係?」
「え?」
リリーがにこにこしながら聞いてくる。
突然振られた質問には何を聞かれたか分からなかった。
「同じグリフィンドール生なんでしょう?話したことくらいはあるわよね?勿論」
「あります、けど。ハリーはとても人気があるから私なんか…」
挨拶を交わす程度だ。
ホグワーツは同学年の人だけでもかなり数が多い。
同じ寮とはいえ名前と顔を覚えていてくれているのかも分からない。
はリリーにちょっと悲しそうな表情をした。
「駄目よ、そんな自分を卑下するような言い方は。今のハリーにはこんなに気に入られているんだから!アタックよ!!」
「え?え?!」
リリーは赤子のハリーをの膝の上に乗せる。
「今のうちに刷り込ませておくってのも手よ、」
(刷り込ませるって何をですか?!てか、そんなことしていいんですか?!)
そう突っ込みたいが突っ込めない。
「リリー、が困っているだろう?」
「でも、ジェームズ。私、息子のハリーは確かに可愛いけど、みたいな娘が欲しかったわ」
ふぅっと軽くため息をつくリリー。
「何を言うんだい?リリー。娘が欲しければこれからつくればいいのさ」
ジェームズの言葉に表情を変えるリリー。
とたんに嬉しそうな表情になる。
「そうよね、ジェームズ!娘が欲しいならこれからつくればいいのよね!さすが、ジェームズだわ」
そしてに構わずいちゃつきだすリリーとジェームズ。
は自分の両親もかなり仲がいい方だと思っていたがここまでではないと思う。
これが噂に聞く本当のバカップル…?
「ああ、そうそう。、約束していたものはこれでいいかい?」
いちゃいちゃをやめて思いついたようにジェームズがに二つの棒切れを渡す。
棒切れといってもかなりしっかりしたもので、その辺りに落ちているようなものではない。
はそれをお礼を言いながら受け取る。
「聖魔樹の木の破片だよ。魔力も多少だけどあるからね」
「あら?、何に使うの?そんなもの」
リリーの問いには曖昧な笑みを返す。
これは念のためと思ってジェームズに頼んでおいたもの。
どうやって手に入れたのかは分からないが…魔力の宿っている物質であれば効果がある。
「リリーさん、ジェームズさん。髪の毛を一本ずついただけますか?」
の言葉にきょとんっとしたリリーとジェームズだが、魔法でひょいっとはさみを取り出して髪を一本切る。
それをに差し出した。
はそれを受け取り、先ほどの棒切れに髪の毛を結びつける。
ジェームズの髪は短くてすごく結びにくかった。
「不安、なんです」
がぽつりっとこぼす。
「私の知る時代では二人はもういないから…、だからお守りのようなものをつくろうと思って」
「お守り?」
「はい」
リリーの言葉には頷く。
すっと杖を取り出し、棒切れに向かって杖を振る。
『レイブンクロー名の元に、ただ一度の守りを与えん、全ての厄災からの守護を与えん、全ての災いの代わりとなりうるように…』
棒切れがぽぅっと緑色の光を帯びた。
しかしそれは少しの間のことですぐ消えた。
はその棒切れを大事そうに懐の中にしまう。
ふぅっとため息をついたところを見るとこれで終わりのようだ。
リリーとジェームズは何をしたのか分からず首を傾げる。
「本当はハリーを守りたくて覚えた魔法なんです。私の母はレイブンクローの血縁者で、その血筋だけが使える魔法があるんです」
「生き残った男の子」であるハリー。
1年の時、2年の時、とさまざまな危険に立ち向かってきたことを噂で聞いている。
憧れのハリーの役に立ちたくて一生懸命覚えた『身代わりの魔法』。
「相手の髪の毛を魔力の宿る媒体に巻きつけるとかして、さっきの呪文を唱えると、一度だけ、たった一度だけですが、その相手をどんな攻撃からも守ることができるらしいんです。使ったのはこれが初めてですが…」
が口で言うほど簡単にできる魔法ではない。
呪文を覚えるのは苦でなくても、それが正確に発動するには魔力の正確なコントロールと魔力の波動のコントロールが必要だ。
しかも、それはレイブンクローの血筋でしか発動できない魔法。
「この魔法でリリーさんとジェームズさんに振りかかる魔法の攻撃が防げたらって思って」
しかし、禁じられた呪文に対して効果があるかは分からない。
『アバダ・ケダブラ』
その呪文を受けて生きていたものはいまだかつて、そう、英雄ハリー=ポッターだけ。
しかも、相手の髪の毛か何か体の一部だったものがないとできない魔法。
ハリーに使いたくても、髪の毛を手に入れることなどできず…これまで使えなかったのである。
「」
「、ありがとう」
リリーとジェームズが嬉しそうに微笑んでを抱きしめる。
リリーがを抱きしめ、その上からジェームズが二人を抱きしめている感じだ。
このぬくもりが、この先も失われることがありませんように、とは祈る。
*
6日間などあっという間に来る。
は2階で自分の隠れる場所を指示されていた。
そこはハリーの小さなベッドがある部屋の戸棚。
といっても小さな小部屋くらいの大きさがあるのでそんなに狭くはない。
ジェームズに1つの水晶球を渡された。
「これで、が見たいと思った光景が見れるからね。外の様子はこれでみるといいよ」
渡された水晶球をが持つと、ぽぅっと光だして、今あるこの光景が映し出された。
かなり高度な魔法である。
さすがホグワーツ首席。
「この扉は完全に外と遮断するように魔法をかけてしまうからね」
説明を受けていてふと気付いたことがある。
「あの、私だけこんな安全な所に隠れていていいんですか?別に私だけでなくても…」
自分だけが安全なところで見ているだけなのはどうも嫌だ。
何もできずにいることに不安を隠せない。
「、狙われているのは私達よ。はヴォルデモートには狙われてないでしょう?だから巻き込みたくはないの」
「あの、それでもハリーは!」
ハリーも一緒に隠れていればいいのでは?
の言葉にジェームズが首を横に振った。
悲しそうな笑みを浮かべるジェームズとリリー。
「むしろ、ヴォルデモートはハリーを狙っているんだよ」
「私達もいずれは狙われる対象になっていたかもしれないけれど、こんなに早く狙われるようになったのはハリーが狙われているから…」
(え?ハリーが?どうして?ただの赤ん坊なのに?)
戸惑うにジェームズは曖昧な笑みを返すのみ。
これ以上話す気はないようだ。
どうして、ハリーが狙われなくてはいけないのか。
「私のせいでハリーは…!」
「リリー、それは言わない約束だろう?」
泣きそうに顔を歪めたリリーをジェームズが抱きしめる。
リリーの様子からしてなにかあったのだろう。
だが、とても聞けるような雰囲気ではない。
ハリーが狙われるのはリリーのせいなのか…?
そうではないとは思う。
これはきっとポッター家の問題であって、赤の他人が口を出せるようなことではないのだろう。
闇の帝王ヴォルデモートに狙われいているポッター親子。
彼らが優秀な魔法使いだから、そしてヴォルデモートがハリーを狙っているから。
ヴォルデモートの考えなど、には分からない。
ただ1ついえる事がある。
この幸せな家庭を壊す権利が、『例のあの人』にあるはずがない。
この幸せな時間を潰してしまうことは、誰にも許されないはずだ。